-Never give up for MICHIRU-

大切な友達

作:little star

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「いってくるね、日向」
私は、笑顔で日向にそういうと、カンファレンスルームの扉を開いた。

「私、昨日、国保中央病院の高橋先生にあってきたんです。
 そして、この病気についていろいろお話をしました。
 私は、病気に向かって、もっと積極的に闘って生きたい…。
 ですから、私を国保中央病院に紹介していただけませんか。」

弱弱しい口調だったけれど、いった。いえた。
 それをきくと、坂場医師は、
「…IBDでいくら有名な医師である高橋先生のもとにいっても、直るとは限らないわよ。
悪化するかもしれない…。それでも、いいの、私は、もう一切面倒を見ないけれと…。」
冷たい口調でいう坂場医師。
 私は、
「それでも、私は頑張りたいんです。現今の状態から脱出したい。だから、お願いします。」
なんで、こんな奴に頭をさげないといけないのか…。そんな矛盾と、坂場医師の冷ややかな
口調に私は涙をうるましていた。
 坂場医師は、
「…あなたなんて、もう顔をみたくない!!きっと、日向くんに影響されたんだろうけど。
紹介状はかくわ。廊下で待ってなさい。」
 すごい剣幕でわたしを怒鳴ると、坂場医師はペンと紙をもって何か書類を書き出した。
 私は、
「あ、ありがとうございました。」
 そういうと、坂場医師のもとを去った。
カンファレンスルームの扉を開くと、日向がいた。私は、思わず、日向の胸元に
飛び込んで、ないた。
ずっと、ないていた。
日向はぎゅっと、私を抱きしめて…。ただ、「ごめんね。」そういうのだった。

☆☆☆

翌日、転院という形で私はこの病院を退院することになった。
看護師から手渡された「診療情報提供書(紹介状)」には、封がしていなかったため、
おそるおそる中身をみてみた。

『2年前、潰瘍性大腸炎の判断にて、ステロイド治療続行中。加療の程宜しくお願い
 します。』

ただ、それだけだった。
2年間も主治医としてみてきたはずなのに、
私は怒りをとおりこして、『愕然』とした。
こんな医師のために2年も棒に振ってしまったんだ。
そう思うと…。どうしようもない怒りがこみ上げてきた。

☆☆☆
翌日、
国保中央病院に転院した。
私は5階505号室(2人部屋)に入院した。
私の家族は「仕事」だの、「研究」だので忙しいらしく、きていない。
かわりに、日向にきてもらった。

一通りの身支度が終わり、点滴のルートを通してもらって、早速明日からの白血球除去
療法の準備をすることになった。

「そういえばさ、みちる。この病院って、みちると同じように潰瘍性大腸炎の患者さんが
いっぱい入院しているはずだよね。友達がいっぱいできるといいね。」
日向はニコニコとした口調でいう。
私は、
「そうね。いままで、私と同じ疾患の人と部屋が一緒だったことはなかったから…。」
日向にいう。そして、
「昨日は本当にごめんね。泣いちゃって。…私、日向がいてくれなかったら、
どうなってたか、本当に感謝してるよ。」
そういうと、日向は真っ赤になって、
「そんなの気にしないで…。僕にできることは何でもするっていったでしょ。」
日向はそういうと、
「僕、ちょっと昼食食べてくるよ。また、くるから。」
そういって、手を振ると、私も日向の方に手をふった。



「かわいい、彼ね。」
振り向くと、顔が整った。清楚な感じの女性が立っていた。
私は、彼女の容姿にしばしば心を奪われていたが、
「いや彼…日向は、、そんなんじゃ…。」
真っ赤になっていうと、彼女はコロコロと笑い、
「私、牧野一葵。14歳。この部屋でもう、1週間入院生活をしてるわ。
ずっと、一人だったから、寂しかったんだ。お友達になってくれる。」
優しい口調に、いやされるというか、なんというか。
「う・・・」
うなづこうとした矢先、今度は男の声で、
「一人じゃないだろ。俺もいるんだからさ、一葵は俺のガールフレンドなんだから。
ぁ。」
お茶らけた感じのした少年だったが、一葵にまけず、整った顔の男の子が、
たっていた。
「だから…。『人前で、ガールフレンド!』とか連呼するのやめてっていっている
でしょ。・・・」
小な声で、一葵は男に話しかけた。
男は、
「本当のことだから。いいじゃんか。そっちは。、、、今日入院してきた人だよな。」
私は、
「春日みちる。14歳です。宜しくお願いします。」
ペコリと頭を下げると、
一葵は、
「一葵でいいよ。こっちは、星河周哉君。同じ14歳よ。」
にこりと笑っていう。
「ところでさ、みちるちゃんって、潰瘍性大腸炎それともクローン病どっち。
この病棟は、どっちかの患者さんしかいないんだ。」
そうきかれると、
「潰瘍性大腸炎。」
と私は答えた。
周哉は、
「じゃ、俺と同じじゃん。俺も潰瘍性大腸炎の全結腸型で、2週間前にオペしたんだよ。」
あかるく、話かけてくる彼はどことなく、日向ににているような、暖かさを感じた。
まあ、日向はこんなに男っぽくはないけどね…。
一葵は、
「私はクローン病。新薬を使うのに入院したの。丁度周哉君も入院してるって聞いて
びっくりしたんだけど…。」
二人の言葉には、「希望」を感じた。
いままでいた病棟は、振り向けばおじいちゃん・おばあちゃんだらけで、活気がなかった。
(こんなこと思ったら、怒られるか。)
『これからもよろしく!!』
三人が握手をしているさなか、日向が戻ってきた。
「ごめーん。食堂がこんでてさ。ちょっと時間がかかっちゃった。」
日向はそいいながら、病室に戻ってくるなり、3人の姿をみると…
「さっそく、友達できたの??」
とびっくりした口調で聴いてきた。
「みちるちゃん。コイツ、みちるちゃんの…。」
日向は、周哉の口調に、
「僕はコイツじゃなくて、日向、『遠山日向」だ。君は…。」
ちょっと、おこった口調の日向をみたのは、私は始めてだったかもしれない。
周哉はけらけらと笑うと、
「ごめん。そうか、君が望みちゃんの彼氏だね。俺は、星河周哉、中2。
ここで入院している患者だよ。大丈夫僕には、一葵がいるから…。」
そういうと、一葵は、紙を丸めて周哉の頭をたたいた。
「また、ふざけて…。ごめんなさい。日向君。私、この部屋に入院している牧野一葵です。
で、こっちは星川周哉君。日向くんと同じ年よ。」
日向は、思わず「きれいだなぁ。」と視線を奪われていた。
「あっ、お前。一葵に手だすつもりじゃないだろうな。」
冗談半分ながらも、怒っている周哉に、
「そんなんじゃないよ。ただ、きれいだな。って思っただけだよ。僕には、みちるがいるし…。」
またまた、そんなせりふをさらりといわれてしまうと…。
私はこまってしまうのだけど…。
「日向君もかっこいこというじゃんか。俺たち気があうかもしれないぜ。
そうそう、みちるちゃんと日向君は音楽に興味ある?」
周哉の言葉に、
「私は、ずっとピアノやってきたから、興味あるけど…。日向は…。」
そうみちるが答えると日向は少し顔を暗くして、
「音楽は好きなんだ…。だけど、僕、声が高くて、本当は歌うことも大好きなんだけど…。
いつも歌うとからかわれて…。何か女みたいっていわれるんだ。」
私はびっくりした。たしかに日向の声は声変わりをしてもソプラノ系の声で、周哉のような
アルト声ではない。だけど、いつもきれいで、そして励まされるような声に感じていた。
まさか、日向がそんなコンプレックスを抱いているなんて知らなかった。
一葵が、
「日向君の声って、今の男の人にないような、なんか癒し系のボイスだよね。
周哉君。あの企画にさそってみたら…。」
そんな一葵に誘われて周哉は、
「そうか。実はさ、俺たちひそかにバンドを組もうかとおもってたんだ。
俺はギターもできるけど、声は普通のどこにでもいそうな声で…。一葵の声もきれいなんだ
けど、あまり声をはりあげすぎると脱水になっちまうからさ…。
そこでだ日向!お前、ボーカルやらないか??」
突拍子もないことに、私も日向も言葉を失った。
日向がボーカル??
想像つかない。
「僕の声って、変じゃない??」
あらためて周哉に聴くと、
「へんだ!!」
がくっ、と日向は肩を下げた。
「だけどな。」
周哉は続けた。
「日向の声って、心がいやされるような。優しい声なんだよ。まぁ、悪く言えば男っぽく
ないともいえるのかもしれないけど…。でもさ、俺たちの求めている声ってそういう声
なんだ。皆が癒されるような歌を作っていきたい。だから、協力してくれないか。」
日向の手をとると、一葵も、
「私からもお願いするわ。日向君の声。きれいだもの。」
私も、手をとって
「私もそう思う。私がを励ましてくれたときの声で、これからは皆を励ましてよ。」
みちるをそういった。
日向は少し涙を潤ませながら、
「うれしい。僕の声ってそういう考え方もできるんだね。声のことで褒められたの初めてだよ。」
3人の手をしっかりと握った。
「…ところで、みちる、バンドの話もいいけどさ、治療について確認しないと。先生いつ
くるって?」
私は、
「夜7時くらいだって。ここからだと帰り遅くなっちゃうからさきかえってもいいよ。」
そういうと、日向は、
「あのね。ここまで巻き込んでそれはないでしょ。僕はみちると一緒に病気と闘うって決めたんだから
…。」
また、恥ずかしいせりふを、でも、嬉しい。
日向の声で、心で、優しさで私も癒されてるし、みんなもいやされれば…。
私もみちる望が…。目標がもててきた。

一人じゃこころぼそいけれど、みんなと一緒なら大丈夫!!
そらは青々としていた。


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