作:しーば
2回目の時空の歪に吸い込まれた未夢。
シリーズ物の途中なんで、ここから読むと意味不明です。
良ければ最初から読んでください┃しーば家┃_・)
時空の歪に吸い込まれ、また暗闇の中を落ち続ける感覚。
私は、膝を抱えるように体を丸くする。
「・・・将来、大きくなったら未夢ちゃんはとっても美人になるから、彷徨頑張ってね・・・」
さっきまで居た世界で彷徨のお母さんの瞳さんが言った言葉が心に響く。
私が進んできた過去は、彷徨と私が一緒になれた。
でも、それは私にとって嬉しい事では無かった。
彷徨と一緒になれた・・・そう決まったばかりだったのに・・・。
私の存在だけがそこから消えてしまった。
存在が無くなったけれど、彷徨に会う事はできた。
私がどんな事を話しかけても、彷徨からは返事は返って来ない。
時々、彷徨は私を呼んでくれる事があって、私は「なぁに?彷徨」と明るく返事をするが
彷徨は私とはまったく違っていて、私が見た事が無かった、暗く落ち込み泣いているだけ。
もしも、私と彷徨の過去の世界に行けて、そこで過去変えれれば未来も変わるのかな・・・?。
そんな事を考えているうちに、暗闇の先に光が見えてきた。
次はどんな所だろう・・・?
あれ・・・?土管?
・・・何処?
私は首を傾げた。
大きな空き地の真ん中に土管が何本か横に置かれている。
その土管の前に私は居る。
なんだろう?西園寺でも無いし、昔の私が居た所でも無いよね・・・。
時空の歪は何処に行くのか、何処の時間に行くのかが決まっていない。
今度は私の過去に関係ない場所なの・・・?。
もしかして、土管の中に誰か居るとか?
全部の土管を覗き込んだけど、誰も居なかった。
はあ・・・なんでこんな所に居るんだろう?
ため息をつきながら、土管の上に座る格好で宙に浮き、遠くを眺める。
空き地は丘の上にあって、丘の下に広がる町並みが一望出来た。
丘の下には住宅地や駅があって、その向こう側には港、その外には海が見える。
どれぐらい時間が経ったのだろう?私は遠くの海を見ながらぼーっとしていた。
気が付くと、すぐ隣に帽子を被った男の子が座っていた。
私はその子を見て、幼少の彷徨だと確信した。
「ねぇ?君、お名前は?」
私は試すように声をかけてみた。
彷徨は振り向きもせず、海の方を見続けている。
今度は手を伸ばして彷徨に触れようとしたけど、実態の無い私の手がすり抜ける。
やっぱり、駄目か・・・。
駄目と分っていても、彷徨の頭を撫でたり、方に触れたり、脇をくすぐったりしていた。
身震いをした彷徨は土管から降りた。
一度私の方を振り返り首を傾げた後で、土管の中に入って行った。
私にこんな過去なんてあったかな?と土管の上で腕を組みながらゆっくりと横回転で回り始める。
何回クルクル回っても目が回る事も無い、あっやっぱり私幽霊なんだ・・・と関心し始めた頃。
今度は、空き地の別の入り口から女の子がやってきた。
その子は怒った表情のまま、私の下にある土管に入っていった。
あっ、その場所には彷徨が。
最初は何か揉めながら騒いでいたみたいだけど、段々とお喋りするようになってきた。
中の様子が気になり始め、宙に浮いている状態から縦方向に回転し、土管の中の様子を逆さまになって覗き込んだ。
中では、彷徨が持ってきたお弁当を2人で分けながら食べていた所だった。
女の子はその料理を嬉しそうに食べ、それを彷徨が作った事を聞いてさらに驚いていた。
私は体制を元に戻して遠くの海を見る。
そっか、これがあの時の事か・・・。
私の初恋の思い出。
この時食べさせて貰った、彷徨の作った卵焼き。
いつか彷徨に聞いた事があったけど「そんな事あったっけ?」と答えられた事もあったね。
でも、その後頻繁にこの玉子焼きを作ってくれてたような・・・?
彷徨が作ったお弁当を食べ終わって、しばらくたつと会話が聞こえなくなった。
私は、さっきと同じ方法で土管の中を覗いた。
そこでは、私が土管の丸い形に背中をピッタリつけてうたた寝をし始めていた。
すぐ側に居る彷徨は、寝ている私が横にズレ落ちないように肩で支えていてくれた。
時々、私の寝顔を見ては顔を逸らしたりしている。
私は、彷徨がどんな表情で眠っている私を見ているのだろう?と気になった。
寝ている私を頭からすり抜けて彷徨を見上げれる位置に移動しようとしていた時、急に視界が真っ暗になった。
明るさを取り戻す前に、左肩のから暖かさを感じる事ができた。
何かに触れている久しぶりの感触。
その暖かさの原因は、私が身体を傾けている先にあった。
私は、恐る恐る目を開けてみた。
ゆっくりとまぶたが開いて明かりをとらえていく。
目が明かりに慣れた時、目の前には顔を赤くして固まっている彷徨が居た。
彷徨の頬に触れたくて、そっと手を伸ばそうとしたけど、彷徨が顔を逸らす。
何か喋ろうとした瞬間、耐えられない眠気のような物に襲われて、強制的に瞳を閉じられた。
彷徨の頬に向かって差し出したはずの手が、彷徨の身体を通り抜けている。
だけど身体は宙に浮いて、身体の半分は土管をすり抜けて、もう半分はここに居る過去の私をすり抜けて居た。
何?今の感触。
確かに、ここに居る小さい彷徨のぬくもり感じていた。
まるで、私がここに居る過去の私に乗り移ったように。
私は、過去の私に触れようと、何度も触ってみたり、身体を重ねようと試したが、さっきみたいな感覚にはならなかった。
悩んでる最中、彷徨が土管の外から誰かに呼ばれた。
彷徨は寝ている私を気遣ってくれて、ゆっくり身体を移動させて土管に上手く寄りかからせてから、土管を出て行った。
土管に残っているのは眠っている私と、さっきの出来事に驚いている私。
私の中ではこの考えだけが頭の中を巡っていた。
「私の過去をかえてしまえば・・・私の未来はかわるはず・・・。」
┃しーば家┃_・)続きます。