作:ちーこ
太陽はあたたかくオレ達を照らしている。
でもそれは太陽の本意ではないかもしれない。
太陽
「あーゆー台詞一生に一度でいいから言われてみたいよね。」
金曜の11時過ぎ、洋画のテレビ放送を見終えた未夢がそう言った。
その声は別にオレに何かを求めているというわけではなさそうだ。
そろそろ空になりかけた缶をぐっと呷る。
「んじゃぁ、わたしお風呂入ってくるね。」
そういってぱたぱたと居間から出て行った。
別に見るつもりもなかったのになんとなく最後まで見てしまった。
ありきたりなラブストーリー。
その中で男の一言が頭に引っかかっている。
『君は僕の太陽だ』
女から見ればロマンチックで言われてみたい台詞…なのかもしれない。
もしかしたら、気障な野郎の言ってみたい台詞なのかもしれない。
ふと、オレはその中の矛盾に気がついてしまった。
太陽はいつもあたたかくオレ達を照らしている。
でもそれは太陽の本意ではないかもしれない。
太陽は太陽であるからこそ皆に感謝されてきた。
太陽は太陽であるからこそ誰にも近づくことができなかった。
太陽はいつもあたたかくオレ達を照らしている。
しかしそれはオレ達の思い込みかもしれない。
太陽の恵みに皆生かされてきた。
太陽は傍にいるには熱すぎると、遠くで見てることしか許されなかった。
なんて自分勝手なんだろう。
オレ達は貰うだけ貰って、何も与えることができない。
『君は僕の太陽だ』
だったらお前は何なんだ?
太陽に照らされる地球か?
太陽の光を受けてしか輝くことのできない月か?
相手を太陽に例えるなんてあまりにも他力本願ではないか。
こんなことを考えてるオレはどうかしてるのかもしれない。
「彷徨?」
未夢が気遣うようにオレを見た。
パジャマを着ているからもう風呂から上がってきたらしい。
「大丈夫?酔っ払ってる?」
心配そうにオレの顔を覗き込む未夢をぐっと抱き寄せた。
そのまま未夢に口づけた。
「…彷徨…やっぱり酔っ払ってるでしょ。お酒くさいよ。」
「オレはあーゆーこと絶対言わねーぞ。」
未夢はきょとんとした顔をして、しばらく何かを考えた後くすくす笑った。
「まださっきの気にしてたの?」
「別に気にしてねーけどさ。」
「そう?」
未夢はオレの肩口に顔をうずめた。
未夢の髪はまだ少し湿っている。
「でもね、それがいいよ。」
「ん?」
「太陽なんてわたしにはなれないよ。」
未夢はんーとちいさく唸る。
「わたしは…そんなに強くないから。いっつも照らしてあげることなんてできないもん。」
「うん」
「うん。」
オレはもう一度未夢にキスをした。
触れ合うのに心地よい、太陽よりもずっと低い温度で。
何が書きたかったのかさっぱり分からないSS。
実際わたしが普段考えてるのはこの彷徨に近い気がします…素面だけど。
実は途中で未夢に「だから夜とか曇りの日があるんじゃないかなぁ。ずっと照らしてたら太陽だって疲れちゃうでしょ」
って言ってもらおうかとも思ったのですが…。
雲で隠れたって、夜になったって太陽が輝いてるのには変わりないじゃないですか…ただ見えなくなっただけで。
それに彷徨が気づかないわけないなあと思って。
自分の考えをつぶしあってる感じでまったくもって作品が膨らみません。
最近ほんとに自分の考えてることの意味不明度が増してる気がしてホントにぬぁ〜って感じです。
とある小説を読んでいて、登場人物の中で変な人に位置づけられている人の考え方にものすごく共感を覚えてちょっと凹んだ今日この頃。
(初出:2004.05)