作:ちーこ
俺は雨の日にねこを拾った。
未夢と同じ深い緑の瞳の
アイツに似ている雌猫。
いつの間にかさ
「ほら、みゅう。こっちこい。」
こんな名前を付けたのにもちゃんとわけがある。
「みゆ」と「みゅう」なんて偶然にするにはおかしいよな。
川でおぼれてるこいつと目が合ったとき
なんかすっげーびびった。
こいつの目未夢にそっくりだったんだよ。
気付いたら身体が勝手に川の中に入ってた。
「みゅう。お前かわいいなぁ。」
「みゅう」ってよびながらも
俺の視線の先にいるのは「みゆ」
面と向かって言えない事でも
「みゅう」を通せば素直に出てくる。
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未夢の代わりじゃない。
別に欲求不満なわけじゃない。
…多分。
もっと素直になれたらいいとは思う。
未夢も未夢だよな。
俺がなんで「みゅう」なんてややこしい名前付けたのか
全然気付いてねーし。
「ん、どした?未夢」
未夢と目があった途端、視線をそらされた。
しょうがないから「みゅう」ののどもとを撫でる。
「ほんと、かわいいなぁ。」
なんか機嫌が悪いみたいだけど
それもかわいいなんて思うのはよっぽど重症かもしれない。
未夢は顔をそむけたまま、
俺の腕の中から
「みゅう」を抱きあげると
部屋の方に歩いていってしまった。
あの日は凄い雨だった。
なのに俺の耳には「みゅう」の声が
しっかり聞こえていた。
未夢に似てなかったら…
俺はどうしていたんだろう。
それでも声は聞こえてきたのだろうか。
まだ続ける気だったりして。
だって一人称書きやすいんだもん。
(発出:2001年)