ちいさな診療所。より

雲の陰では

作:ちーこ

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「…雨だ…。」
「雨だな。」
「雨だね…。」
「雨だな。」
「あ〜め〜だ〜」
「はいはい。雨だな。」
「今どうでもいいって思ったでしょ!」
「………」
「なんでそこで黙るわけ?『んなことねーよ』ぐらい言ってよね!」
さっきから何度となく繰り返される会話。
未夢はこっちが酔ってるんじゃないかと心配になるぐらい、麦茶片手に空を見上げて繰り返す。

「雨だよ〜彷徨。」
「…雨だな…。」

他に何を言えばいいのだろう。
始めは真面目に答えていたが、さすがに両手でたりなくなるころには、オレも同じ言葉を繰り返すだけになっていた。

未夢の言うとおり、外は雨。
じめじめするし、なんとなく鬱になるしで雨をうっとうしく思うのはよくわかる。
しかし、いつもはここまでこだわったりしない。

「…はぁ…雨…。」
「そんなに雨やなわけ?」
「だって…」

そこで未夢は言いよどむと、ふぃと顔をそらした。

「だって…せっかくの七夕なんだよ?1年に1度だけなのに…雨のせいで逢えなくなったりしたらやじゃん。」

あぁ、そうだったのか。
やっとさっきまでの態度に納得がいった。
そんなことを本気で気にしてる未夢が可愛いと思う。まだ空を見上げてる未夢の手を引いて座らせる。

「天の川はさ、雲なんかよりずっと上にあるんだからさ、こっちから見えなくたってちゃんと逢えてんじゃねーの?」
「でもさ…。」
「むしろ、雲で隠れてるおかげで、いつも逢えない分べたべたしてたりしてな。」
「なっ!」
「だから、あんまりじーっと見てんのも野暮だろ?」
「うぅ…。」

ぷぅっと頬を膨らませる未夢は年より大分幼く見える。
ぶしゅっと指で空気を抜く。

「みーゆっ。」

そのまま未夢を抱き寄せて口付ける。

「…なんか…やだぁ…。七夕ってそんなリアルじゃなくて、もっとこうロマンチックなものでしょ〜」
「リアルって何想像したわけ?」
「しらない!」

顔を赤らめた未夢にオレはもう一度口付けた。

そのあとのことのことは…織姫様たちご同様、ご想像におまかせする。




夕方の「七夕は雨です」ニュースを聞いて思いついたもの。
昨日思いついてればなぁ…七夕に間に合ったのに。
1日送れですが。
ん〜設定は…18歳ぐらい?
ふたりは恋人で。
自分アホだなとちょっとおもった。
彷徨が珍しくへたれてない!
ちょっとびっくりです。

最近更新とろかったので。
このぐらいのSSだったらかけるなぁと。
下書きなしの1時間です。

(初出:2003.08)

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