作:ちーこ
あいつのやなとこ どんなとこ。
あんなとこ そんなとこ こんなとこ。
いろいろあるけど やっぱりさ
それでも あいつがすきなんだ。
あいつのやなとこ どんなとこ。
あんなとこ そんなとこ こんなとこ。
いろいろあるけど やっぱりね
それでも あいつがすきなのよ。
昼休み、昼飯も食い終わって、本を返しに行こうかと歩き始めたら、
三太に声をかけられた。
「なぁなぁ、光月さんのやなところってある?」
「…?なんでんなこと聞くんだよ。」
「いや…ちょっとね。」
またなにか企んでいるらしい。
「あっそ。」
オレは今度こそ図書館へ向かい歩き出した。
「ちょっとちょっと。ないの?光月さんのやなとこ。
…あっそっか…彷徨は光月さんにメロメロだから
やなとこなんてひとつもないってことか…」
「おい。」
「そこまでラブラブなのか…そうだよなぁ…
人目もはばからずあんなにいちゃいちゃしてるもんなぁ…」
「おい。」
頭のどこかでは、返事したらまずいとアラームが鳴っていた。
「やなとこなんてあるわけねーよなぁ…」
「んなわけあるか!」
「へーどんなとこ?」
目の前には三太の満面の笑顔。
………やられた………。
「ねぇ、未夢。西遠寺君のやなとこってある?」
昼ご飯を食べ終わったとき綾ちゃんが言った。
「ないの?」
ななみちゃんがにじり寄ってくる。
…やな予感。
「ないの?」
「ないの?」
「…ないわけじゃないけど…」
ふたりで迫られると…さすがに…こわい。
「どんなとこ?」
…結局こうなるんだよね…
「やなとこ…っていうか…料理下手。」
「料理?…光月さん結構できそうに見えるけど…」
「いや…なんか食ったらガンになりそうな黒焦げの炭みたいなやつとか、
やたら水っぽいグラタンとか出てくるし。」
「それはちょっとやかも…。…他には?」
完全に三太のペースにのせられている。
そうとはわかっていても口は勝手に動く。
「…あとは…ってか全体的に不器用なんだよな…
家庭科に関しては小学校低学年レベルだぞ」
「なるほどねー、他には?」
「他?…あとは…」
「いじわるなとこ。」
「えー西遠寺君って意地悪かなぁ…」
「すっごいいじわるだよ。彷徨あれでなかなか外面いいから
気づかないだけで。」
…そういえば…彷徨が他の人いじめてるのみたことないかも…
むぅ…
「…ん〜まぁ…他には?」
「えと…人が一生懸命やってるそばで、なんでもらくらくこなすのね。」
「いいじゃん?やってくれるでしょ。
未夢が困ってるの助けてくれてるんだからさ。」
「ちがうもん。こないだもね、わたしが一生懸命グラタン作ったのね。
…ちょっと水っぽかったけど…でももうちょっとで完成ってときに、
さって持ってって何か入れるんだよ!」
「…それがおいしかったわけだ?」
「うん。」
自分でも料理がうまくないのはわかってるけどさ…
…そんなやりかたすることないと思う。
「まぁ…誰だっておいしいもの食べたいしね。」
「綾…それ全然フォローになってない…未夢へこんでるよ…」
「あはは〜悪気はないってば。ん〜後は?」
…悪気がないって……わたしの料理…そんなにまずいのかなぁ…
「ほらほら、気を取り直して。あとはないの?」
「ん〜…ずぼらなとこ?」
「え!?西遠寺君ってずぼらなの?」
「几帳面な方かと思ってたんだけど…。」
…みんな彷徨のウチでのことを知らないからだ…。
あの性格はオジサン譲りだと思う。
「ぜんっぜんそんなことないから。出したもの出しっぱなしだし。
洗濯物は色物分けてくれないし。」
「…へぇ…洗濯物…一緒にするんだ…」
「えっ…」
「いちいちうるさいとこかな。ちょっといつもと違うとこに物置くと怒るし。
洗濯物だって別に色物とか分けなくてもいいとおもうんだけどさ」
「色移るじゃん。」
「たいしたことねーって。」
実際ジーパンでも洗わない限りそんなにうつることもない。
親父とふたりのときはそうしてたわけだし。
つまり経験談。
「…まぁ…その辺は考えの差かな…。他には?」
「…お人よしすぎ…とか。」
「?…確かに光月さんはお人よしだけどさ。」
「結局いちいちうるさいのだって周りのこと考えてるからなんだろうし、
なんだかんだ言いながらやってくれたりするしさ。
でも、あいつの場合はやりすぎ。誰の言うことでもほいほい聞いて
後で困ってんの。」
ホントに何度それで心配させられたことだろう。
「…あぁ…それは…あるかもな。」
「ん〜忙しすぎるとことか?彷徨、頼まれると断れないっぽくてさ。
いっつも忙しいんだよね…。
だからもうちょっとゆっくりしてもいいかなぁって思う。」
綾ちゃんたちの目がニヤッっと笑った。
「つまり…西遠寺君にもっと自分のペースを持って、
自分を大切にして欲しいと。」
「そういうんじゃなくてさ…。」
「あぁ…忙しすぎてかまってくれないからさみしいと。」
「いや…だからさ。あぁ…これもやなとこかもなんだけど…
…彷徨ってかなりマイペース人間なのね。
だから自分で一度決めたらそのまんま自分のペースで進んでくもん。」
疲れてても、絶対途中でやめようとしないのは、いい方向から見れば
粘り強いのかもしれないけど。
自分の時間とか削ったりして、何かしてるのは…なんだかね…。
「やっぱりかまってほしいんじゃないの〜?」
「違うってば!」
「言い出したら聞かないとことも…かな。」
「さっきのと矛盾してない?」
「なんつーか…人の頼みは聞くけど、
それが危なそうだったり無理そうだったりして止めると聞かない。」
「あぁなんだ。彷徨、光月さんが自分の話だけ聞かないからすねてるんだ?」
「んなわけねーだろ。」
「さぁ〜どーでしょ?」
…むかつく。
ニヤニヤとこっちを眺めている顔が。
すんげぇむかつく。
「はぁ…あいつってかなり頑固なんだよな…。」
「それもやなとこ?」
「まぁ…もうちょっと人の話聞いてろって感じ。」
「ふむふむ。」
「それで結局自分で墓穴掘って落ちて埋まるしさ。」
「…それも…やなとこ?」
いやかどうか…なんて考えたこともなかった…。
「…掘り出す手間の分は面倒なのかもな…」
「黒須くん。何個目までいったんだい?」
「…7個…かな。」
ひょっこり現れた光ヶ丘に三太がどうやら今まで折っていたらしい指を見て言った。
…どういうことなんだ…?
「あっちはどうなってるわけ?」
「今から聞きに行くところさ。じゃぁ、あと3個、がんばりたまえっ」
「がんばりたまえって、おい、光ヶ丘もオレと一緒に
彷徨の担当じゃんかよ〜!」
「…三太。どーゆーことなんだ?」
思いっきり目線をそらされた。
何企んでんだこいつは。
「あと3個ってどういうことだよ」
「まぁ…そんなに深く気にすんなって。」
「…どーゆーことなんだ?」
「よしっ!交換条件。あと3個教えてくれたら話す。」
「セコイぞ!」
「どーとでも言え。はい、あと3個。」
「…ガキくさいところ。」
半ばヤケなのかもしれない。
こうなったらどうなるのか結果が知りたいというか…。
ここでリタイアするのは悔しいというか…。
「それは性格面で?」
「はぁ?何言ってんだよ?」
「あぁ…まぁそうだよな…。光月さん胸はあんまりないけど、
スタイルはいいしなぁ。」
オレは無言で三太の腹に拳を入れた。
「っつー…冗談だよ、冗談。はぁ…やだやだ。男の嫉妬って醜いわ〜♪」
裏声で言った三太の頭を握ったままだった拳で殴った。
「ってぇー!…はいはい、わかった。もうしない。…ふぅ…んであとは?」
「…鈍いところ。周りのことはともかく自分のことに鈍すぎ。」
「…切実だな…」
「うるせーよ。」
「時々冷たいところ。なんか急に機嫌悪くなるんだよね。」
「未夢ちゃんがなんかしたんじゃないの?」
「してないってば。」
「…天然だからね。」
「何それ〜。」
天然って…そんな。
わたしだって結構いろいろ考えてるしさ。
なんか納得いかない…
「はぁい、マドマァゼル。こっちはどうだい?」
「あれ、光ヶ丘君。あっちはもう全部終わったの?」
「いや、さっき僕が行ったときは7個だって言ってたよ。」
「ってか、光ヶ丘君も向こうの担当じゃん。」
「どうして僕が…。こっちにいて未夢っちの話を聞いてた方が楽しいじゃないか。」
「あっそ。ななみちゃん、向こうに負けてるよ。こっちまだ6個だもん。」
「よし、ラストスパート!他にはないの?」
望くんの登場で、余計にわたしの頭の中はごちゃごちゃになってしまった。
ってか6個ってなんなのよ〜。
「ねぇ…」
「何?」
「6個って何?」
「それは、未夢っちと西遠寺君のふがっ…なにするんだい!」
何か言いかけた望くんの口をななみちゃんが手で抑えた。
「うるさいなぁ…。ちょっと黙っててよ。で、あとは?」
とりあえず…教えてくれる気はなさそうだ…。
「ん〜…宿題見せてくれないとか?」
「でも教えてはくれるんでしょ?」
「…まぁね」
「ならいいじゃん。」
「ほら…せっぱ詰まってるときとかさ。」
例えば明日までに数学のドリル15ページやれとか言うとき。
彷徨は比較的予習でやってるみたいだったから見せてって言っても、
絶対に見せてくれない。
「それは未夢のこと思ってくれてるんだからさ。あと他には?」
「…ん〜…はまりやすいこと。
なんかに熱中しちゃうと他のこと何にもしなくなるんだもん。」
「結局かまって欲しいのね…。」
「いや…そうじゃなくて…ちょっとさみしいなって…。」
「ちゃっかりのろけるあたり未夢っちだよねぇ」
「光ヶ丘君まだいたんだ?こっちはいいから黒須君たちの方行っておいでよ。」
「はいはい。こっちは…あと2個だね。」
望くんはわたし達にバラを渡した後踊りながら去っていった…。
不思議なひとだよねぇ…
「ふぅ…んであとは?」
「ん〜悪ぶる…ってわけでもないけど…クールぶるとこ。」
「そうかなぁ…」
「なんか…自分でいいことしても言わないのね。だから誤解されやすいんだよ。」
「例えば…約束に30分も送れてきたから何だこいつ!とか思われてても、
実は道で困ってたお年寄りの荷物をもって
駅まで送ってきたことを言わないとか?」
「ん、そんなかんじ。」
「まぁ…自慢するよりはましじゃない?」
「まぁね。」
「んじゃぁ最後。」
「余計な気使うこと。」
「かくしごと…するとこ。」
「あいつってあれで結構周りに気ぃ使ってんだよな…。
だから自分が辛いときとか苦しいときとかなかなか言わないし。」
「隠し事って言うか…彷徨ってホントに疲れてたり困ってたりすると
何にも言わないのね。」
「つまり、もっと頼って欲しいわけだ。」
「ん…そこまでうぬぼれてはない。
まぁ…話聞く程度にはってことしか出来ないだろうけど。」
「…っていうか…ひとりで無理することないよって感じ。」
「なるほどね。」
「どーだった、どーだった?」
「ほら、10個聞いてきたよ。」
望がメモを綾とななみに向けて差し出した。
「何でそこでおまえがメモ差し出すんだよ。聞いたのもまとめたのもオレじゃんか!」
「心が狭いなぁ…。ちょっとしたジョークじゃないか。」
「…意味わかんねーよ」
「はいはい。漫才はもういいからさ。」
さっと綾は望の手からメモを抜き取って自分のものと比べた。
1,料理下手
2,不器用
3,いちいちうるさい
4,お人よしすぎ
5,言い出したら聞かない
6,頑固
7,墓穴掘る(埋まる)
8,ガキくさい
9,鈍すぎ
10,気を使う
1,いじわる
2,さらりとこなす
3,ずぼら
4,忙しすぎ
5,マイペース
6,時々冷たい
7,宿題見せてくれない
8,すぐはまる
9,クールぶる
10,隠し事する
「こうやって見てると…結構かぶってるよね…。」
「なんか…ね…悪口って言うかさ…」
「のろけ話聞かされてる気分になったよ…マジで。」
「あぁ…確かにね。」
「つまり、それだけふたりが相思相愛だってことさ。」
とんとん。
背中をたたかれてくるりと振り向いた三太の表情が凍った。
「さっきの、どーゆー意味だったんだ?」
「えっ…あっ…天地さんに聞いて」
「えっ!…えぇ…あはははは〜」
「ななみちゃん、ごまかさないでよぉ!」
「ふむ。みんなが言いたがらないのなら僕が教えてあげよう。
つまりこれはね、名付けて、びっくりどきどき悪口なのに実はそれでラブラブ度がわかっちゃうなんてすごいんだいまどき流行の心理チェック、なんだよ。」
「はっ?」
未夢と彷徨の声が重なる。
「…相手の嫌なとこが10個言えたら本当に好きって話なのよ。」
「でふたりとも10個言えたから。」
「つまりら…」
ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご
「悪口を言い合ってるから、彷徨くんと未夢ちゃんは喧嘩したのかと思ってましたのに…『…彷徨…さっきはあんなこといったけど…、彷徨のそういうところもわたし好きだから。』『オレだって…未夢の全てを愛してるよ。』そしてふたりは晴れて公認カップル。家だけでは飽き足らずがっこうでもいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!」
「…クリスちゃん…まだ「公認」されてないと思ってるんだ…」
あいつのやなとこ どんなとこ。
あんなとこ そんなとこ こんなとこ。
いろいろあるけど やっぱりさ
それでも あいつがすきなんだ。
あいつのやなとこ どんなとこ。
あんなとこ そんなとこ こんなとこ。
いろいろあるけど やっぱりね
それでも あいつがすきなのよ。
あいつのやなとこ どんなとこ。
あんなとこ そんなとこ こんなとこ。
けれども そんなところまで
全部含めて きみが好き。
ぬぁ…。
ちょっと前から書いてみたかったネタ…だったはずなのに…。
会話文しかないですね…
うわぁへったくそ。
これは書いてて…友達群の書き分けってか…ななみちゃんと綾ちゃんの書き分けが出来てないことを思い知らされました。
望くんひたすらかわいそうだし。
クリスちゃん出番ないし。
オチきれいにいかなかったし。
あぁ不満不満。
しばらく文章かいてなかった…ら…書き方忘れてますね〜。
前にどんなの書いてたのかもよくわからん。
ストーリーとしては覚えてるんだけど…台詞回しとか。
やっぱり語彙が少ないんだろうなぁ…
勉強しなきゃ…って春休みもう終わるじゃん。
宿題終わんないし。
ってかもう受験生!?
うわぁ…。
取り乱しました。失礼しました。
とりあえず…続けていくつもりですよ。
これは…某チャットでお話していたときに思いついたもの〜。
旦那さんが奥さんのこと「鈍い鈍い」と嘆いてらっしゃって…
奥さんそれに気づいてないし。
でも結局かなりラブラブ〜なんですよね…。
シンコンセイカツ楽しんでくださいな。
(初出:2003.04)