作:ちーこ
「やっぱさむいなぁ。」
そんな言葉と共に白い息を吐き出す。
「そだね。でも…きれいじゃん。」
見上げた空は満天の星空。
寒いはずなのに…なぜかあたたかい。
隣に大好きな人がいるからかもしれない
寒いはずなのに…寒さを感じないのは
こころがあたたまってるからかもしれない
「すごいよね…こんなたくさんの星のなかから地球に来て…そしてそのなかの日本に来て…西遠寺に来て…出会ったんだもん。」
夜空をどこともなく見つめて未夢が呟いた。
「このなかのどこかに…どこかに…ルゥくんたちの星…あるんだよね…。」
「…まぁな。すごい確率だってのは否定しねーけど…」
「…けど…?」
はぁーっというため息のあと彷徨が呆れた目でチラリと未夢をみる。
「銀河系のかなたっつってたから…ここからじゃ見えねーと思うんだけど…」
なんとなく…気まずげな…沈黙
「…レポート始めるか…」
「…そだね…。」
ごそごそと理科のノートを開く。
今日の宿題は「天体観測」
それがまたなかなかのハードなもので。
ほとんどの生徒がめんどくさがったのだか先生はなかなかひかず
結局生徒のほうが根負けしてしまった。
「さっさとやって早く戻ろーぜ。」
「……」
作業を始めた彷徨に未夢の返事はない。
「未夢?」
「…彷徨ぁ…どれがどれだか全然わかんない…」
「…マジ?」
無言でこくりと頷く。
「ったく…。あれが北極星だろ。であれがこぐま座。んで、そのわきにあるのがカシオペヤ座だろ。で、あのひしゃく型になってるのが北斗七星。んで、あっちに3つ並んでんのがあるだろ?あのへんがオリオン座。」
説明する彷徨の指の先を視線で追ってノートに書き写す。
「彷徨…ものしりなんだね…」
写している手を少し休めて彷徨を見ながら未夢は言った。
「ばーか。このくらいは一般常識のうちなんだよ。仮にも宇宙飛行士の娘だろーが…そのくらい知っとけよ…」
さっきよりもずっと呆れた口調。
「うるさいなぁ…理科は苦手なの。」
「ほぉ…理科は?…国語も社会も英語も数学も…家庭科も…苦手じゃねーか。」
苦々しく言った未夢に、彷徨は指折り数えながら得意げな顔。
「むぅ。そーゆー彷徨はどーなのよ!!」
「誰に物言ってるか、わかってんの?オレ全教科3位以下に落としたことねーもん。」
「はーはお、そ〜ですかぁ。」
「書き終わったのか?」
止まったままのシャープペンに気が付いて彷徨は未夢ノートを覗き込んだ。
「あぁ〜ちょっと待って。」
あわてて、また星を写し始める。
「っつーか…これ1時間ごとに記録なんだろ…はぁ…星って1時間に15度しか動かねーのに…。15度なんて未夢みたいな書き方じゃ誤差のうちじゃん…。」
「…それは……わたしを…バカにしてるのかなっ!?」
「ちっ…気付いたか…」
明後日の方角を見ながらしれっと言い放つ彷徨に未夢が食ってかかる。
「なによっそれ!!それじゃわたしがまるでバカみたいじゃない!!」
「違うのか?」
「違うわよ、バカっ!」
「んで終わったのか?」
彷徨の一言に急にあたりが静かになる。
「…まだです…。」
またカリカリとシャープペンの音があたりに響く。
「よし終わりっ!」
パタンと勢いよくノートを閉じる。
「きれいだねぇ。」
空を見上げてまた未夢が呟いた。
キラッ
「彷徨…今の…見た?」
「あぁ…流れたな…。」
「うん…流れたね…。」
今度はやさしい沈黙
「ねっ…もう少し…見てたいんだけど…」
「…あぁ…」
ふたりで西遠寺の縁側に腰を下ろす。
寒いはずなのに…なぜかあたたかい。
隣に大好きな人がいるからかもしれない
寒いはずなのに…寒さを感じないのは
こころがあたたまってるからかもしれない
コートごしの体温が
重なった手のぬくもりが
無言のやさしさが
寒いはずなのにあふれてくる
熱い気持ちが
あふれてくる
愛しいさでいっぱいのこころから
はっずぅ。むちゃくちゃ恥ずかしいですね。
どーします?とりあえず砂でも吐いておきます?
なんか微妙にスランプ気味。(?)
地の文がかけないです…。なんか思い浮かばんのです…。
まぁ…普段とたいして変わらんと言われればそうなんですが…ダメじゃん私。
しかし何ゆえ今ごろ天体観測?
もちろん今聞いているのは「天体観測」です。
(初出:2001年)