ちいさな診療所。より

Full of energy

作:ちーこ

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体育祭も間近に迫った放課後。
窓から見えるうろこ雲は秋っぽさを感じさせる。
「それで、保健委員は、交代で本部に待機することになります。
自分の競技に出る時間と重ならないように名前を書いてください。」

紙がまわってきた。
後で調整するらしいのでいくつか名前を書く。
こういう時迷う事がないのはとても便利だと思う。
運動はあんまり得意じゃないから…最小限の競技にしか登録してないんだもん。





「彷徨は当日何か係あるの?」

夕食を食べながらわたしは尋ねた。

「ん〜係ではないけど…白組応援団長?
…気付いたらなんか決まってたんだよなぁ…」

さすがにこれは…予想外…だった…
彷徨の事だから何かは任されてるんだろうなぁと思ってはいたけどさ…

「決まってたんだよなぁって…応援団長ってそんな簡単な仕事じゃないでしょ!?」
「まぁ…なっちゃったもんは仕方ないだろ。あっオレ明日から朝練だから。」
「がんばれー」

彷徨の箸が綺麗に秋刀魚の骨をよけていく。

「お前は?なんかないわけ?」
「ん〜わたしは多分、保健の仕事でほとんど本部じゃないかな…」

骨を取り除き終わった秋刀魚をぱくっと口に入れると彷徨は言った。

「へぇ、がんばれよ。」





きれいな秋晴れ。
う〜ん絶好の体育祭日和。

「悪いわね、光月さん。みんな結構いろんなのに出てるみたいで…ほとんど本部にいてもらうことになっちゃって。」

養護の先生が本部のテントに来たわたしに言った。

「いえ。全然かまわないですよ。他にやることもないんですし。」

本部席に座れるのはむしろ嬉しいかも。
本部は全体が見渡せるところにあるわけで、校長先生(とサル)も座っちゃったりするわけで…つまり…超特等席。
みんながあっちこっち動き回ってるのがよくわかる。





徒競走
玉入れ
借り物競争
綱引き
障害物競走
めまぐるしく変わっていく校庭の様子は見ていて飽きない。
さして大きな事故もなく、私がここでした仕事といえば、転んだ人にばんそうこうを2枚渡した事と…サルの話し相手と…見物。
…大して役に立ってないなぁ…

どん どん どんどんどんどんどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどん

和太鼓の音が校庭に響き渡った。
応援合戦が始まった。

「白組の勝利を祈って」

黒い長ランに白い手袋とはちまき。
眼がすぅっと細められて、力をこめて見開かれる。
…やばいよ…すっごいかっこいい…
聞きなれた声のはずなのにどきどきする。
きびきびとした力強い動作。
…やばいよ…かっこよすぎるよ…
和太鼓のどんよりも心臓のドキンの方が大きく聞こえる。
…やばいよ…もう…
彷徨がちらりとこっちを見た気がした。





応援合戦が終わった後、彷徨のまわりはやっぱり大混乱だった。
ちょっとイライラするけど、やっぱり…自分の好きな人が誉められているのは嬉しい。
他の方を見てまた視線を戻すと、もう彷徨はいなかった。
…どこ言ったんだろ…

「みーゆっ。」

後ろから声がして振り返る。
彷徨が立っていた。
まだ長ランのままで、手袋とはちまきだけはずしている。
彷徨に会えるのは嬉しいけど…こんなところに来るなんて怪我でもしたのかと気になる。

「お疲れ様。…どこか怪我したの?」
「別に。…しいて言えばエネルギーの補充…まぁ充電ってとこ。」

何かないかと思ってまわりを見まわしても、ここにあるのは救急箱だけ。

「ごめん〜わたし飲み物とかクラスの方置いちゃてるから…ここに何もないの。」
「いいよ、別に。」

わけわかんない。

『選抜リレーの選手の方は集合してください。』

スピーカーから流れてきた声に彷徨は立ちあがった。

「やべっ、着替えなきゃ。」

彷徨は慌てて走り出したかと思うとくるっと振り向いた。

「オレ、アンカーだから、ちゃんと見とけよ。」

それだけ言うとまた走っていく。
ホントに今日の彷徨はわけわかんない。





彷徨がバトンを受け取った。
3位だ。
1人抜く。
もう1人抜く。
最後の1人ともどんどん差が縮まっていく。

「彷徨ーがんばれー!」

残るはトラックあと半周。
ゴールはちょうど本部の目の前。
彷徨が1位の人に追いついた。
ふたりで並んで走っている。
あともう少し。
彷徨が半身、前に出た。

「がんばれー!」

もう一歩彷徨が前に出て、そのままゴールテープにつっこんだ。

彷徨がこっちを、わたしの方を見て笑った。





また彷徨がすっといなくなってきょろきょろしていたら、後ろから声をかけられた。

「未夢。」

今度はジャージ姿。
彷徨は空いている席に勝手に座った。

「すごかったね。おめでと。」
「未夢…こっち」

ぱたぱたと手招きされる。
近づくときゅっと手を握られた。

「彷徨?」
「今エネルギー補充中だから黙ってろ。」

ん…?
エネルギー…?
もしかして…それって…
わたしが手を握られたままあたふたしていたら、ぷっと彷徨が吹き出した。

「あー。もうなんでこいつはこーなんだろ。」

手を離されて、ほっぺを両方ぷにゅっとつままれた。

「ちょっとやめてよ〜」
「あのさ…いちゃついてるとこ悪いんだけど…」

三太君の声がして、彷徨がむっと顔をしかめた。

「ここ一応本部なわけよ…。みんな見てるぜ?」

まわりの視線に気がついて、離れようとしたら後ろから抱きつかれた。

「オレ今充電中。」





そのあとも彷徨は大活躍で、白組は優勝。
…そんなことよりも…1つ終わったごとに充電しに来る彷徨に…ちょっとビックリした…
そっちの方がわたしにとって大事件。

運動は得意じゃないけど…こういう体育祭もちょっと悪くないかな、なんてね。

いつの間にかわたしも充電されてたみたい。
わたしのこころもいっぱいだよ。
好きの気持ちでいっぱいだよ。


体育祭ネタ。
ちょっと書いてみましたが…むぅ…
きれいに文章が決まらない…
というか急いで書きすぎで…展開ごちゃごちゃだし…。

今回は…せっかくの企画参加なので…甘くしようが目標だったのに。
彷徨君だけ積極的で未夢ちゃん気付いてないし〜
うまくおちなかったし〜
授業中一生懸命かいてたら…多分先生にばれた気がしなくもなくない…
むぅ…数学頑張りましょう。

裏方仕事を書きたいなぁと思ってたのに…
彷徨君は…目立ちたがりと言うか…表作業になっちゃって…
ちょっと不本意…。
ちーこは長ラン見たことないのですよ。
ただ見てみたいなぁの気持ちも含めて。
中学ブレザーだったし。
はぁ…これを…体育祭企画に出すのはちょっと気が引けたり…。
ごめんなさい〜

ん〜勝手な設定入りまくりで…それも気に入らない。
未夢が保健委員だったりとか。
はぁ…。

1つお気に入りは…「みーゆっ」だったりしたりします。 「未夢」より「みーゆっ」のほうがかわいい!(断言)
というか…ラブラブ度アーップ。って感じしません?

(初出:2002.10)

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