ちいさな診療所。より

ちょこっと

作:ちーこ

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ちょっとだけ髪型を変えた。
気付いて欲しいと思うのは…わがままかな



意を決してお店のドアをくぐったのはいいけど…
まだ決心がつかない。

「お席のほうへどうぞ」

にこやかな笑みとともに言われているのに
なぜか死刑宣告をされた囚人のような気分になる。

「今日はどんな感じにしましょう?」

10センチぐらい指で髪をはさんでみる。

「このくらいで?」
「あっ……このくらいで」

指を動かして…結局5センチのところ。
ちょっとこういう自分が情けない。
無難なところでやめておいて思い切った事ができない。
結局ずぅっとおんなじ髪型を保ったまんま。

「すごい長いねぇ…いつから伸ばしてるの?」

髪をとかしながら美容師さんが言う。
あんまりこういう会話は得意じゃない。

「えっと…小学生の頃からです。」
「へぇ〜伸ばすの大変だったでしょ?」
「いえ…そんなに…」

会話がきれいに交わらない。
やっぱり苦手だ。
はさみと一体化した美容師さんの手が
頭の周りを縦横無尽に動き回る。
さぱさぱさぱさぱ
床に散っていく髪の毛。
つい前の瞬間までこれが自分の頭についていたんだと思うとちょっと不思議。





「どうですか?」
鏡で後ろも見せられた。
変になってないのとたいして変わってないのを確認する。
こっちを見ている美容師さんにこくんと頷いた。





髪が長いと多少切ってもなかなか気がついてもらえない。
とは言え自分からすればだいぶ軽くなった感じがして悪くない。

「ただいまぁ。」
「おかえり。」

声は聞こえるのに彷徨の姿は見えない。
中まで入っていくと台所から鼻歌が聞こえる。
彷徨はよっぽどご機嫌らしい。
ちん
オーブンの音がしてミトンをつけた彷徨が何かを中から出している。
「何作ってるの?」
こと
テーブルに置かれたのはパンプディング。

「へぇ…おいしそう。彷徨やっぱ料理うまいね。」

ミトンをはずした右手がわたしの髪の先に触れた。

「髪、切ったんだな。」

さらさらと髪をいじくってぱっと離した。

「悪くねーんじゃねーの。」
くるっと後ろを向いていってしまう。
やばいよ…
超うれしいじゃんか
きっと赤くなってるであろう顔を少しでも隠そうと下を向いたら
少しだけ短くなった髪が顔にさらっとかかった。
いつものシャンプーとはちょっと違う匂いがした。



まぁ…最初は某娘。の類似バージョンユニット(笑)のあれですね。
多分言わなくてもわかるでしょう…
いや別に好きなわけじゃなく、たまたま心境的にね。
髪を切りました。少しだけ。
ちーこはどうも美容師さんは苦手でして。
話しかけないでいいから…と。
美容師さんとの会話はほとんど上のまんまです(笑)
はてさて学校に行ったら誰か私が髪切ったのに気付いてくれるかしら…
父親は気がついてくれませんでした。

パンプディングに意味はなし。
ただ食べてみたい…。
っていうかねあのレトルト版が出る前からちゃんと作り方は調べてあったんだからねっ。
まだ作ってないけど。

にしても…内容がないねぇ…

(初出:2002.09)

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