ちいさな診療所。より

夏の夜

作:ちーこ

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怖い…。
ホントに怖い。
自分でもこうなる事は予想できてたはずなのに…
バカだよね…ホント。




ちょっと早めのお風呂から上がると彷徨がTVを見ていた。
多分特に見るものがなかったからつけてるだけって感じだけど。
超自然現象&怪奇現象特集。
こういうの苦手だけど…なんとなく隣に座って。
たいした事ないなぁなんて思ってたら彷徨が立ち上がった。

「風呂行ってくる。」

部屋の中にはわたしだけ。
怖いんだけど…怖いんだけど…気になっちゃうんだよね…。





番組が終わったとき。
わたしは涙目になっていた。
怖かったぁ…
とりあえず落ち着こうと深呼吸。
意を決して真っ暗な廊下へと踏み出そうとした…

とん

か、かかかかか肩になななにかのった。

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ぺたんとへたりこんだわたしの後ろで笑い声がした。

「そんなに怖いんなら最後まで見なきゃいいのに。」
「だって…」

彷徨はまだ笑っている。
悔しくてなにか言い返そうと思ったけど……

「未夢、いつまで座ってんだよ。部屋戻るんだろ?」
「…立てないの…」
「まじ?」

わたしを見下ろして言う彷徨にこくりとうなずく。
すると彷徨はまた笑い始めた。

「信じらんねー。ガキじゃあるまいし、あれだけで腰抜けたなんてなぁ。」

わたしがむぅっとしていると彷徨が突然しゃがみこんだ。
ひざの後ろと背中に今までなかったぬくもり。
視界が変わった。
これは…もしかして…

「ちょっなにしてるの」

あせるわたしと反対に彷徨はしれっと言った。

「何って、立てないんだろ?部屋まで輸送。」

いや…そうでなくてですね…この状態…もういいや…
わたし一人で気にしてバカみたい。





部屋につくとぽすんと布団の上に落とされた。

「あ…ありがと。」
「ほら早く寝ろよ。怖がりなミユチャン。」

タオルケットをかけてわたしの頭をぽんぽんとたたくと彷徨は立ち上がった。

「んじゃぁオヤスミ。…といきたいとこだけど…これは何?」

彷徨に指差されてわたしは気づいた。
わたしの右手はしっかりと彷徨のパジャマ代わりのTシャツのすそをつかんでいた。

「ち、違!」

何が違うのか自分でもわかんないんだけど。

「怖いのか?」

からかわれると思っていたのに意外と真面目な口調で思わずうなずいてしまった。

「怖くなくなるおまじない、してやろうか?」

またこくん。





「んじゃ、おやすみ。」

彷徨が出ていった部屋に残ったのは
また一人ぼっちのわたしとかすかな唇のぬくもりだけ。

怖くないけど…怖くないけど…結局眠れないじゃないかぁ!




「夏休み明け直前。宿題切羽詰ってるぞ。もういいやあきらめちゃえ的創作」第二段。(一段はイラ。)
いやもう…。どうでもいいや…。

とある方から「書いてる小説は理想の恋愛では」というようなことを言われてちょっと悩み中。
多分これは理想の恋愛じゃない気がします。
きっとね。

とうとうでてきた姫だっこ。
これは物理的に可能なのか?
いや…不可能ではないと思うけど…どうなんでしょうね。
ちーこには望み薄です(あたりまえ)
はてさて…やけくそ創作第三段はありうるのか…。
お願いだから真面目にやってくれ…自分。

(初出:2002.08)

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