ちいさな診療所。より

ろりぽっぷ

作:ちーこ

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わんにゃーが珍しいものをもらってきた。
それは口に広がる甘味とともにくすぐったい思い出を
オレの記憶の中から引っ張り出してくれた。


「未夢さん彷徨さん見てください。こんなものもらったんですよ。」

なぜか自慢げにわんにゃーはオレ達にソレを見せた。

「うわぁ…なんか懐かしー。最近こんなの食べた事ないなぁ。」

ピンク色のソレはおおきな棒つきキャンディーだった。
「へー珍しいな…こんなのどうしたんだよ。」
「さっき商店街の抽選会であてたんですよ!すごいでしょう?」

すごいでしょうと言われても…こんなものを賞品にしている商店街ってという疑問が頭に浮かぶ。

「ルゥちゃまはまだ食べられませんし…ワタクシはみたらし団子がありますし…未夢さんか彷徨さんいかがです?」

未夢の顔がぱぁっと明るくなった。
期待を含んだ視線でこっちをじぃっと見る。
その顔があまりにも似合っていて。
ぷっと吹き出しながらオレは言った。

「食いたいんだろ。どーぞお召し上がりください。」
「いいの!?」

こくりと頷いてやるとニコニコしながら未夢は包みを開け始めた。



未夢がぺろぺろとキャンディーをなめている。
この光景はどこかで見たことがある。
そう。
あれは確か…オレがまだホントにちいさかった頃。
母さんと未夢の家を訪ねたときのことだ。





未夢の家へ行くと聞いてオレはご機嫌だった。
お気に入りの野球帽をかぶって、おみやげのセミの抜けがらを大事にポケットに入れて電車に乗り込んだ。
なかなか電車は込んでいて最初は座れなかった。
2つ目の駅に止まったときどぉっと人が降りていって、母さんが空いた席に座ろうとオレを促した。

くしゃっ

席に座った瞬間。嫌な音がした。
恐る恐るポケットに手を突っ込んで、中身を出した。
オレの手の上にのっていたのはさっきまでの面影なんてかけらもない、茶色の粉だった。

ばかばかばかばかばか〜!
かあさんのせいだぁ!
かあさんがすわろうっていったから
せみつぶれちゃったじゃんか!

電車の中だと言うのにオレは大声で泣いた。
そんなオレを母さんは少し困ったような顔で見ていた。
今、思い出してみると、電車の中で騒いで困ったなという類の困った表情ではなかった気がする。
まぁ…今では知る術もないけど。
そのあとはオレも興奮していたみたいであんまり記憶にない。



電車を降りた時にはだいぶ落ち着いてはいたものの、やっぱりオレは落ち込んでいた。
そのときだった。
駅の近くの…お菓子屋さんだったのだろうか…それも記憶が定かじゃないけれど…その前をとおりがかったときにオレは見つけた。

おおきなピンク色の棒つきキャンディーを。

進もうとする母さんを引っ張ってウィンドウを指差した。

かあさん、あれかって!

そのピンクはなんだかとても未夢に似合いそうで。

ねぇ、かあさんかってよ!!

道端でばたばたと騒ぐなんて…このときを除いて後にも先にもない。
オレが「何々買って」なんてねだる事自体珍しかった気がするけど。
店に入るとオレはそれをひとつ持って、レジへ行った。
そのときはもう、セミのことなんて頭になかった。
…単純だったな…オレ。



未夢の家につくとあいさつもそこそこに未夢へと駆け寄った。

みゆ。みてこれ。

さし出した手にはおおきなキャンディー。

しゅごーい。みゆこんなにおっきいのはぢめてみた〜!

未夢が喜んでくれたのが嬉しくて、キャンディーをそのまま渡した。

それ、やるよ。
いいの?ありがとー

未夢は嬉しそうに包みを開け始めた。



未夢がぺろぺろとキャンディーをなめている。
それを隣で見ていて最初は喜んでいたオレだったが…だんだんうずうずしてくる欲望に必死で耐えていた。
あんまりにも未夢がおいしそうに食べるから…オレまで欲しくなってしまったのだ。

これおいしー。かなたありがと。

にこっと笑った未夢に…とうとうオレも我慢できなくなって。
ぺろっと未夢の持っていたキャンディーをなめた。
口の中に甘味が広がった。





未夢がぺろぺろとキャンディーをなめている。
幸せそうに。
やっぱりオレは隣でうずうずしてる。
欲しくなってしまった…。

「みーゆ。」

色素の薄い目がこっちを向いた。

「オレにもちょーだい。」
「いいよ。」

差し出されたキャンディー。
それをやんわりと右手で押しのけて。
そっと未夢にくちづけた。

「か、彷徨!?」

未夢の声が上ずっていた。

「ごちそーさん。結構ソレ甘いな。」

口に広がった甘味は、思い出のそれよりずっと甘い気がした。
それは少し大人に近づいたからなのか
味見の仕方に問題があったのか
それはわからないけれど。



11911ヒットのむつみんさんのリクエスト「未夢と彷徨が幼少期、1個のキャンディを2人で食べるもの」でした。
なんか違うね。うん。
なんだか内容がない。
ってか最近思考がワンパターン。
オチもなんだかあんまり代わり映えがしなくて…だめだなぁ…。
最近うちの彷徨君やたら積極的な気がしません?
ってか…うーん。
別人ぽい感じがする。
原作からはなれて完全にちーこ版彷徨がいるみたい。
むぅ…面白くない。

飴のこと。
ちーこはすごく飴が長持ちするタイプなので…。
休み時間に1つ食べると授業ひとつ飴なめながら受けれます(笑)
だから棒つきの大きいのを食べたりしたら…
ぞぉっとしますね。
ネバァエンディング的な感じで。

現代のところにはかぎかっこ。
古代…じゃなくて昔の所はそのまんまで会話を書いています。
ちょっとわかりづらいかも。

(初出:2002.08)

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