作:ちーこ
「なんでこんなに雨降ってるのよ!天気予報のうそつきぃ!!降水確率30%って言ってたじゃない!!!」
ざぁざぁと降る雨に負けず劣らずの未夢の声が昇降口に空しく響いた。
「お前傘持ってこなかったのかよ。」
その後ろから呆れ顔で彷徨が歩み寄ってきた。
「だってこんな大雨降ると思わなかったんだもん。」
ぷぅっとほほを膨らませながら未夢は答えた。
「30%だったから?」
こくりと頷いた未夢にはぁっと彷徨はため息をついた。
「いるんだよなぁ…そういう勘違いしてる奴。」
「なによ!」
呆れを通り越して哀れみの目で見つめる彷徨を未夢は睨み返した。
「お前さ、100%は大雨で30%は小雨とか思ってるだろ。」
「っ!」
「降水確率っつーのは雨が降るかどうかの確率で、大雨かどうかじゃねーんだよ。だから小雨だろうが絶対降るって決まってれば100%だし、大雨でも降るかどうか分かんなかったら10%ってこともないわけじゃない。」
そこまで一息に言うと、彷徨はふぅっと息を吐き出した。
「まぁ…確かに大雨の方が小雨よりは確率は高くなるのかもしれないけどさ。」
とんとんと靴を整えて、傘を持つと彷徨は外へ進む。
「…たのひきょうもの…」
「んぁ?なんか言ったか?…んでお前は何やってるわけ?オレ早く帰りたいんだけど。」
小さく呟いた未夢にくるりと振り返って彷徨が言った。
「へっ?」
「だぁかぁらぁオレは早く帰りたいわけ。何ぼーっとしてんだよ。ほら早くしろ。濡れて帰りたいんなら話は別だけど。」
「えっあっわたしも帰る!」
未夢は靴を履くとパタパタと彷徨のそばに駆け寄った。
ぱっ
音を立てて傘が開く。
男物だから若干大きめではあるけれど、ふたりで入るにはすこしせまい。
とんっ
歩き出すとすぐに肩がぶつかった。
「あっ悪い。」
「…ゴメン。」
向き合った相手の顔があまりにも近くてお互いに顔をそらした。
行き場のなくなった視線があてもなくさまよう。
こつっ
ひじがぶつかった。
「「ごめん」」
ちらっと相手を見たつもりなのに、バッチリ目が合った。
雨の中で間近に見る相手の顔はいつもとはなんだか違う気がしていた。
気まずいと言うわけではないけれどどんどん体が離れていった。
コンナニ ドキドキシテルノハ ナンデダロウ
コンナキモチ ハジメテ カモシレナイ
イヤ マエニモ アッタノカモシレナイ
デモ ドウスレバイイノカ ワカラナイ
せまい路地に入った。
西園寺まではもう少し。
ぐっ
突然未夢は抱き寄せられた。
ぷっぷーっ
車がクラクションを鳴らして通り過ぎていった。
「どーこ見て歩いてんだよ。」
やっぱり呆れたように彷徨は言った。
「……冷たい……」
「水かかったのか?…そんなにはねなかったと思ったけど」
まだ腕の中の未夢のスカートを彷徨は見るが濡れた跡はない。
「…彷徨冷たい…」
ぺたぺたと未夢は彷徨の制服にふれる。
制服はちょうど半分だけ濡れていた。
未夢とは反対側の。
「濡れてるじゃん。」
「水も滴るいい男だろ?」
「なんで?傘さしてたじゃん」
「…傘がせまかったんだよ。」
彷徨の目は未夢を見ていない。
「…わたし濡れてないもん…」
「あぁもぉ帰るぞ!ほら、これ以上オレを濡らしたくなかったらこっちこい!」
またふたりは歩き出した。
今度はぴったり寄り添って。
「降水確率30%でもこんなに雨がふるんだよね……彷徨と私とるぅくんとわんにゃー出会ってこんな風になるのってどの位の確率だったんだろう……」
「さぁな。」
「ちょっとは真面目に考えてくれたっていいじゃない。……あっ…帰ったらなんかあったかい物作ってあげる。」
「…いや…いい…。オレまだ命捨てなくないから」
「それ…どーゆー意味よ。」
降りつづける雨はふたつの小さな呟きを飲み込んだ。
「ん?何か言った?」
「お前こそ何か言いかけなかったか?」
「100%だといいな」
「100%にきまってんじゃん」
梅雨でございますね。
なんか明けそうなんですか?最近ワタクシの所はあっついんですが。
文化祭も一段落。振替休日使って書きました。イラストも。
このお話のポイントは…さりげない彷徨…かなぁ…。
さりげなく相合傘に誘って、さりげなく未夢の方に傘を傾ける。
んでもって…それがばれると慌ててる。そんなさりげない人大好きです。
しかし…降水確率。コレであってますでしょうか。
コレで間違ってたら恥ずかしいので…もし違ってたら即連絡お願いします。
なにぶん無知なものですから。
さらっと流されてるけど。
水も滴るいい男なんて自分でいえる人すごいですよね。
いや…冗談で言ってるだけですよ…きっとうちの彷徨は。
というかはぐらかしたかったんでしょうね…きっと。
ってか女の子車道側歩かせちゃイカンだろう!
鼻息を荒くしてしまいそうになる私は…
フェミニストなのでしょうか…。
そんなこんなでいい加減感想長いので…。
ってか感想のほうが書きやすいと思ってるわたしってなんざんしょ。
(初出:2002.07)