ちいさな診療所。より

ボクがやきもちやいたわけ。

作:ちーこ

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「あはは〜それホントぉ?」

2時間目の終わった休み時間。
貸し出し期限が今日に迫った小説を読んでいたら、教室の前のほうから未夢の笑い声が聞こえてきた。
顔をあげると、未夢と三太が楽しそうに話している。
…最近、未夢があんなに笑ってるの見たことねーぞ…
なんだか腹が立って、本を開いたまま机におくと、未夢たちのそばに近づいた。

「あっ、彷徨。じゃぁ三太くんまた後で続き聞かせてね。」

…あきらかにさけられた…

「はいはぁい…ってどーした彷徨すごい顔しちゃって。」
「顔は生まれつき。母さん似で美人だろ。」
口調がとげとげしくなっているのが自分でもわかる。

「いつもなら『きゃぁ〜西遠寺くんカッコイー』なのに、今は『西遠寺くんこっわぁ〜い』って感じ」

そうやって明るく答えられるとわざとオレの神経を逆撫でしているのではないかと疑いたくなってしまう。

「うるさい!」
「あっ!彷徨やっぱりオレが光月さんと話してたからやきもちやいちゃってるんだ。」

…やきもち…なんかじゃない…と思う…
…ただ…未夢が楽しそうに話してるから…
…腹がたったって言うか…くやしかったって言うか…
…そういうのをやきもちっていうのか…?

「…別に…そんなんじゃねーよ…」
「やっぱり図星だ〜。」

オレを見ながら笑い出す。イライラする。

「ちがうっつってんだろ!」
「だって彷徨わかりやすすぎだぞ?」
オレが声を荒げても、余裕の表情であっさりと返される。
「彷徨ってさ、昔からあんまし顔には出さないじゃん?でもパターンさえわかれば簡単なんだよな。すぐわかる。」
「んなことねーよ。」
「ほら拗ねた。」

なんて返せば言いのだろう…。
自分の行動、言動を分析したことはないけれど、案外単純なのかもしれない。単純だと思っていた三太に見抜かれてるんだから。

「んで、どーしたんだい?彷徨くん。」

真剣な表情をしているものの、目が笑っている。オレをおちょくっているのだろう。

「もういい。」
「ほーら、彷徨くん。拗ねんなって。」

主導権は三太の手にあるらしい。おもしろくない。
バカらしい。くるりと三太に背を向けて歩き出した。
オレの席では開いたままの小説が待っている。

「光月さんってかわいいよな。オレの話笑ってくれるし。」

三太のつぶやきに不覚にも足が止まってしまった。

「オレ狙ってもイイ?」

考えたこともなかった。
…未夢と三太が…
なんで…よりにもよって三太と…って別に未夢と誰がどーなったっても関係ない…。

「あっ…でも光月さんって結構倍率高いんだよなぁ。今までは彷徨が隣にいるから、みんな声かけなかっただけで。」
意外な事実。
幼児体型でドジでバカでボケでマヌケなあいつが?
なんでまたあいつなんかに…

「ほら光月さんって裏表なさそうじゃん。だからいちいち反応素直でかわいいしさ。」

驚いている自分と
ショックを受けてる自分と
それを冷静に見ている自分がいる。
オレはいったい何がしたい?
何が欲しい?
よくわからない。
オレはそのまま席に戻った。
そのまま本を閉じる。
…この本、今日返さなきゃなんねーんだよな…
そんなことをぼーっと考えていた。





「彷徨〜帰るよぉ〜」
後ろからかけられた声にカバンを持って立ち上がる。
結局読み終わることができなくて、期限を過ぎてしまうが本はカバンの中に納まっている。ゆっくりと歩き出す。
今日の買い物当番はわんにゃーだ。
「なぁ、お前今日三太と何話してたんだよ?」
何気ない口調で尋ねてみる。
「ひみつ。」
さっきの三太の言葉が頭によみがえる。
「んだよ。言えないような話して馬鹿笑いしてたわけ?」
「むぅ…言えないことではないけど…でもひみつ。」
そういうと未夢はさっきの話を思い出したらしい。また笑い出した。
「あっそう。」
「なに彷徨。拗ねてるの?」
「誰が!」
何が悲しくて1日に2度も拗ねてるなんて子供みたいな扱いなんか…。
「あぁ〜わたしが三太くん取っちゃうかもしれないって拗ねてるんでしょ?彷徨こっども〜」
そんな勘違いが少しありがたかった。
オレは意外と独占欲が強いのかもしれない。
こうやって未夢と話しているのが本当にオレでよかったと思ってしまっている。
そんなこと、三太には全部お見通しなのかもしれないが。

「ばーか、誰がんなこと心配するかよ!」

ちょっとバカにしたような口調で返した。
三太の話からすれば、オレが隣にいる限り、こいつに近づく奴はいないってことになる。
だったら、それでいいんじゃないか。
何にも問題なし。ノープロブレム。
オレが隣にいればいいんだから。





オレが三太から事の真相を聞くのはその数ヶ月後。
その日のオレの機嫌は最高だったらしい。
だって嬉しくもなるだろう。
あんなこと聞かされたら。
「光月さんって彷徨の話したときだけホントに嬉しそうに笑うんだよなぁ…」って。
ただ気になるのは…。
「この間彷徨が拗ねてた時だって彷徨が幼稚園のころの話してたんだぜ?」
…一体…何の話…してたのだろう…
…まぁ…いっか…






minkさんからのリクエスト 「彷徨が男子といる未夢に嫉妬」
ん〜〜〜〜〜〜
わっけわかんない…
というかちーこは脳みそ足らんので…というよりは発想力が乏しいのであんまり同じようなネタを振られると結構困ったりします。
しかも最近嫉妬話書いたばっかだし。
うわっこれってグチ?だめだなぁ。
三太君なんでこんなに目立つ?未夢ちゃんの台詞よりおおいっちゅーの。
なんだかなぁ。
ちーこ的に男の人の気持ちはわからないので。
彷徨の一人称は書きにくいです。
(その割には書いてるけど…)
まぁそんなこんなで。
この程度で許してください〜 (初出:2002.05)

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