作:ちーこ
桜舞う春の風の中。
わたし達は3年生になりました。
「未夢!何やってんだよ!!遅刻するぞ。」
玄関から彷徨の声が聞こえる。
最近彷徨はどんどん背が伸びてるし、声も少し低くなった。
…もっとかっこよくなった…なんて言える訳ないじゃない。
「ちょっと待ってよ。もうやだぁ髪まとまんない〜。」
「あと30秒。」
いじわるなのは、相変わらずだけど。
わたしはなんとか落ち着かせた髪をもう一度、鏡でチェックしてかばんをつかむと玄関へと急いだ。
「おそい!」
「まだ30秒たってないもん!」
「ほら行くぞ」
歩き出した彷徨を追いかける。
春の空気が肌に心地よい。
「さくら、満開だね。」
「まだじゃねーの?7分咲っていうか…。」
「う〜ん、そうかなぁ…。じゃぁもっと綺麗になるんだね。」
自然ととなりを歩いていることが嬉しい。
彷徨が歩調を合わせてくれてるのが分かるから
「なぁ、未夢…」
風が吹いた。
強く。
さくらの花が流れていく。
スカートが風をうけて膨らんだ。
慌てて押さえる。
風がやんだ。
「…………見た?」
「見てない!!」
顔をそらしながら…即答…
「何を?」
「…………」
……彷徨……なんか……逆にあやしいよ…
「ホントに?」
「だから、見てないって言ってんじゃん。」
「だから何を?」
…ちょっとからかってみたり……多分…見えてなかったと思うんだけどね…
「……知らねーよ!!」
……耳まで真っ赤になってる……って見えてたのかなぁ……
……今日は……ピンクの…チェック…だったかな…
「何色だった…?」
「ぴ…知らないって言ってんだろ!!」
ぴって……やっぱり…見られてたわけ…見られてないと思ってたからやったのに…はずっ…
「彷徨のH!!」
「だから見てないって言ってんじゃん!!」
まだ見とめない彷徨におもわず詰め寄る。
また、風が吹いた。
完全に目が合った。
ちょっぴり赤いけど、女子に騒がれるだけの整った顔から、視線が離れない。
鼓動がどんどん速くなる。
わたしの顔にも血がのぼってくる。
深い茶色の瞳に吸い寄せられる。
風がやんだ。
ふっと現実に引き戻される。
「……行くぞ…ホント遅刻する。」
「うん。そだね。…っつ。」
痛みの原因。
目の前の
学生服の
第2ボタン
「うわっ…見事にからまってんなぁ…」
どうやらさっきの風でからんでしまったらしい。
一生懸命ほどこうとするけどなかなかほどけない。
体温を感じる。
どくん
どくん
どくん
どくん
心音を感じる。
誰の音かは…わからない
手がうまく動かない
「かせよ。オレがやる。」
がっしりとからまってしまったらしい。
彷徨がやってもなかなかほどけない。
時間だけがどんどんすぎていく。
これじゃ遅刻しちゃう…。
「いいよ、彷徨。切っちゃっても」
「んー。」
肯定とも否定ともつかない生返事。
「今はさみ出すから。」
「んー。」
はさみを出すためにかばんを開けようとした…とき。
ぶちっ
何かが切れた音がした。
「…かな…た?」
見上げた彷徨の手にボタンが握られている。
「そんなに綺麗に伸ばしてんだからもったえねーじゃん。」
…彷徨…無意識なんだろうなぁ…
…そーゆー言葉…真面目な顔で…言わないでよ…
…うれしくなるじゃんか
「げっ…遅刻だ…」
呟いた彷徨の腕時計を覗きこむ。
長針は…すでに…
「走るぞ!」
彷徨はわたしの手をつかむと走り出した。
気づいてないんでしょう?
わたしが彷徨の一挙一動に一喜一憂なんて
わたしが彷徨の笑顔で幸せなきもちになれることなんて
あなたは気づいていないんでしょう?
ひっじょうにわけわかんない文章。
自分で書いててなんじゃこりゃぁって感じ。
ちーこも髪長いんであっちこっち引っかかります。
この間、電車でなんかねじみたいなのに引っかかって困った困った。
結局私の可愛い髪の毛3本が犠牲になりました…(泣)
なんかまぁ…よくわかんないけど…春なんで…多少おかしくても気にしないように…。
(初出:2002.04)