嫉妬の行き先

【4.難問】

作:ロッカラビット

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未夢に隼人のことを問いただす彷徨。

そんな彷徨の様子に困惑し、逃げ出す未夢。

未夢は自分の気持ちに気付くことが出来るのか。


嫉妬の行き先 第4話 難問



***次の日***


未夢は珍しく早く起きるとそそくさと準備をし、朝食の準備をしていたワンニャーに驚かれつつも食事を済ませて彷徨が起きてくる前に家を出た。

「昨日のこと…何だったのかな?彷徨、どうしちゃったんだろう…。」

昨晩のことを思い出し、一人で顔を赤くする未夢。こんな状態ではとても彷徨と並んで学校に行けそうにはなかった。昨日の夜も考えすぎて眠れず、ほとんど寝ていない状態で朝を迎えた。考えようとしても何を考えたらいいのかわからず、ただ昨日の彷徨の様子を思い出すばかりだった。


学校に到着すると、まだ時間が早くて校内は静まり返っていた。未夢は教室にいるのも寂しいので、図書室へ向かった。誰もいないと思っていた図書室に人影を見つけて、未夢は少しビクッとした。

こんな早くから登校している人もいるんだぁ、などと感心しつつ近くにあった本を一冊取ると窓際の席に腰かけた。本を読む気などなかった未夢は、目線だけは広げた本に注がれていたが、何も内容は頭に入ってこなかった。

すると目の前の席に誰かが座った気がして、目線を本から離した。

そこには隼人がいた。

「あっ隼人。おはよう。」

「フフッ、おはよう。」

「え?何かおかしかった?」

「いや、先に図書室にいたんだけど、未夢上の空みたいでさ。全然気付かずに行っちゃうから、どうしたのかな?と思ってさ。」

「あっ、隼人だったんだ。ごめん。ちょっと考え事してて。」

「そっか。――――――。なぁ未夢。その顔、もしかして恋の悩みなんじゃないか?」

「え????な、な、なんで???」

「やっぱり。」

隼人は未夢の反応にまた少し笑うと続けた。

「なんとなく、色っぽい顔してたから。」

あっけらかんと言う隼人に、未夢は目を丸くした。

「い、い、色っぽい?」

「そう。なんつーか、女の子っていうよりも女性って雰囲気かな?」

「え???そ、そ、そうかな??」

未夢は自分の顔を両手で隠しつつ指の隙間から隼人を見た。

そんな未夢の行動に隼人は頬を赤くしつつも少し寂しい顔をした。

「そっか。やっぱり未夢は彼が好きなんだねぇ。」

「彼?」

「西園寺彷徨だよ。好きなんだろ?」

昨日は彷徨に“隼人が好きか”と訊ねられ、今日は隼人に“彷徨が好きか”と聞かれている。未夢の頭の中は“好き”という単語でいっぱいになって、パンクしそうだ。

「未夢、そんなに悩むことじゃないと思うぜ。」

優しい言葉に未夢は顔を上げて隼人を見た。

「そりゃ、自分の気持ちに気付くって難しいし、それが好きとか嫌いとかそういうのだと尚更だけど。でもあんまり深く考えないで、気持ちに素直になってみろよ。一緒にいたいなぁとか、話がしたいなぁとか、そんなシンプルな気持ちが一番大事なんじゃねぇか?俺だって未夢のこと好きだって気付いたのは、話がしてみたいって思ってからだったし。」

隼人は途中で未夢から視線を逸らすと窓の外を見た。

未夢もつられて外を見た。今日は天気がよく青空が眩しいくらいだ。

「なぁ未夢。俺は未夢が好きだけど、でも未夢には好きな奴の傍で笑ってて欲しいんだ。素直になってみると案外楽なもんだぜ。」

こちらを振り返って笑顔で語る隼人に、未夢も笑顔で小さく頷いた。



二人は図書室を出ると、それぞれの教室へ向かった。

しかし、その様子を職員室へ来ていた三汰が目撃していた。



昼休み、三汰は彷徨に小声で話しかけた。

「おい、彷徨、光月さんとどうなってるんだよ?」

「いきなりなんだよ。」

未夢の名前にピクッと反応したものの、表情は変えない彷徨。

「いや、今朝さぁ空井と一緒に図書室から出てくる所をみかけてさ。なんだか二人とも顔が赤かったし、何かあったのかな?と思ってさ。」

いつもは呑気な三汰も今回ばかりは彷徨を気遣ってか、様子を窺いながら小さい声でボソボソと話した。

空井という名前にまたピクッと反応した彷徨だったが、それ以上は何も言わなかった。
黙り込んだ親友に、これ以上は何も聞けないと悟った三汰は今度は陽気な声でトリの話題を話始めた。

トリの話題に「あぁ」とか「ふーん」と生返事をしつつも、彷徨の頭の中はさっきの三汰の話でいっぱいだった。

今朝起きたら未夢が家を出た後だった。昨晩のことがあるので仕方ないかと思っていたが、朝から空井隼人と会っていたとなると話は別である。

未夢のやつ、やっぱりあいつが好きなのか?昨日の様子では、本当に友達としてしか見ていない感じだったのに…。考えれば考える程、彷徨は憂鬱になっていった。




未夢にとって自分の気持ちを探るのは、難問で。

彷徨にとって未夢の気持ちを探るのは、難問で。

ロッカラビットにとって小説を書きあげるのは、難問で。(笑)


さて、第4話まで来ましたね。次がラストです。


嫉妬の行き先、第4話、難問、読んで下さりありがとうございました。

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