嫉妬の行き先

【3.独白】

作:ロッカラビット

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空井隼人の存在を知り不機嫌になる彷徨。

さらに未夢と隼人の見つめ合う姿を目撃し…。


嫉妬の行き先 第3話 独白




作業を終えて帰宅すると、今日もご機嫌な未夢の姿があった。

「おかえり〜彷徨。水野先生の用事、時間がかかったみたいだね。お疲れ様。」

「あ〜い、パパ、きゃーい。」

ルゥを抱きながら笑顔で迎えてくれる未夢に、嬉しい反面、その笑顔の理由に嫉妬する。

「あぁ。」

思わず無愛想な返事をしてしまい、ハッとして顔を上げる。

そこには悲しそうな未夢の顔があり、しまったと思いつつもどうすることも出来ずに自分の部屋へ駆け込んだ。

「ル?」

ルゥがそんな二人の様子に不思議そうな顔をしていた。


夕食を囲む席でも彷徨は不機嫌で、未夢は理由がわからずに黙り込み、ワンニャーはおろおろし、ルゥも大人しくしている。

そんな重たい空気に罪悪感がつのり、彷徨が口を開いた。

「さっきは悪かった。未夢は悪くないから、気にするな。」

未夢の方を見ることは出来ずに自分の手元をみる。さっきから箸が進まない茶碗には、まだまだご飯が残っていた。

未夢が何か言いたそうに口を開いた気がしたが、その後に言葉は返ってこなかった。

そのまま食事を終えて、今日は各々部屋へ戻った。


今日出ていた課題を終わらすべく机に向かった彷徨だが、放課後のあの光景が頭に浮かび問題がまったく頭に入ってこない。仕方がないので、顔でも洗ってさっぱりするかと立ち上がった時だった。

「彷徨、ちょっといいかな?」

襖の向こうから声がした。

「未夢か?あぁいいぞ。」

なるべく平然とした声を装って答える。

未夢はそっと襖を開けると俯き加減で部屋に入ってきた。

「あの…彷徨。何かあったの?悩み事とか…。」

「え?」

「いや、言いたくないんなら別にいいんだよ。でも、いつも彷徨は私の悩みとか気付いてくれて…、だから私も…って、私じゃ役にたたないかもしれないけど。」

後半、顔を上げて少しおどけて言う未夢を、彷徨は思わず抱きしめていた。

「え?彷徨?ちょっと、どうしたの?何かあったの?」

彷徨の腕の中で心配そうな声を出す未夢。


しばらく沈黙し、未夢のぬくもりを感じていた彷徨は静かに口を開いた。

「あいつ、一体なんなの?」

「え?あいつ?」

「陸上部のあいつ。」

「え?隼人のこと?」

彷徨の返事は無い。

「えっと、だから友達になったの…。」

「何で?」

「えっ…。それは、その…。」

「告白されたのか?」

「えっ何でわかったの?」


ハァとため息をついて、ようやく彷徨が未夢を包む腕を緩めた。それでもまだ彷徨の腕の中にいるのには変わりはない。先程とは違い相手の顔が近距離で見える状況に、未夢の方がドギマギしている。

「お前、あいつのこと好きなのか?」

「え?うーん、好きというか、友達だし、好きだよ。友達だもん。」

未夢は真剣に考えているようだったが、彷徨の意図する好きとは違う答えだった。

その答えに彷徨はまたため息をつくと、もう一度ギュッと未夢を引き寄せた。

「お前、俺のこと好きか?」

耳元で囁かれる甘い声。思わず未夢はボンッと音を立てて真っ赤になる。

「おーい、聞いてるか?未夢。」

そんな未夢をからかうように彷徨は続ける。

「光月未夢さんは、西遠寺彷徨君が好きですかぁ〜?」

真っ赤になった未夢は、グイッと彷徨を押しやると潤んだ瞳で彷徨を見つめた。

「か、か、かなた、何だか今日は変だよ?どうしたの?」

「答えになってない。」

「いや、だから、変だってば。」

「答えてくれないのか?」

少し悲しそうな顔になる彷徨。未夢はそんな彷徨の様子に困惑顔になる。

そんな二人の間に長い沈黙が続いた。

その沈黙に耐えかねて未夢は無理やり彷徨の腕の中からすり抜けた。

「彷徨、どうしたの?やっぱり今日の彷徨は変だよ。お風呂入ってスッキリしてきなよぉ。じゃぁ私、もう寝るね。」

捲し立てるように言うと、未夢は部屋から出て行った。


「少しは俺の気持ちに気付いたか?」

一人残された彷徨は、未夢が出ていった襖に小さな声で投げかけた。





サブタイトルは告白ではなく独白です。

彷徨君、ここでズバッと告白しないのは、未夢ちゃんへの優しさですかねぇ。

ひとり言では無いのだけれど、自分の気持ちが上手く相手に伝わらない感じが、彷徨君の独白っぽいなぁと…。

これだけされて気付かないって、私の中で未夢ちゃんはどんだけ鈍い設定になってるんだー(笑)

さて、続きも頑張るぞー!
楽しみにしてくれている人いるかしら?(汗)
まぁ自己満足ってことで(笑)

嫉妬の行き先 第3話、独白、読んで下さりありがとうございました。




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