作:ロッカラビット
空井隼人という男の子に告白を受けた未夢。
そんな未夢の様子に違和感を感じる彷徨。
未夢の心の行方は?彷徨の気持ちは?
嫉妬の行き先 第2話 動揺
***次の日***
いつものように朝からバタバタ走り回り、ワンニャーの朝食をかきこみ、ルウに行ってきますの挨拶をして彷徨と学校へと向かった。
校門の所でクリスに会い、慌てて離れた彷徨と未夢は間一髪の所で飛んできた桜の木を避けることが出来て胸を撫で下ろしていた。
そこに隼人がやって来た。
「おはよう未夢」
「あっおはよう隼人」
昨日の帰りにすっかり打ち解けた二人は名前で呼び合う程になっていた。
「昨日はありがとう。助かったよ〜。」
「いや別に大したことしてないし。それよりあの階段、あの荷物持ってあがったのか?上まで持ってくって言っても頑なに拒否してたけど。」
「あぁあれは、えっと、(ワンニャーや飛んでるルゥくんを見られたら大変なんて言えないし)うん、大丈夫!私、意外に力あるから!!」
ブンブンと腕を振って見せる未夢。
ブッと噴き出して笑う隼人に、未夢は少し顔を赤くした。
そんな話をしながら玄関まで来ると「じゃぁ、俺あっちだから」と言って隼人は自分の教室へ去って行った。
ふぅ、と一呼吸つく未夢の後ろから
「あいつ、何?」
ブスッとした声で彷徨が声をかけた。
「あっ彷徨、あれ?クリスちゃんは?」
彷徨は無言で指をさすと、その先には元の場所に桜の木を植えるクリスの姿があった。
苦笑いの未夢を横目でチラッと見つつ、先程去って行った男の背中を睨む彷徨。
「んで、あいつ、何?」
「え?あいつ?」
未夢が彷徨の視線の先を見る。
「あぁ隼人君。えっと、陸上部で同じ2年生の空井隼人君だよ。」
「空井隼人。」
彷徨はぼそっと呟いて、自分が聞きたいのはそういうことじゃないんだがと思っていると
「おっはよー未夢〜!」
「おはよう未夢ちゃん!」
「あっおはようななみちゃん!綾ちゃん!昨日のドラマ見た?綾ちゃんが言ってた―――。」
クラスメイトがやってきて、話が盛り上がり始めてしまい、これ以上は聞けないと悟った彷徨は、そのまま教室へ向かった。
不機嫌そうな彷徨を気にかけつつも未夢はななみと綾と女子トークで盛り上がっていた。
放課後になり帰宅の準備をしていると彷徨が未夢に声をかけた。
「おい、未夢、今日の帰り…。」
「あっいたいた!西遠寺君、ちょっといいかしら?」
話の途中で担任に声をかけられ、彷徨は一瞬迷ったが水野の手にある資料を見て、これは時間がかかると悟ると未夢に何でもないと告げて、水野と共に教室を出て行った。
「今日の彷徨、なんだか変なの。」
一人呟き、未夢も教室を出た。
校庭では部活動をする生徒の姿が見られた。その中に見知った顔を見つける。
「あっあれ…。」
目線の先にいるのは空に向かってフワッと飛び上がる隼人の姿だった。
隼人は高跳びの選手だと昨日の会話で聞いていたけれど、実際に飛ぶ姿を見るのはもちろん初めてで。まるで空に吸い込まれるように優雅で美しい跳躍だった。
しばらくそんな姿を見つめていると、彼も未夢の姿を見つけたようで笑顔で手を振ってくれた。
未夢も笑顔で手を振りかえし、学校を後にした。
そんな様子を彷徨は教材準備室から見ていた。
水野に言われて資料を運び、作業に入る前にふと窓の外を見つめると、未夢の姿があった。
思わず目で追いかけていると、未夢は立ち止まりグラウンドを見つめていた。そしてその視線の先には朝のあいつがいた。しばらくすると二人は手を振り合って…。
「未夢……。」
隠しきれない動揺が彷徨を襲う。今ここに誰もいないことに心からホッとした。こんなに狼狽した姿を人には見せられない。未夢のあの笑顔、向けられたのは俺ではなく他の男。そして朝の馴れ馴れしい会話。いつの間に?何故、俺じゃない?その笑顔は俺だけの…。
そこまで考えてハッとする。未夢との関係を“家族”のまま進展させてこなかったのは自分自身だ。何があっても未夢は俺の傍で笑ってると思っていた。焦る必要は無いと。自分以外に未夢の相手をする奴はいないと過信していた。まさかこんな日が来るなんて…。
しばらく窓の外を見つめ続けた彷徨は、暗い気持ちのまま資料に手をかけた。いつもよりはかどらず作業に時間がかかる。頭をよぎるのは今朝の二人、先程の二人、そして見たくない想像。頭をブンブンと振って、頬をパンパンと叩き、彷徨は資料に集中しようと努力した。
あっ。バレましたか?
そうなんです。
彷徨が嫉妬する所が書きたかっただけなんです…この話(笑)
とにかく最後まで頑張ります!!
拍手やコメント、ありがとうございます!!とっても嬉しくてニヤニヤしちゃいます(笑)
嫉妬の行き先 第2話、動揺、読んで下さりありがとうございました。