作:ロッカラビット
隼人と話をし、自分の気持ちを整理する未夢。
隼人と未夢の関係に、不安を抱く彷徨。
三人の関係は…?
彷徨の嫉妬の行き先は…?
嫉妬の行き先 第5話 最終話 呼吸
***放課後***
未夢は放課後になると、逃げるように学校を後にした。今日は一日彷徨と目も合わせなかった。目があったら、冷静でいられないと思ったからだ。自分の気持ちに気が付いた今、誰よりも彼の傍に居たい、彼の声が聴きたいと思うのだが、それと同じくらいこんな自分を見られたくないと思ってしまう。
今まで、彷徨とどんな風に過ごしてたかな?公園のブランコに座り未夢は考えていた。昨日まで、こんなことになるなんて思ってもみなかった。いつも通りにしたいのに、出来そうにない。はぁと深いため息をついて、小さくブランコを揺らした。
授業が終わり下校の時間、彷徨は陸上部の部室を訪れていた。そこに探していた人を見つけて呼び出した。
「西遠寺君。何か…用って聞くまでもないね。未夢のことだろ?」
「あぁ。」
隼人が言い当てたことに顔色一つ変えない彷徨に、隼人の方が驚いた。
「さすがだねぇ。そんなに賢いのに、何ですれ違ってるの?」
隼人の言葉に一瞬ハッとした表情を見せる彷徨。
「お前…。」
「別に俺は何もしてないよ。それに未夢の気持ちなんて、俺が言わなくてもわかってるんだろ?」
彷徨の言葉を待たずに話を続ける隼人。
「ほら、早く行きなって。もう今日中に片付けろよな。俺は未夢がお前の傍で笑ってる顔が好きなんだよ。悔しいけど仕方ないだろ、こればっかりはさ。」
言い終えると、さっと身を翻しグラウンドへ走って行った。しかし少し行った所で振り返ると、思い出したように一言。
「お前がいらないって言うなら、俺がもらうけど?」
悪戯そうに笑う隼人に彷徨もフッと笑う。
「悪いがそれはないな。」
それだけ言うと彷徨も背を向けるとその場を去った。
彷徨の後姿に隼人は、ふぅと一息つくとまたグラウンドに向かって走り出した。今日の空はとっても青い。こんな日は思いっきりジャンプしてあの大空に包まれないとやってらんないな。その日、隼人は自己ベストを記録した。
彷徨は帰り道を急いでいた。未夢に会いたい。昨日までとは違う自分。掴みたいものがある。手に入れたいものがある。想いが募って、走るスピードが上がる。
公園の角を曲がれば家まであと少しだ。
そう思った瞬間、目の端に探し求めていた人物を見つけた。
「未夢。」
息を切らしてやってくる彷徨に驚きを隠せない未夢。
「えっ!か、かなた!何で?どうして?どうしたの?そんなに息を切らして、何かあったの?」
驚きつつも、彷徨のただならない様子に何かあったのかと心配する未夢。
「いや、何もない。」
息を整えながら彷徨が話始める。
「ただ、お前を探してた。」
「え?私を?」
「未夢、伝えたいことがある。」
しばしの沈黙の後、ふぅと一呼吸ついた彷徨が改めて未夢の目を見つめた。
「俺、未夢のことが好きだ。家族みたいに大切だけど、家族のような好きじゃなくて。未夢にずっと傍にいて欲しいんだ。」
彷徨のまっすぐな瞳と言葉に、未夢はただ呆然としていた。そして頬をつたう涙にハッと我に返った。
「わ、私…。」
慌てて彷徨から視線を逸らす未夢。次から次へとこぼれてくる涙を見られないようにそっと拭う。
「未夢。」
そんな未夢を彷徨は抱き締めて、顔を自分の方へ引き寄せた。
しっかりと未夢の目を見つめて。
「未夢、好きなんだ。」
しっかりとした固い意志を持った言葉とは裏腹に、必死で未夢を求める眼差し。それはまるで母親を探す迷子のように、不安な色をしていた。
そんな彷徨に見つめられるうちに未夢はだんだんと気持ちが落ち着いてきた。
「彷徨、私も彷徨が好きだよ。ずっと傍に居たい。他の誰でもなく、彷徨と一緒に居たい。」
頬を赤らませ潤んだ瞳で見つめながら、それでも彷徨を安心させるために優しい笑顔でそっと伝えた。
そんな二人を夕日が優しく包みこみ、影がそっと重なった。
***ワンニャーの育児日記***
昨日の異様な雰囲気とは違い今日はニコニコでご帰宅されたお二人。
ようやく未夢さんと彷徨さんの気持ちが通じ合ったのでしょうか?
ですが結局、夕飯の際に目玉焼きにかけるのが醤油かソースかで言い合いになって…。
まぁそれが普段のお二人ですからねぇ。
ルゥちゃまもお二人の言い合いを楽しそうにキャッキャッと喜んでおられました。
それにしても一体何があったのか、お二人に話を聞こうとしたら真っ赤になって逃げて行ってしまわれました。
うーん。気になりますねぇ。
聞くのは野暮ってもんですかねぇ。
ケンカする程仲がいいと言いますし、ルゥちゃまのパパママとしてこれからも仲良くしていただかなければ。
甘々な描写が苦手な私はシルエットで誤魔化しました。スミマセン。
甘々な話は好きなんですよ!!ただ、私にそれを書く才能が無いだけです。(涙)
夕日をバックに影が重なる画って、青春ぽくて好きなのですが…古臭いですかね?(汗)
キスシーンは原作だけでしたよね?記憶が曖昧になりつつある…。
アニメ再放送しないかなぁ…。
そうそう!サブタイトルの呼吸は…。
未夢が自分の恋心に気付いて、好きな人を想って吐き出すため息。
隼人の、彷徨と対面して緊張した後の一呼吸。
彷徨の未夢を想って走り、切らした息。
想いが通じ合って重なる呼吸。
などなど、総じて呼吸となりました。
次は短編を…と思っておりましたが、何かネタ無いかなぁ。
こんなの読みたい!とかありましたら、教えてくださーい。
って、私の力量じゃ無理かしら?(汗)
嫉妬の行き先、第5話最終話、呼吸、読んで下さりありがとうございました。