新年の誓い

2.

作:ロッカラビット

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「やっぱり込んでるねぇ〜。これだけ人がいれば何か面白いネタとか落ちてるかも〜♪」

「おいおい綾〜、迷子にならないでよ〜。さ〜て、未夢、どっから行く〜?まずは腹ごしらえかな〜?」

「ななみちゃん、さすがだねぇ〜。でも、この人込みだとレストランとかすごいこんでそうだよぉ。」


さっそくメモを取り始める綾と、相変わらず食欲旺盛なななみに押されつつどうしようかと考えていると。


「あの〜、でしたら“お正月みたらし大集合”に行きませんかぁ〜?べ、べつに、わたくしが我慢出来ない訳じゃありませんよぉ〜。」


ワンニャー丸出しの走り方で後を追ってきた親戚のお兄さんが、目をキラキラと輝かせて話に入ってきた。


「あ〜、いいですねぇ!確か催し物会場は最上階…よ〜し、皆でみたらし団子を食べに行こう!」


施設マップを確認すると、エスカレーターを指さして号令をかけるななみ。


「ほら〜、黒須君も行くよ〜。」


1階で開かれていた中古レコードセールに吸い寄せられそうになっている三太を捕まえて、綾がずりずりと引きずって行く。

エスカレーターには、ななみが先頭で、次にルウ君をおぶったワンニャーが、そして綾に三太と続き、その後ろに彷徨が。一番後ろに未夢が並んだ。


何階か過ぎて、もうすぐ目的の階という所で、未夢が何かをみつけた。


「あっ…あの子…。」


エスカレーターを降りると慌てて皆に声をかける未夢。


「あの、ゴメン。私ちょっと下の階に行ってくるね。皆は先にみたらし団子食べてて。ルウ君のことよろしくね。」

「え?ちょっと未夢〜?」

「未夢ちゃん?」


突然の未夢の行動に、次の階へと向かうエスカレーターに足を乗せていたななみたちが驚いて振り返る。


「大丈夫だから、お前らは先に行って俺たちの分も買っといてくれ。お兄さん、食べすぎるなよ。あと、ルウのこと頼んだぞ。」

「え?あっはい〜!おまかせください!」


彷徨の勢いに思わず胸を張ってシャキッと返事をするワンニャー。

上に登って行く友人たちに声をかけるとキュッと靴を鳴らして、反対側の下りエスカレーターへ向かう未夢を追う。


「やっぱりあの子…。」

「迷子だな。」


下の階へ着いた未夢が遠くを見つめて呟けば、隣から聞きなれた声が降りてくる。


「え?彷徨?」

「ほら、早く行くぞ。あの子結構な勢いで泣いてるし。放っておけないだろ。」


顔をまっすぐ前へ向けたまま、未夢の手を掴んで歩き出す。


「あっ、うん…。」


驚きと共に訪れる幸せな気持ちに顔が熱くなる未夢。

もちろん迷子のあの子が気になって心配な気持ちもあるけれど。

こうやって、彷徨と同じ思いで行動が出来るのが嬉しくて。

隣に歩く彷徨の顔をそっと覗けば、彼の顔もほんのり赤くなっていて。

そのことに、また、胸が大きくドキンとなった。


「やっぱり、迷子だったな。」


子どものもとまであと一歩という所で一度足を止めると、辺りを見渡して彷徨が口を開く。

同じように辺りを見渡すと、未夢が彷徨の手を離し子どものもとへ歩み寄る。

離れた手に寂しさを感じつつ、未夢の後ろにつく彷徨。


「ぼく、ママとはぐれちゃったのかな?」

「え〜ん ママー ママーどこー え〜ん」

「大丈夫だよぉ、すぐにママ見つかるからねぇ。」

「え〜ん え〜ん」


泣きやまない男の子の頭を優しく撫でながら、彷徨の顔を見上げる未夢。


「彷徨、どうしようか?迷子センターで呼び出してもらう?」

「う〜ん、そうだなぁ。さすがにデパートっつっても今日のこの込み具合じゃ、俺たちだけで見つけ出すのは難しいだろ。」


二人の会話に、男の子が首を振る。


「いやだ グスン だめだ グスン ぼくはここで グスン ママをさがすんだ グスン」


こぼれ落ちる涙はそのままに、鼻をすすりながら未夢たちを見上げる姿に、未夢が優しく話しかける。


「そっか。ここでママを探していたんだね。じゃあ、お姉ちゃんたちも一緒に探すお手伝いしてもいいかなぁ?」

「グスン おねえちゃんたちも グスン いっしょに? グスン」

「あぁ、そうだぞ〜。ほ〜ら、これならもっとお店を見渡せるだろ〜?」


ふわりと子どもを抱き上げて、店内が見えるようにゆっくり体を動かす彷徨。


「まっ、とりあえずこの辺を回ってみて、それでも見つからなかったら連絡してもらうってことで。」

「うん、そうだね。あっ、そうだ、ねぇボク。お名前は何て言うの?」

「ひ グスン る グスン ぼし ヒッ そら グスン」

「ヒルボシ ソラ君?」

「うん」


ようやく落ち着いた様子のソラに、「そっかぁソラ君かぁ」と笑顔を送る未夢。


「よ〜し、ソラ。ママを探すぞ〜?」


彷徨の掛け声に、少し元気を取り戻したソラが小さく「オー!」と腕をあげた。



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