新年の誓い

1.

作:ロッカラビット

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この作品は、前作、「大掃除の後で…」の続編です。

そちらを読まれていない方は、戻ってお読みいただけると幸いです。





「ったく、なんで元日からこんな人込みに…。」

「もぅ、文句言うなら留守番してれば良かったのにぃ。」

「っ!んなこと…。ワ、ワンニャーとルゥも行くって言うし、何かトラブルあっても大変だろ。」

「うっ…。そりゃそうだけど…。」


理由は別にあるのだが、本当のことなど言えるわけがない彷徨。

それでなくても目立つのに、本人にその自覚がないことが問題で。

自分の目の届かない場所に、ましてや込み合うデパートなんて…絶対変な奴がちょっかいを出すに決まってる。

ここに来るまでだって、未夢を見つめる男たちの眼差しを遮るようにして歩いてきたのだ。

ワンニャーたちがいるからと言って放っておけるわけがない。

たとえ気持ちが通じ合ったとしても、そんな彷徨の気持ちなど未夢には通じるはずもなく、彷徨の言い訳を素直に受け入れ苦笑いを浮かべた。



1月1日の今日、彷徨、未夢、ワンニャー、ルウの4人は揃って、デパートへお出掛けである。

お目当ては未夢の福袋と“お正月みたらし大集合”という催し物、こちらはワンニャーが懇願したのでしぶしぶだったが…。


「で、あいつらは?」

「あっ…それは…。」


デパートの入口で、こちらに手を振る良く見知った顔に眉を寄せる彷徨。


「あけおめ〜未夢〜!」

「未夢ちゃん、おめでとう〜!」

「ななみちゃん、綾ちゃん、あけましておめでとう!今年もよろしくね!」


ななみと綾に簡単な挨拶を済ませると、また彷徨を振り返りえへへと頭をかく未夢。


「あ、あのね、彷徨、実は綾ちゃんとななみちゃんと冬休み前に約束してて…。」

「それはいいとして…なんで三太まで…。」

「おぅ彷徨!あけおめ〜!今年もよろしくな〜!」


綾とななみの後ろからひょっこり顔を出す三太に、「はぁ…」とわざとらしくため息をつく彷徨。


「いや〜、正月って言っても暇だからさぁ、彷徨の所に遊びに行くかと西遠寺に電話したら出なくてさ、仕方なく街をプラプラしてたら天地さん達に会ってついて来たって訳。」


あっけらかんと話す三太に、なるほど!と納得顔の未夢。


「そっか〜、三太君は誘われてなかったけど偶然いつものメンバーが揃ったんだ〜。それってすごいねぇ〜。」


ニコニコと笑顔の未夢に対して、グサグサと言葉が刺さる三太。


「ひどいよ〜光月さ〜ん。そりゃ誘われてなかったけどさ〜。偶然来ちゃったけどさ〜。ど〜せ俺なんて…俺なんて…。」

「そ、そんなことないぞ〜三太〜。俺は三太に新年早々会えてうれしいぞ〜。それに俺だってたまたま来ただけだからな〜。」


泣き崩れる三太の肩に腕を回して、ハハハ〜と作り笑いで話しかける彷徨。


「か、かなた〜、やっぱり俺たち親友だよなぁ〜。そうだよ、俺たちは連絡なんてしなくても繋がってるんだ〜。よ〜し、今日は一緒にトリのレコード新春スペシャル版を探そうぜ〜!!」


すっかりご機嫌に戻った三太に気付かれないように、未夢の耳元で囁く彷徨。


「おまえなぁ〜、こんなデパートの入口で三太泣かすなよなぁ。周り見てみろよ。」


言われて辺りを見渡せば、何事かと興味津々の眼差しを向ける人々と目が合う。


「うっ…。ごめん。」

「まぁ悪気は無いのはわかってるけど。気を付けろよな。」


ベッと小さく舌を出して三太と仲良くデパートに入っていく彷徨。

「わかってる」という言葉にポッと頬を赤くする未夢。

彷徨と気持ちが通じ合ってからまだ2日しか経っていない未夢の頬を染めるには十分な言葉だった。


彷徨は、私のこと理解してくれている…それだけのことが嬉しくて恥ずかしい。


頬に手をあてて、嬉しそうに彷徨の背中を見送る未夢に、二人が声をかける。


「あれ〜未夢〜どうしたのかな〜?真っ赤だよ〜。」

「愛の言葉でも囁かれた?未夢ちゃん。」


未夢の気持ちが彷徨にあるのは前から知っていた二人だが、お正月を迎える前に気持ちが通じ合ったことはまだ知らない。

それでも鋭いツッコミを入れてくる二人に未夢が慌てて言葉を返す。


「ち、ちがうよ〜。もぅななみちゃんも綾ちゃんも、ほら行くよ!福袋売り切れちゃう!」

「あ〜、待ってくださ〜い、未夢さ〜ん。彷徨さ〜ん。わたくしたちのことお忘れじゃないですか〜。」

「ル?」


人混みをかき分けて皆の後を追う“みたらしさん”もしくは“親戚のお兄さん”姿のワンニャー。

ルウはワンニャーの背中で眠たそうな目をこすりつつ小首をかしげていた。





あけましておめでとうございます。

新年のご挨拶もかねて、新作をアップ致します。

今年も皆様にとって素敵な1年になりますように…。


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