作:ロッカラビット
「やった〜!!終わった〜!!あぁもう18時だよぉ〜。我ながら頑張ったと思う…って、そういえばこれ…。」
片付けに際して、またなくさないようにと机の隅によけておいたペンダント。
中の写真を見つめて、苦笑いの未夢。
「なんでこの写真?………あれ?これ…。」
先ほどは気が付かなかったがよく目を凝らすと、もう一枚めくることが出来そうだった。
爪をひっかけて、それを開くと…。
「あ〜!こっちにも写真があったんだ〜!」
嬉しそうに笑って、しげしげと眺める未夢。
「懐かしいなぁ〜、元気かな?みほちゃん。そして、るいくん。」
ページを戻して、笑顔の男の子を見つめる。
と、台所の方から声がかかる。
「未夢さ〜ん、晩御飯できましたよぉ〜!」
ワンニャーの元気な声にハーイ!と一つ返事をすると、ペンダントを机に戻しパタパタと台所へ向かう。
「お疲れさまですぅ。お掃除終わりましたか?」
「なんとか終わったよぉ〜。」
へなへな〜と椅子に座りこむと、ふわふわとルウが飛んでくる。
「マンマ〜、パンパ〜。」
「どうしたの?ルウ君。あれ?彷徨は?」
「あれ?先程声をお掛けしたのですが、聞こえなかったのでしょうか?」
「いいよ、ワンニャー私が行ってくる。」
彷徨を呼びに行こうとするワンニャーを止めて、未夢が部屋へと向かう。
「あっルウちゃま、だめですよぉ。それはまだ食べられませんから、ルウちゃまのミルク用意しましょうね。」
「あ〜い。」
台所の奥へ引っ込むワンニャーに空を飛んだままルウが付いて行く。
「彷徨、ご飯だよ〜。」
襖の外で声を掛けてみるが返事が無い。
「彷徨?いないのぉ?開けるよ?」
未夢が襖に手をかけるが、重たくてピクリとも動かない。
「え?開かない…う〜ん、お〜も〜た〜い〜!!っうわぁ!!」
無理やり開けようとしていた襖が急に軽くなり、勢いよく開き思わず叫ぶ未夢。
「あっ、わりぃ。寝てた。」
ふわぁ〜と、欠伸をしながら伸びをする彷徨。
どうやら襖にもたれて眠っていたらしい。
「彷徨、大丈夫?めずらしいね、こんなところで寝てるなんて…。」
座っている彷徨を屈んで覗き込む未夢に、驚いて思わず体をのけ反る彷徨。
「なっ、なんでもない…。……あれ?今、何時?」
「18時過ぎだよ。彷徨いつから寝てたの?」
「うー、いつからだろ。あー、体が痛い…。」
もう一度腕をあげて体を伸ばしてみるが、固まっていた体からパキパキと音がする。
「そんな体勢で寝てるから…。ほら、立って。ご飯だから。」
彷徨をよけてするりと部屋に入り込むと、彷徨の目の前に立って手を差し出す未夢。
伸びをしていた手を掴むと、彷徨を立たせようと力一杯引っ張る。
「え?おい、ちょっ、おまっ・・・・‥‥…」
「あっ、きゃっ、きゃーーーー!!!!」
勢いよく引っ張ったせいで、今度は未夢が仰向けに倒れ込む。
手を掴まれていた彷徨が、未夢の上に馬乗りになった。
明かりの点いていない部屋は薄暗く、相手の顔もうっすらとしか見えない。
それでも重なった視線をお互い外すことが出来ずに、固まる。
高鳴った心音が規則正しく体に響く。
「あっ、わりぃ。」
先に我に返ったのは彷徨で、小さい声で謝ると慌てて未夢から体を離す。
「う、うん…。私こそ、ごめん。」
床に手をつきながら体を起こす未夢。
「ワ、ワンニャー待ってるな。早く行かないと。」
「あっ、そうだね。行こう。」
何事もなかったかのように平静を装って、視線を合わせないようにそろそろと部屋を出る。
部屋が暗くてお互いに気が付かなかったが、食卓へつくとワンニャーに顔が赤くないですか?と尋ねられ、二人ともさらに顔を赤くした。