大掃除の後で…

3.

作:ロッカラビット

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部屋に入り襖を閉める。

そのまま襖にもたれかかりただ真っ直ぐ部屋の奥を見つめる。

何もない壁に突き刺さる視線とは裏腹に、彷徨の意識は違う所にある。


「あいつ…誰なんだ?」


頭に浮かぶのは先程見たペンダント。

にっこり笑ってこちらを見ていたあの男。

写真を見た感じでは、歳もきっと同じくらいだ。


考えても答えの出ない疑問に、どうすることも出来ない。

自分がペンダントを見たと悟られないように、いつものように振る舞ったつもりだが、さっき未夢と何を会話したのかも覚えていない。

あれが誰なのかと直接聞けない自分に、見ていないと誤魔化す自分に、未夢への気持ちを自覚する。

同居人、家族、なんて肩書で誤魔化していた気持ち。

少なからず未夢に嫌われてはいないことを良いことに、何も進展させずに来たことを今、後悔している。


未夢に好きな奴がいないと、何故思ったのか?


あいつが鈍くて、恋愛とかに興味なさそうだと思っていたのは、俺の勘違いだったんじゃないのか?


未夢の心が自分に向いていない?

家族という肩書は、これからもずっと変わらないのかもしれない。


どうしようもない不安がじわりじわりと思考を襲う。

こんなにも未夢のことを好きだったんだと、胸にささる痛みにその重さを実感する。


ズズズッと音を立てて襖にもたれたまま座り込む。

手を顔にあて、大きなため息を吐く。


「未夢…。」


彷徨の小さな呼び声は、冷たい空気の中に消えていった。



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