作:ロッカラビット
「お〜い、未夢〜!そっちにゴミ袋あまってないか〜?」
開け放された襖から中を覗く彷徨。
「なんだよ…いないのか。っつーか、全然片付いてないじゃん。」
先ほどの出来事を知らない彷徨は、本や服が散らかる未夢の部屋を眺めて大きなため息を一つつく。
「ったく、今日中に終わるのか?こいつ…。」
足元に落ちていた本を拾うと、机の上にそっと置く。
と、そこにあった物に視線が奪われる。
「なんだ…これ…?」
体を屈めてよく見れば、ハート型のペンダントだった。
しかし問題は中身で…。
「誰だよ、こいつ…。」
開いたペンダントの中で、こちらに笑顔を送るのは彷徨の知らない男だった。
「ワンニャー助かったよぉ〜、ルウ君、もぅ悪戯しちゃダメだからねぇ〜。」
「ちゃーい。」
「ルウちゃまも皆さんが掃除で相手をしてくれないのが寂しいのでしょうか?未夢さん、これを置いたらお茶でも入れて少し休憩しませんかぁ?」
「そうだねぇ。やった〜休憩だ〜って、あれ?彷徨?」
服や本を抱えて未夢たちが部屋に戻ってきた。
「あっ、ゴミ袋なくなったから。」
「えっと、ちょっと待って、ゴミ袋なら確かこっちに…――あったあった、はいこれ。」
抱えていた荷物をドカッと置くと部屋の隅から袋を取り出す。
「サンキュ。……にしても、お前ちゃんと大掃除してんのか?これ。」
「へ?」
言われて部屋を見渡せば、掃除をする前より散らかっている自分の部屋にえへへ〜と、誤魔化すしかない。
「か、彷徨は?もう片付いたの?」
「あぁ、俺はあとこの袋にゴミを詰めたら終わり〜。誰かさんと違って、しっかり働いてますからねぇ〜。」
ニヤリと笑って言う彷徨に、未夢も慌てて反論する。
「わ、わ、私だってちゃんとやってるわよぉ〜。」
「まぁせいぜい今日中に終わらせろよ〜。」
ひらひらと手を振りながら自分の部屋へと去っていく彷徨に、ぷんぷんと怒りモードの未夢。
「もぉ〜!一言多いんだから〜!!絶対今日中に終わらせてやるわよぉ。へへ〜ん、ばっちり綺麗に片付けて、見返してやるんだから〜!!」
すっかり気合の入った未夢に、見つからないようにこそこそと部屋を後にするワンニャーとルウ。
「ルウちゃま、二人でおやつにしましょうねぇ。せっかく未夢さんもやる気になられたようですからねぇ。」
「あ〜い。」
ひそひそと話すワンニャーの様子に何かを察してか、腕の中でルウも小声で返事をした。