作:杏
「いやぁ、若いっていいなぁ〜速いね、彷徨くん! 祐花もよくそんなんで走れるよなぁ〜」
両手に荷物を提げた大介がようやっと追い付いた。祐花が横目できつく睨む。
「何杯飲ませたの?」
「へ? …はは……」
「大介!」
「は、はいっ! え〜〜〜と…うすーいカクテルを2、3杯…」
「…と、僕にも5杯は注ぎましたよね?」
「か、彷徨くんまで〜〜〜」
なにも今バラさなくても、と苦笑いの大介。反省の色は、あまりなさそうだ。
「そんなに!? あんな走って大丈夫なの?」
「あ、はい、今のところ…」
彷徨も、全くもって大丈夫、という訳ではなかった。
たかだか数十メートルでも、全力疾走は血の循環をよくしていた。一気にまわってきた自覚はあったのだけど、これ以上迷惑をかけられない。
「チェックインは済んでる?」
「いえ、時間が早かったんで、荷物だけ預けてあります」
彷徨がポケットから取り出した番号札を持って、大介がクロークへ。ソファーに座らせた彷徨に未夢を預けて、祐花がフロントに向かった。
世話をされている自分たちに、子供なんだと思わざるを得ない。もっとも、飲ませられなきゃこんなことにはならなかったのだけど。
クロークで荷物を待つ大介の背中に、つい視線を刺してしまった。
「ん……ここ、どこぉ…?」
「ホテルのロビー。 祐花さんが今、チェックインしてくれてる」
隣でとろけそうな声がして、肩にかかる重みがなくなった。
「そっかぁ〜〜…」
「あ、未夢ちゃん、起きた? 大丈夫?」
「はい〜、へーきですぅ〜〜〜! はやくいきましょおぉ! ……あれぇ?」
「おい、未夢っ!」
すくっと立ち上がって、ぐらっと揺れる。彷徨がその手を引いて支えなかったら、大理石の床に頭から落ちていた。
「―――おまえ……!」
「ごめぇん、かなたぁ〜〜ありがと」
ヒヤリとさせられて、怒鳴りつけようとした彷徨に向けられた最上級の笑顔。
彷徨の腕に両腕できゅうっとしがみついて、見上げる。何も言えなくなった。
「ぷっ…はははっ!」
「…?」
「ふふっ…なんか、未来と優さん見てるみたい!
サークルも一緒だったんだけどね、新歓コンパで未来つぶれちゃって―――!」
「そうそう! 今のふたりみたいに、未来ちゃん、初対面の優にゴキゲンにくっついててさ〜」
笑い出した大介と祐花が、懐かしそうに教えてくれた。
「ぱぱと、まま…?」
「うん、あなたたちとそっくり! 瞳と三人で飲んでても、必ず未来が一番につぶれちゃうのよぉ?」
「ほぇ…?」
未夢の頭には、クエスチョンマークが飛んでいる。
「さ、行きましょ! 部屋、2つ隣だから、何かあったら言ってね? 彷徨くん」
「はい。 …すみません、全部していただいて」
「いーのいーの! 飲ませたうちのダンナが悪いんだから!
ほら、荷物持ってよね!」
「へいへい! お持ちしますよぉ〜!」
祐花からカードキーを受け取って、一緒にエレベーターに乗り込んだ。
連投します!杏でございます。
まわる、まわる。タイトルは“circle”です。
祐花たちのサークル、当時の優と未来を、そして瞳と未来を思わせる彷徨と未夢。
知りあってみたら、みんな繋がってた。人の輪。
あ、あと循環の意味もあるので、彷徨くんの体内のアルコール(笑)
予告した未夢ちゃんワールドは次回のようですね(^^;
失礼しました(>x<;
時間が、翌朝…1話に戻ってから、どーしようかなぁ〜と悩んでます。
どうしましょうか?こんながいいーとか、あります?(笑)
いやいや、応えれる気がしないのでやめときます(-.-;ノシ
次回もお楽しみに☆
…していただけると嬉しいですm(_ _)m