託された招待状

mother

作:

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「ね、ねぇ、歓談ってちょっと抜けても大丈夫かな?」
「いいんじゃねー? みんな席立ってるし、大丈夫だろ」
乾杯が済み、料理が運ばれ始めてから。写真を撮ったり、酒を注ぎに行ったり。友人席を中心に、ポツリ、ポツリと席が空きだした。
(じゃ、じゃあ今のうち…)
未夢はそっと席をあとにした。落とした膝のナフキンを、彷徨が拾って軽くはたく。
「光月さんの代理って…女の子は未来ちゃんの娘さん?」
「あ、はい…」
「じゃあきみは瞳ちゃんとこの…」
「母をご存知なんですか?」

彷徨に声をかけたのは、同じテーブルの優や未来と同世代の夫婦。
席次表の肩書きは“新婦知人”としか記されていないが、優や未来と同じ大学の友人だと言った。
「未来から昨日電話もらってね、行けなくなって若い代理をたてたからよろしくって言われてたの。
 中学から一緒だったから、瞳ちゃんとも同級生なのよ」
「そうなんですか…すみません、存じ上げなくて」
「いいのよぉ、そんなこと! ふふ、ふたりともお母さん似ねー…なんか懐かしい感じ。
 …未来んトコの子だけなら心配だなーと思ってたんだけど、一緒なのが瞳んトコの子なら、大丈夫ね」
女性は彷徨の奥の、瞳に話すように笑った。
「あっ! ちょっと、未成年に飲ませないでよ!」
「いいじゃん、めでたい席なんだし、ちょっとぐらい!」
女性の夫が、彷徨のグラスに遠慮なしにビールと注ぐ。
「あの子、可愛いしモテんじゃない? ちゃんと今のうちにツバつけとかないと…なぁ? 未来ちゃんもそーだったし!」
「あら、瞳ちゃんだって負けなかったわよ! この子もこのルックスでこれだけしっかりしてれば、女の子が黙ってないわよぉー? ね?」
「…………」
何とも返答に困る攻められ方で、彷徨は返す言葉が出てこない。楽しそうに女性がシャンパンを空けた。
「瞳はしっかりしてるからいいんだけど、未来はほんっとに鈍くてねー。
 自覚がないから、瞳がいっつも男の子睨みつけて!」
「…遺伝ですかね? そーゆーとこ、まんま受け継いだ感じですよ、こいつ」
戻ってきた未夢に三人の視線が集まった。

「え…なぁに? どしたの?」
「未夢がお母さん似だって話してたんだ」
「へ? えと…?」
「あ、ごめんね。 早見です、早見祐花。 こっちは主人の大介。
 優さんや未来ちゃんと同じ、岩崎教授の研究室仲間なの。 で、私は未来と瞳の中学からの同級生。
 未来も瞳もモテたから、ふたりもモテるんだろうなーって言ってたの!」
「えっ、そ、そんな…彷徨はモテるけど、わたしはそんな……あっ! ケーキ!!」
初対面の人にそんな風に言われて、未夢は真っ赤になる。ちょうどウェディングケーキが出てきたので、強引に誤魔化した。


『大きな三段重ねのケーキにいま! 入刀〜〜〜〜!』
まばゆいカメラのフラッシュが続き、歓声と拍手が響く。テーブルからは人の頭しか見えないが、それでも未夢はじっと見入っている。

「結婚式は初めて?」
「あ、はい、こーゆー場所のは…。 うちでは、何度か」
「そっか、瞳はお寺にお嫁に行ったんだっけ。
 …夢中だね、未夢ちゃん。 気持ちはわかるけど」
「それもいいけど、俺らはこっちの方がいいよなぁ?」
華やかなフレンチとワインに、大介は舌鼓。
「…ですね」
未夢はこちらの話にも目の前の料理にも、見向きもしない。
少し呆れたように未夢を見てから、彷徨もナイフとフォークを持ち直した。
「ま、友人や親族と違って、来賓って微妙な立ち位置だしねー」
「うまいもん食べて、うまい酒飲むしかないもんなぁ?」
手をつけていないビールが増える。飲めと言わんばかりの大介のグラスにも注ぎ返して。
「一杯だけですよ?」
掲げたグラスを大介と交わした。

「いいね〜イケるじゃん!」
「あ―――あ…もぉ! これ以上はダメだからねっ!」
「いってて…! …へぇ〜い」
思い切り祐花に頬をつねられ、大介はふてくされて、また飲む。
「ごめんね、彷徨くん。 …大丈夫?」
「平気ですよ、一杯くらい。 このうまさはわかりませんけど?」
「わかられても困るわよ! まだ中学生でしょ?」
祐花は明るく笑いながら、懲りずに彷徨にビールを注ぐ大介にゲンコツ。
「いーじゃん、飲めんだから…なぁ?」
「はは…」




ご愛読、ありがとうございます。
これで、ぐっちゃぐちゃのノート(笑)の、2ページ弱。
ラストをまだ書いてない今現在で、あと4ページ程あります。あと何話いるんだろう…。

前のwordsに比べて出来がイマイチ…。
読んでくださる方がいらっしゃるので、こんなことは極力書かないようにしてるのですが…今回は、うん、微妙です。。。スミマセン。。
背景描写が上手くなりたいなぁ、…ということは言葉の引き出しを増やさなきゃなぁ、と思います。
頑張ります。

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