託された招待状

reception

作:

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「どぉ…かなぁ?」
真紅のドレスに、黒いレースのボレロ。
薄いピンクのパーティーバッグを持って、その恰好には似合わない襖を開けた未夢。

「あーぁっ! まんま、ぱんぱ〜」
「わぁ〜〜〜素敵ですよぉ、おふたりとも! これなら新郎新婦にも負けません!」
「勝ったらまずいだろ…。 未夢のはともかく、なんで俺のまでサイズぴったりなんだろーな?」
黒いスーツを纏って苦笑する彷徨と並ぶ。気恥ずかしさから、互いに相手を見ようとしない。
ルゥが並んだ二人をニコニコと見上げ、その隣ではワンニャーが訳知り顔でにやけている。

「髪は綾ちゃんに頼もうかなぁ〜……あれ?」
「なに?」
真っ赤なミュールも試し履きをして、いつもより目線は高いはずなのに、並んだ彷徨の肩の位置がいつもと変わらない。
「背、伸びた?」
「突然、おまえのヒールの分も伸びるか?」
速攻で小バカにした返事が返ってくる。未夢は頬を膨らませて彷徨を睨み上げた。
「残念ながら、ニセモノ。 シークレットってやつ?」

「えっとぉ〜…“未夢のヒールに合わせて、彷徨くんの靴も高くなってるわ! 未夢だけじゃ不安だから、彷徨くんよろしくね〜”…だそうですぅ〜」
「手紙なんて入ってたの?」
「はい、一番奥に…。 これ、なんて読むんですか?」
ワンニャーの持っていた便箋を、脇から未夢が覗いた。
「どれ? えっと、彷徨くん、そちらに……ふ、ふし? ふせ…?? 彷徨ぁ…」
「見たことのない漢字ですよぉ〜」
未夢にも続きが読めなくて、彷徨にヘルプ。ワンニャーの指の先を今度は彷徨が覗き込んだ。
「どれだよ? …あぁ、袱紗、な」
「「ふくさ??」」
「そ。 進物にかけたり、包んだりする布のことだけど、この場合は金封…祝儀袋を包むやつだろ。
 オヤジの部屋にあったかなー…」
「ふぅん…? あっ、じゃあ、それお願いね! わたし、綾ちゃんにヘアセット頼んでくる〜」
未夢とワンニャーが語尾をあげて繰り返した声に答えながら、彷徨は革靴を脱いで宝晶の部屋に赴く。未夢もミュールを脱いで、電話の方へ。
残されて退屈したルゥが右手右足に革靴、左手左足にミュールを履いて遊びだした。
「ル、ルゥちゃま…」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「こっ、この度は、おめでとうございますっ」
「ありがとうございます」

受付の女性の笑顔に少しほっとするが、丁寧なお辞儀から身を起こした女性は、どう見ても若すぎるゲストに不思議そうな顔をした。
未夢も、どうしていいのかわからずに彷徨を仰ぐ。いつもの彷徨なら、軽くため息ついて苦笑するところだけど。さすがに堪えて、一歩前へ進み出た。

「おめでとうございます。 光月ご夫妻の代理の者です。
 おふたりともこの日を大変楽しみにしていらっしゃったのですが、急用でどうしても帰国出来なくなってしまって…」
そう言って差し出した金封には、優の名前。未夢は感心しながら彷徨のやりとりを隣で眺めていた。
「あぁ! 伺っております。 ではこちらに、おふたりのお名前とご住所をお願いします」
「…僕たちの名前で?」
「はい」

芳名帳に、二人分まとめて記入する。未夢の名前を書いたところで、手が止まった。
「おまえんちの住所は?」
「え? どっち書くの? 実家? アメリカ?」
「……もーいいや、うちで」
彷徨の肩越しに手元を覗きながら、きょとんとした未夢。口頭で聞きながら書くのも面倒になって、“同上”とした。

「な、なんかそれって……」
上に同じ、なんて。恋人とか夫婦のような、近すぎるニュアンスでなんだか恥ずかしい。
「大変失礼なのですが、お席次表の変更が間に合いませんでしたので…」
「いえ、急な話でしたから…ありがとうございます」
女性から席次表を受け取って、受付を離れた。

「営業スマイル…」
「…はぁ?」
「なんでもなぁーい!」



彷徨があんまり柔らかく笑うから。おねーさん、赤くなってたよ?




第2話です!
ご覧いただけて嬉しいです。拍手、コメントもありがとうございます。

未夢ちゃんのドレスのイメージは…原作の、いつかの扉絵。
あ、でも、髪は綾ちゃんがはりきってセットしてくれる予定です(*^^*)

さぁ!これから式及び披露宴が始まります。
…が、これを書き上げた時点で、すでにプロットから逸れてきております(笑)
書きながら思い付きをどんどんぶっこむせいなのは、わかってるんですが!(><;
ちゃんと1話につなげられるのでしょうか?

そろそろ世間は夏休みですね。そんなネタも考えねば。

次回も頑張ります。
また読んでやってくださいまし。杏でした。

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