天の川の下で

つなぐ

作:

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『次で10問目、最後の質問です! これは双方にご自分の回答を書いていただいて、一致するかどうかもそうですが、お相手に込められた思いを見せていただきたいと思います。
 今はそばにいるお二人ですが、織姫、彦星のようにもし、離れ離れになって、1年に1度しか会えなくなってしまったら…あなたはどうしますか?
 例えば、どちらかが地球の裏側に引っ越してしまったら……。 ちょっと辛いお話ではありますが、どうぞ、お書きください!』
「「…………」」
今まではさらさらとペンを動かして、正解を続けた彷徨と未夢。今回の質問に、手が動かない。

『書けましたか? 7番の彼女がまだのようですね、もう少し待ちましょうか? あれ、彼の方も手が止まったままです、大丈夫でしょうか…?』
ここまで全問正解のカップルが、どちらも書けていない。注目株と紹介され、本当に注目を集めていただけに、会場がざわざわとうごめき出す。

「どうしたのかなぁ…」
「未夢がなんか考えすぎちゃうのはいつものことだけど、西遠寺くんまで…?」
(未夢さん、彷徨さん……)
ワンニャーには痛いほど通じる、未夢と彷徨の思い。


「……未夢!」
ずっとボードを見つめたままだった未夢が、声のした方に顔を上げた。
『おっと、相談はダメですよっ!』
会場がしんと静まる。そばで待機するスタッフが彷徨を止めに入ろうとしたが、二人の神妙な雰囲気に、躊躇う。
しっかりと未夢と視線を合わせて、力強く頷く。
まだ不安げな面持ちの未夢が頷くのを待って、一緒に書く、思い。


『あ、書けました…? じゃ、じゃあみなさん一斉に、どうぞ!』

“離れても、きっと繋がってる 同じ地球上なんだから、会えるんだから”
“おなじ星にいるんだから、大丈夫 どんなに遠くても絶対、想いはとどく”

一斉に掲げたボードのたった一組に、視線が集まった。
互いのボードを見て、柔らかく微笑む二人に、感嘆の声が静かに響いた。


「おふたりとも…うっうっ」
「みたらしさん、そんなに号泣するほどじゃ…」
「確かに、わぁってなっちゃったけどね〜。 すごいよね、あの答えで一致するなんて…」
会いに行くとか、諦めないとか、シンプルな答えで一致するカップルもいた。
二人の答えは、一致を求めていたら書きたくても書けない。
それはただ真っ直ぐに合わせた視線と同じ、真っ直ぐなそれぞれの思いが、表現の異なる二人の言葉が、合致したことを表わしていたのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


『さぁ、お次は一発勝負! 彼女の右手を見つけて、いつものように手をつないでいただきまーす!
 このカーテンの向こうには彼らの愛する彼女たち! そこから伸びる手だけで、彼女を見分けることができるのか!』

シルエットも映らないカーテンの向こう側。
(こんなの…無理じゃない…?)
いくら毎日見ていたって、一緒に住んでいたって、手だけで判別するなんて。
(あ、あの子…有利だよね…)
ふと目が合った1番の少女。自分たちよりも明らかに小さな手は、彼にすぐわかってもらえるんだろうな、そう思ったら、心がほんの少し重くなった。


(未夢の手、か…)
司会者がどうぞと促したのだけど、誰もが決めかねていた。先に動いたのは1番の少年。
一等小さな手を見つけて、迷うことなく手をとった。
『みなさん、アクセサリーは外していただき、このコンテストのためにネイルはしてらっしゃいません!
 さぁ、どうやって愛しの彼女を見つけるのか! おっと! 7番の彼が動いた! 他のみなさんはどうですか!? おお、3番も行きますか!』


(ひゃ…! 彷徨、かなぁ…?)
未夢の右手が、自分より少し大きな手に包まれた。手をつなぐことなんて滅多にないし、こちらには司会の声も聞こえない。
もちろんカーテンの向こうのその手の大きさも肌の色も、わからない。
未夢にはこれが彷徨なのか、別の誰かなのか判別できなかった。
(……え?)
思わずピクリと身じろぐ。指の腹で軽く撫でられた、親指の指先。少しいびつに削った爪のライン。
(あ……一昨日、何かの拍子で欠けたって、大騒ぎしちゃったんだっけ…そんなこと、覚えててくれたんだ…)
きゅっと力を入れて、握り返す。見えなくても、確信があった。


『さぁ〜〜〜苦戦していたようですが、なんとか! みなさんパートナーを見つけたようです! では、会場のみなさんもご一緒に!
5! 4! 3! 2! 1! カーテンオープ〜〜〜〜ン!』

ばさっとカーテンが落とされ、握ったその手の先にいる人物を見上げる。
「…当たり」
「おまえのドジのおかげ、な」
顔を見たら、ようやっと安心して笑える。憎らしかった欠けた爪が、急に愛おしく思えた。



最終話、ひとつにしたかったのですが、長くなったので分けました(^^;
するとタイトルも2つ要る訳でして…毎度タイトルに悩んでいるワタシ。
やっぱり、困りました。

なんせ司会者さんが実況してくれるもんだから、描写が入らない。
これでいいのかと思ったけど、今回はもうこのスタンスでいこうと決めました。開き直りです(笑)

最終話もお読みいただけると嬉しいです。お察しのとおり、優勝するのは決まってますけどネ。
ありがとうございました。

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