作:杏
『やはりこの2戦目、最年少1番は有利だったようですね〜! 大注目の7番ももちろん正解!
なんと、5番も当たり! いやぁ〜〜〜愛ですねぇ〜! この調子で最後の難問にチャレンジしていただきましょう!
第3ラウンドはこちら! じゃじゃん! 髪飾りでございまーす!』
ステージに運ばれてきた台の上には20個ほど髪飾りが並んでいる。
『艶やかな浴衣を纏った素敵な彼女たちですが、登場のときから髪飾りがなくヘアスタイルが少〜し寂しかったのに、みなさんお気付きでしたか!?
このためにわざわざお預かりしていたんですねぇ〜! もちろん彼には、彼女のしていた髪飾りを当てていただきます!
こちらで用意したダミーがたくさんございますので、ご注意ください!』
「なんだ、余裕じゃん。 ホントに優勝しちゃうかもな?」
今ようやく髪飾りがないことに気付き、一生懸命思い返している彼たちが多数を占める中で、彷徨は余裕の表情。
「うん、せっかくだから、優勝しちゃおっか?」
小さく舌を出して肩をすくめる未夢にも、一切不安はなさそうだ。
「ふっふっふ…。 こんなサービス問題でいいのでしょうかぁ〜」
みたらしだんごが目前に見えて、ワンニャーがほくそ笑む。
「えーそこまでは西遠寺くんも感心なさそうだけどなぁー」
「そう見せかけて! ちゃんと覚えてたりするんじゃない!? ほら、余裕そうだし!」
「確かに…未夢まで笑ってるもんねー」
「スペシャルみたらしはいただきですよぉ〜!」
『登場からすでに1時間は経ってますからねぇ〜さぁさぁ男性諸君! 彼女の髪飾りは思い出せましたか!? リミットは3分間です! では、スタートぉ!』
司会者の合図と同時に、台の周囲にうわっと群がった。…が、彷徨は動かない。
「…行かないの?」
「…人混み嫌いだし」
わかっていたって、先に誰かにとられるかもしれないと思うと、未夢は気が気じゃない。
彷徨の返事に、むぅっと顔をしかめてしまった。それを見て、彷徨が苦笑。
「冗談だって。 待ってろ、すぐ戻ってくるから」
『1分経過! おーっとここで、7番の彼がやっと動きました! その端整な顔立ちには涼やかな余裕が見えますねぇ! 待っている彼女の方にも不安は全くなさそうです!
くるりと一周回って、迷わずひとつを手にしました! そして彼女の元へ!』
「おかえり、わたしの髪飾り」
戻るなり、未夢の髪に手を伸ばした彷徨に、そのままつけてもらう。
小さな無数のラインストーンの中心に、大きな星がふたつ。七夕って感じだよね〜と綾が薦めた髪飾り。
「なんだ、俺じゃねーの?」
「……彷徨も」
その近い距離でそんなこと言われたら、目線が上げられない。目の前の、自分とは違う骨ばった肩や首筋に、ドキッとしてしまう。
「ついでかよ、誰が直してやったんだっけなぁ? …ほら、出来た」
「あ、ありがと」
『7番の四中カップル! 早くも彼の手によって、彼女の髪が華やかになりました!
あと10秒! 続々と髪飾りを手にして彼女の元へ戻ります! さぁ、それは果たして本当に彼女のものなのか!?
3、2、1…終―――了―――――!』
『まずはやっぱり、訊いてみたいですよねー! 7番の彼! 迷うことなくそれを手にして、つけちゃいましたが…彼女さん! もちろん、これで合ってるんですよね!?』
「あ、はい…。 これ、実は今朝、弟が壊しちゃって…。
星がひとつ、とれちゃったのを、…彼が直してくれたものなんです。 ちょっとデザイン変わっちゃったけど…」
とれた星をつけられるところがなくて、もうひとつの星に少し重ねるしかなかったんだと、彷徨が言っていたのを思い出した。
『なるほどぉ! 自分の直したものだから…これは思わぬサービス問題になっちゃいましたねぇ! でも彼! そうじゃなくても当ててましたよね!?』
「…さぁ? どうでしょうね」
『またまたぁ! いや〜今回はすごいカップルがいたもんだ! しかーし! 他のカップルだって負けてはいません! 実はみなさん、正解なんです!!』
おおっとどよめく会場。遅れて拍手が沸き起こった。
『さぁ、会場の審査員のみなさん! お手元の投票用紙! 1から8の数字が並んでますね!? ひとつです! ひとつだけ丸をつけて、回収スタッフの持つボックスに入れてください〜!
エントリーされたみなさんは、一旦舞台袖にどーぞ! 集計が出来次第、結果発表にまいりまーす!』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『お待たせいたしました―――! 集計が出ました! これより結果発表にうつります!
ではエントリーカップルに再入場いただきましょう! 大きな拍手でお迎えください!』
拍手と共に、登場する8組。並びきらないうちに、司会者が喋り出した。
『さーわたくし、喋りすぎて時間がおしているとスタッフから怒られてしまいました! さくさくいきましょう!
今年のベストカップルコンテスト! 栄えある優勝者は!!! じゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃか…じゃーん!!
もう文句なしのダントツのトップです! 7番! 西遠寺彷徨くん、光月未夢さん!』
「「きゃ―――やったぁ!」」
「おふたりとも、すごいですぅ!」
『コメント欄がないのに枠外にコメントを下さった方が多数いらっしゃいました!
“何と言ってもあの最後のクイズ!ドラマのワンシーンのようで、答えもピッタリで、感動しました”
“二人ならどんなに離れても大丈夫。応援しています”
“クイズのシーンに息をのみました!”
あのシーンはわたくしもヒヤヒヤしましたが、確かに魅せられましたねぇ!
それでは優勝トロフィーと賞品を受け取っていただいて、彼から一言、お願いします!』
彷徨がトロフィーと賞品の目録を受け取ると、マイクを向けられた。
「えーと…たくさんの投票、ありがとうございます。 …俺たちはコンテストの存在すら知らずにこの祭りに来て、勝手にエントリーした友人たちに強制的に出場させられました。
だから、カップルでも何でもないんです。 でも、そのお節介な友人たちのおかげで、……少なくとも俺は、よく知ってるんだということに少し自信が持てました。
天地、小西、ありがとな。 まぁ肝心な本人は、紹介文にもあったとおりなんで、こいつのペースでのんびりやっていこうと思います。
ありがとうございました」
綺麗に頭を下げた彷徨に倣って、未夢も慌ててお辞儀をする。よく即興でこんなに言葉が出るな〜なんて思っていたから、中身なんて聞いてもいなかった。
今日一番の拍手と歓声が、二人を包んだ。
「未夢、西遠寺くん! お疲れー!」
「お疲れさまでしたぁ〜」
「すっごいよかったよ〜! あのシーンはコンテストの伝説に残るんじゃない!?」
やっと解放された未夢と彷徨が控室を出ると、そこにななみたちが待っていた。
「疲れたーもう帰ろうぜ、腹減ったし」
「なになに!? それでごちそうしてくれるの!?」
たこ焼きを食べていたななみが、未夢の持っていた賞品を指差して言う。
「天地、おまえ…食べっぱなしじゃねーの? 見てる間もずっとなんか食べてたろ」
「あれ!? ステージから見えてたの!? だってここでしか食べれないものは食べときたいんだもん〜」
「わたしもお腹すいたよぉ〜、立ちっぱなしで疲れちゃったし。 ねぇ彷徨、平尾町に戻ってみんなでファミレス行こうよ!」
未夢が笑いかける。彷徨が返事をする前に、ななみ、綾、ワンニャーが声を揃えた。
「「「ごちそうさまで〜す」」」
「…今日だけだからな」
「「「はぁーい!」」」
「ホント、未夢の笑顔は最強だよねー」
「ですねぇ〜」
「……」
「? なぁに?」
「ん〜ん、こっちの話〜」
いつの間にか、空には幾千の星。広い空に長くのびた光の帯に、一段と力強くまたたく星ふたつ。
未夢の髪に寄り添う星も、星の光をかえすようにキラキラと光る。
「…おまえ、食費浮いた分で新しいやつ買えば? 髪飾り」
「え…? いいの! これ気に入ってるんだから!」
「ふーん…?」
fin.
ふぃ〜〜〜〜〜〜最終の2話、恐ろしく長くなってしまいました…。
もう手直しするのも嫌になる量です(笑)
7日は生憎の天気でしたが、8日の夜はものすごーく星が見えましたよ〜(’▽’)
流れ星も見ちゃいました!星ってホントにまたたいてるんだぁ〜なんて思いながら見入っておりました。
とりあえず、早急に書き上げることができてよかったです。
拍手、コメント上昇中で本当に嬉しいです!ありがとうございます!
次回も、…あ、御一行の番外がまだですね。。
頑張りますぅ〜!
次回もよろしくお願いします。
2013.07.09 杏