残暑見舞いに西遠寺

第四話

作:

←(b) →(n)




「あれ……幽霊だったの?」
ワンニャーのもとへ行こうとジタバタするルゥをぎゅっと抱きしめた未夢が、戸口に佇んでいた。

(やっぱ覚えてたのか…)
瞳が不安げに揺れている。それを見た彷徨の目線が泳いだ。
そんな彷徨を見て、さらに未夢の顔色が不安や恐怖に染まっていく。

「未夢さんは…? 未夢さんは、何を見られたのですか…?」
口を噤んでしまった彷徨を見かねて、ワンニャーが訊ねた。
「ん〜〜〜…まんまぁっ!」
きつく抱いたままだったルゥがパジャマの袖をひっぱって抗議。はっとした未夢はようやくルゥを解放する。
「わたし、は……」
所在なさ気に宙に漂わせた視線。思い返したくはないけど、こうしている間も頭の隅にその光景は浮かんでいた。


「……光ってたの…。 部屋の、隅っこで…」
風鈴の音が聞こえた気がして、うっすらと目を開けた。風鈴は居間に吊るされているから、ただなんとなく開けたまぶたはすぐに閉じられ、そのままもう一度眠る予定だった。

「何が光ってたんだよ、猫でも見たんじゃないのか?」

「ねこ…?」
未夢が彷徨を見上げて、反芻。
未夢の見たものの見当はついたけど、彷徨が示唆したのは“ホンモノ”の方。
「そりゃ、襖は開けてたけど、ちゃんと縁側の戸は閉まって…」
エアコンのない西遠寺。夏には就寝時にも、風を通すために部屋の襖や障子を少し開けておく。未夢も最初は抵抗があったものの、閉め切った部屋の暑さに耐え切れずにそれに倣うようになっていた。



「そーです! 猫ですよぉっ!」

「え…? だってワンニャー、どこから猫なんて…」
いきなり大きな声でポンと手を打ったワンニャーに、未夢が目線をずらす。彷徨も振り返った。
その表情は未夢と正反対、やけに晴れ晴れと輝いている。

(………ヤバい)

「ですよねぇ、彷徨さん! 彷徨さんは猫をな―――…」
「だろ!? 夜中に光るって言ったら、やっぱ猫だよなぁー!?」

それ以上の発言は許されない。ワンニャーはすぐに悟った。
そんなことで、と未夢を揶揄するように言いながら、ワンニャーのなで肩に腕を回した彷徨の目が笑っていない。
「! は、はい〜〜〜」
何より、思い切りつねられた背中が痛かった。


「ねこ……?」
否定しながらも、次第に彷徨の言葉にのまれていく未夢。
「そっか、猫、かぁ…」
心苦しくはあるけど、今はまだ。
彷徨は未夢の様子に、小さく肩を落とす。安堵と後ろめたさの混ざったため息だった。


こんばんは、杏でございます。
いつも短め目標を立てるのに、相変わらず私のお話は長いですね。。
下手だなぁ…(--;
この先が不安です…、プールサイドも忘れちゃいそうです…。
なのに頭は次の短編(おそらく)に向いてます。おいおいって感じです(><)
千代ばぁと佐和子ちゃん、次あたりに出てくるかな!?
行く先が2つにわかれてまして、どっちにしようか悩んでます(^^;

拍手ありがとうございます♪
久々に初めてのお名前のコメントも戴けて、ウキウキな杏でした。
頑張りまっす!

←(b) →(n)


[戻る(r)]