プールサイド

act6 懸けて

作:

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じりじりとプールサイドを焼く太陽が、真上から見守る。
これから三戦目の水上レース。
水の中に身を浸した選手たちが、それぞれに自分のゴールを見据えた。


「え〜ここまでは予想通りの展開と言うべきでしょうか!
 予選第1組をトップ通過のバラの貴公子・光ヶ丘、第2組を同じくトップ通過の水泳部エース・武岡が下馬評では高い支持!
 そんでもって、この3組目には! 光ヶ丘、武岡と共に優勝候補に並ぶ、あの男が登場!
 ん〜〜〜本人は怒りそうだけど言っちゃいましょう! 我が校きっての美少年! 西遠寺かぁ〜なたぁ〜〜〜〜〜!」
拡声器を小脇に、片足をプールの縁に。テンションの上昇と一緒に少しずつ前に出始めていた三太は、テントからとうに出てしまって、テンション最高潮。
ギロリと睨みつける親友の視線もノリノリで受け流す。…というより、気付いてもいない。


「…オレら立場ねーよなぁ〜」
「予選で西遠寺と当たるんなら出なきゃよかった…」
そんな他の選手の小さな呟きは。

「きゃ―――ッ! 西遠寺くぅ〜〜〜ん!」
「頑張ってぇ〜〜!」
黄色い声に覆われて、水に沈んで泡となる。



「あ、それからもーひとり!
 実力不明の参加者が……あっ、来た来た! おっせ〜よぉ、いわもっちゃん〜〜〜」
「おー悪い悪い!」
ひらひらと片手を上げてようやくプールにやってきた、最後の参加者。一番手前側のレーンについたのは、岩本だった。

「いわもっちゃんも賞品目当てかぁ〜?」
「いえーいっ! ロリコンきょーしィ〜!」
詰め寄るギャラリーの中からヤジをとばすのは男子生徒たち。
そのからかう物言いは、友達に向けるような親近感。

「あー? 勘弁してくれよ、職員室まで聞こえるだろー?
 一応言っとくが、俺は賞品目当てじゃねーぞぉ! 俺はこいつらに挑みたいだけだよー」
彷徨たちに今朝言ったことを、わざとらしく大きな声で。でも、さして危機感はないらしいトーンで、岩本は呆れたように笑った。



「ろ、ロリ…? ねぇ、賞品ってなんなの? 三太くん」
いつの間にか三太の周辺には同じクラスの面々。未夢たちのいた場所に、三太が寄って行ったのだけど。
「そりゃもちろん、こうづ……あ、…え、え〜〜〜〜〜っとぉ……」
ということは。慌てて周囲を見渡す。未夢にバレるのはもう構わないけど、知られちゃいけない人物がその傍に立っていた。

「デ、デートに欠かせないモノ! そう! デートグッズってとこかなぁ!」
拡声器のマイクは口元に掲げたまま。嘘はついてないよな、とそれを知る友人たちを見れば、怯えたクラスメイトが懸命に頷いてくれた。
「デート、グッズ…?」


元々は望に巻き込まれただけだろうけど。
毎日毎日、女の子たちに囲まれ騒がれ、その対処に苦心して、ひたすらにため息をついている彷徨には、どうにも似合わない。
(彷徨がそんなものかけた勝負なんてするんだ…)
なんだかハッキリわからない賞品。それをつかって、自分以外の女の子と出掛ける彷徨を想像。
ゆらりと揺れた水面と一緒に、小さく首を振った未夢は考えるのをやめた。
(…ま、わたしには関係ないけどっ)



「――さぁっ! 気を取り直していきましょう! 夏です! プールや海や、ゆーえんち!
 可愛いあの子とあつ―――い夏をゲットするのは誰だぁ!? よぉ――いっ!」

―――ピッ!
「さぁ、一斉に水に消えた!
 四中イチのツキ! それを手にするのはオレだ! 水を掻く向こうに見えるのはきっとあの子の笑顔! くぅ〜〜〜〜オレってうまいなぁっ!」
己の実況中継に陶酔する三太。周囲まで押し迫っていたギャラリーが退いていたことには気付かずに、拳握りしめて目を輝かせる。

「……優勝した彷徨くんはもしかしたらこの中の誰かと……。
 そのデートグッズを手にして行くのはモモンランド?
 手を繋いでお化け屋敷に入ったふたり…『きゃあ!西遠寺くん、こわーいっ!』なーんて抱き付くあの子…。
 はたまた海? はじけるあの子の笑顔、大人っぽいビキニ姿に彷徨くんは思わず頬を染めて目を逸らす…。
 そんな彷徨くんの反応に赤くなったあの子は、『やだぁ、西遠寺くんのえっちぃ〜』『キミがあんまり魅力的だからいけないんだ…』
 そっとあの子の頬に手を添えた彷徨くん、煌めく海に邪魔者は居ない…見つめ合うふたりの距離がだんだんだんだん近づいていく………!
 そんな…そんな…そーんなツキはプールにドッボ―――ンと沈めちゃいますわぁ〜〜〜っ!!!」

三太の背後のおどろおどろしい独り言まで拾った拡声器が、嫌がるようにキィ―――っと奇声を上げた。








こんばんは、杏です。プールサイド、再開です!
これ……長くなります。はい。15話くらいかしら?テキトーですが。
勝負のその後まで。勝負は…あと2話くらいで終わればいいなぁ( ̄▽ ̄)

なんせ、もう秋ですし。気が付けば冬!ってならないうちに書き上げたいですね。
主要なメンツが喋ってない、動きがない。次はきっと動きます。
イマイチ彼らの心情がつかめていない、今回。間空け過ぎたかしら…。。
好きなの?どうなのよ?わかりません…特に未夢ちゃん。
ま、なんとかなるでしょう♪
きっと彷徨くんがなんとかしてくれるはず。うん。

では、また次回もよろしくお願いします。

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