作:杏
「未夢ぅ〜〜〜あんたここに来たかったの?」
「可愛い和小物が見当たらないよ〜?」
勢いよく入った店は、目的の店ではなく。
全体的にモノトーンの店内。色鮮やかな和柄や、可愛らしい小物には、お目にかかれそうもない。
自分たちくらいの若い客はおらず、大人ばかりだった。カチャカチャといたるところから金属音が響く店。
「とりあえず、出よっか」
外に出て、三人で見上げる看板。粋な書体で力強く書かれた文字に目をみはった。
『かなものや』
「ご、ごめん……」
「…ぷっ! あはははは!」
「もぉ、未夢ちゃんったらぁ〜〜〜」
ななみが豪快に笑いだすと、綾も肩を揺らして笑う。未夢の頬が赤く染まる。
「そ、そんなに笑わないでよぉ〜!」
「だってぇ〜〜ふふっ! ねぇ、ななみちゃん?」
「うんうん、可愛い和小物が〜って……あはは…っ!」
「ふぅ。 あー笑ったー。
ごめんごめん。 でもこんなときは笑い飛ばすに限るよねー…くくっ!」
「もぉ…っ!」
ななみが笑い終えて、フォローする。
未夢が小さく肩を落とし、拗ねてみせる。
「じゃあ、行こっか! 今度こそ、可愛い和小物!」
「あっ、あたし八ツ橋買わなきゃー!」
「うん、行こう行こう!」
ようやく笑顔が戻った。
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「ななみちゃん、まだ選んでる…」
「いろんな味があるしね〜。 ふた箱くらい、その場で食べちゃったりして」
「あはは、あり得るかも〜」
お揃いの髪飾りに、お土産のお菓子。
先に買い物を終えた未夢と綾は、混み合う店から出ると、そばのベンチに腰掛け、一息ついていた。
ななみの八ツ橋選びはまだまだかかりそうだ。
「で、未夢ちゃん。 何があったの?」
「へ? 何が?」
「私たちがいない間に、西遠寺くんと」
「…別にホントに、何にもないんだけどね……」
噂の真相を訊いてみたこと、他校生に声をかけられて、彷徨が助けてくれたこと。
「…しつこく訊きすぎちゃったかな?」
話し終えると、少し呆れたように笑った。
「未夢ちゃんは、どうしてそんなに訊きたかったの? 西遠寺くんの好きな人」
「なんでかな、なんとなく……。
隣に並ぶのが、そのうちわたしじゃなくなるんだなーって思ったら、なんか寂しくなっちゃったのかも。
ケンカばっかりだけど、…やっぱり家族だし?」
「未夢ちゃん…」
寂しげに空を仰いだ未夢に倣って、綾も顔を上げる。真っ青な、雲ひとつない五月晴れ。
「彷徨、あの手紙の子にも返事するのかなぁ?」
「…どうかな、しないんじゃない? 黒須くーん!」
「なになに〜!?」
ちょうど土産店から出てきた三太に、すかさず声をかけた綾。大事そうに小袋を抱え上機嫌な三太が、二人のベンチに駆け寄る。
「コレコレ!
なんか面白い木彫りの置物、見つけちゃってさぁ〜! 宇宙人はさすがにデカいし高いしで、買えなかったんだけど〜」
「うんうん、それはいいから。
ねぇ、西遠寺くんってラブレターにもわざわざ返事してるの?」
笑顔でさらっと三太の話をスルーした綾は、自分の質問を投げかける。
「彷徨ぁ? さぁ〜〜してないんじゃねーかなぁ? 直接言われれば、その場で断ってるみたいだけど。
アイツがそんな話する訳ないじゃん!
それよりさぁ、この置物! すっげー面白いポーズの熊で…」
そういえば、今朝も似たようなフレーズを聞いた。そうだよねーと思いながら、後の話は軽く流す。
「まぁ、西遠寺くんの場合は、数が数だしねぇ〜。
あれ? そういえば西遠寺くんは? 一緒じゃないの?」
「あぁ、彷徨なら、さっき先生に捕まって…
あ! あそこあそこ!」
キョロキョロと辺りを捜し、見つけた彷徨の方を指差した。
未夢と綾が、三太の指す方に目を向けると。
そこには二人の教師と彷徨。そして果那がいた。
「なんか、他のクラスで調子悪いやつが出たらしくって、他のやつは大丈夫か〜って。
先生たち、各班さがして確認して回ってるみたいだぜ〜」
「へぇ〜。 確かに、お天気すぎて暑いくらいだもんね〜。 あ、ななみちゃん、やっと出てきた!」
「ごめーん! なかなか決められなくってさぁ、いっぱい買っちゃったよー」
戻ってきたななみは、両手にふたつずつ袋をさげて、財布を小脇に抱えている。
「未夢、なに見てるのー?」
「え、あっ、ななみちゃん、おかえり〜。
わたし、ちょっとお手洗い行ってくるね」
ななみに一瞬だけ笑いかけ、ベンチを立つと、そのまま振り返らずに公衆トイレのある方に歩く。
「えっ、じゃあ、あたしたちも…」
ななみが荷物をベンチに置いて、財布をしまっている間に、未夢は人の波にまぎれてしまった。
「行っちゃったね…」
「しょーがない、待ってるかぁ」
杏です。連投です。
ご覧いただきましてありがとうございますm(_ _)m
書けるときにうわーとやらないと、次がいつになるかわからないのです。
時間とかスタンスとか。
単語の降臨率が良いときってないですか?(笑)
予定になかった金物屋さん。アダとなりました。その後の話と繋がらない!
大幅修正を強いられましたが。(自分のせいだけど)
でも、このくだり、なんか気に入ってます( ̄ー ̄)
金物屋さんに限らず、お土産屋さんとか、公衆トイレの場所とか、いろいろ実際とは違います。
最初はその都度調べてたんですが、キリがないのでやめました。
フィクション!そう、フィクションだもん!と自分に言い聞かせてます(笑)
そして、オリキャラ果那ちゃん。
杏のイメージは、150そこそこの小柄な子。さっぱりしてて、お友達も多そう。
彷徨に並んで、学年リーダーやってるあたり、女子委員長の中でも信頼が厚そうな感じ。
この年代の女の子って難しくて、こーゆー立場のある子って、誰かしらから嫌われたり、煙たがられたりするじゃないですか。(杏の独断と偏見ですが)
それが全くなさそうなイメージです。
名前に意味はないのですが、失敗しましたネ。
『彷徨と果那』って書けないのです。
字面は気にならないけど、音が…『かなたとかな』。気になります。
この委員長ツーショット、もっと書きたいのに!
次、オリキャラ考えるときは気をつけます。
今回未夢ちゃんの動きがえらく少なかったですね。セリフも。
一人で行ってしまった未夢ちゃん。
このあとどうしよう。
次回、またお待ちしております。