恋人ごっこ!?

ゴンドラ内の密度

作:

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「はぁ〜〜〜遊んだ! 遊んだ! んじゃ、締めの観覧車乗って、帰りますかぁ〜」
「うん! 今から並べば、ちょうどいい時間じゃない? ね、彷徨」
先を行く舞子に引かれていた未夢が、数歩後ろの彷徨を振り仰いだ。
結局、彷徨が未夢の隣にいたのは、あれから次のアトラクションまで。それが終われば、自然に舞子がそのポジションに戻ってしまっていた。

「ちょうどいいって? 何かイベントでもあるの?」
腕時計を確かめる彷徨に、紘斗がパンフレットを確認しながら訊く。
「6時に、園内がライトアップされるんです。 今からなら、たぶん観覧車の上からそれが…」

「ホント!? 未夢! いっそげぇ〜!」
「ひゃ! 舞子ぉ、走らなくたって、観覧車もライトアップも逃げないってばぁ〜〜〜」
目を輝かせた舞子が、未夢を引き摺って一番奥の観覧車へと猛ダッシュ。


「…未夢! 観覧車は、ふたりずつ乗ろうね!」
追うことなく、のんびりとついてくる彷徨たちに聞こえない距離をとったら、未夢にこそっと耳打ち。
「えぇ〜〜〜〜〜!」
「だって…ね? あたしも用意してるし! 頑張んなって!」
舞子がチラリと目を向けた、未夢のバッグ。ぽんと肩を叩かれて、未夢はそれを胸に抱いて頷いた。





あと5組、あと4組。
どんどん順番が近付いてくる。
遠くからだとゆっくりにしか見えないゴンドラが、すいすいと未夢たちの前を抜けていく。


(…な、なんて言えばいいのよぉ〜〜〜)

「――行くぞ」
「…へ? えっ? えっ?」
腕を掴まれて、躊躇う隙もなく。未夢と彷徨を乗せたゴンドラは乗り場を離れた。

「……あの、なんで…」
「…ふたりの邪魔しちゃ悪いだろ?」
「あ、そ、そうだよね〜あははは、はは…」

(どうしよ――――!!)
楽しそうな歓声も賑やかな音楽も、ジェットコースターからの叫び声も、かすかに聞こえるだけ。
小さな太陽は山の向こうに姿を隠そうとしていて、空へ上って行くゴンドラはだんだんと薄暗くなっていく。

(き、気まずいよぉ〜〜〜〜)







「―――あ、あのね、彷徨! これ…」
沈黙に耐え切れなくなった未夢は、バッグの中に忍ばせてきたものを彷徨に差し出した。
手のひら大の白い箱に、ピンクのリボン。
「今日のお礼! …と、バレンタインも兼ねてちゃってて、ごめんなんだけど」
ちゃんと買ったものだから胃薬はついてないよ、と舌を出す未夢。いつもなら、手作り?食えるのか?なんて彷徨の方からからかわれそうだけど。
こんな風におどけていないと、この場でマジメにこれを渡すなんて、できそうになかった。
「…サンキュ」
「ううん、わたしの方こそ、ありがと。 ごめんね、彼氏のフリなんてお願いしちゃって」
夕闇の中でも、受け取った彷徨が笑ってくれたことはわかる。強張っていた肩の力が抜けて、未夢はほっと息をついた。

「………フリ? なんだよ、それ」
「えっ? だから、今日のデートは彼を連れてくる舞子に合わせた…」
「そんなこと、俺は聞いてない」
「共学なんだし、未夢も彼氏くらいいるでしょって…」

暗がりで鋭く光った彷徨の眼が、すっと未夢を見つめた。慌てる未夢は言葉を繕いながら、彷徨の言った意味を考える。

「おまえ、俺になんて言った?」
「え……?」
「一生のお願い、だっけ?」
「え、えーっと…」

『わたしの、…か、彼氏になって!』

「―――!!! や、やだ、わたしっ! えっと、あれは…」
「…あれはウソだったのか?」
「……そ、そんな…ウソなんて…」
「その言葉の裏に、おまえの気持ちがあるんだと思ってたのに」
言葉に詰まる。ガラスの向こうを眺める表情まではわからないけど、傷付いたような彷徨の声色に、息さえも止まる感覚を覚えた。
「…………っ」

「なぁ、知ってるか? モモンランドの観覧車のジンクス」
ツキンと痛んだ胸といたたまれない思いに、瞳を伏せた未夢。彷徨は窓の外を見下ろしたまま声をかける。
今までと関連のなさそうな話題に、未夢はきょとんと目を瞬いた。
「え…っ?」
「ここでキスしたカップルは永遠に結ばれる―――って」
「う、うん…。 あ、だから…」
「ふたりに気を遣っただけじゃない」
狭いゴンドラの中で、ほんの少し身を乗り出せば。未夢の頬に触れるのは容易だった。

「えっ…? か、かな…」





こんばんは!
杏しゃん、無事ふっかーーーつ!って訳わかんないですね、すみません(^^;
掲示板に愚痴るほど気分が落ちてたもんで…。。

観覧車をネタにするのが2度目なので、内容も描写も、カブらないように…と気をつけてはみたのですが、似たような感じになってたらゴメンナサイです。

あと2〜3話ってトコでしょうか。。みなしゃん、どうかまたお付き合いくださいませ。
ご覧いただきありがとうございました。

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