ぷれしゃす・メモリー

からふる・メモリー

作:

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「おなか空きましたねぇ〜」
「ワンニャー、先に食べちゃったら? わたしは彷徨、待ってるから」
「いいえっ! わたくしも待ちます! 一緒に待ちますともぉっ!」

…ぐぅ〜〜〜きゅるるぅ〜…

時刻はまだ11時を少し過ぎたところ。遊び疲れたルゥは一足先にミルクを飲んで、すでに夢の中。
変身して、見知らぬ街をたくさん歩いたワンニャーの腹の虫は鳴きっぱなしだった。
急な遠出だったので、持ってきたのはお茶とおにぎりだけ。
「な、なにか気を紛らわすものはないでしょうかぁ〜…」
「…あ、キャンディーならあるよ? 食べる?」
「あ、ありがとうごさいますぅ〜!」
肩から下げた小さなポシェットから出した飴を、ワンニャーの手にコロンと落とした。

「…ほうひへば、未夢ひゃぁん」
「ん?」
「この公園を知ってらっひゃるってゆーのふぁ…」
「あぁ……うん。 この土管、見覚えがあるなーと思って」
背を預けていた土管に、懐かしい目を向ける。
「おじさまの部屋でこの町の地図見たときからね、懐かしいなーって思ったんだけど。 こんなピンポイントでこの場所に来ると思ってなかったから、ビックリしちゃった。
 あのときはこんな遊具もなくて、土管だけだったんだよぉ」
「…??」
「あと3つ先の駅まで行ったら、わたしの実家があるんだけどね? その家を建てるまで、この辺りに住んでたんだぁ〜。
 …わたしね、ここに家出してきたことがあったの」
「えっ! 家出ですか!?」
思わず大きな声を出したワンニャー。未夢がしーっと口元に人差し指を当てて、笑った。


「そう、あの日は4歳の誕生日の前の日。 パパもママも……」

“未夢、ごめーんっ
 明日パパもママも、急な仕事が入っちゃったの―――…”

『もぉ、ぜ―――ったいっ! おうちかえんないっ!!
 …あちたはみゆの、おたんじょーびなのに……』


『おにわ、ひろいちっ! きょーからここにすも――っと!』

「…でね、この上の土管! ここを二階なんて言ってね、わたしここに住むから、入って来ないでー!って……あ、あれ…?」
「? どなたか、いらしたんですか?」
思い返しながら話す未夢の思い出は、ときおり言葉が足りなくて。懐かしむ未夢の記憶を妨げないように、ワンニャーは色を促す。

「うん、そう…。 そう! わたし、ここで初恋! …はつ、こい……」
(あ、あれ……?)

『おれはとーさんのしごとおわるの、まってんのっ!
 とーくからきたから!』


『それ、おれがつくった。 ぜんぶ、じぶんでつくった』


『いーよな、いきてたら。 あしたがだめでも、こんど、つくってくれるかもしれないだろ?』


(…あれ…………?)




「なに、未夢の初恋話?」

「!? かっっ、彷徨っ!!」
「あっ、彷徨さん〜。 おかえりなさいませ〜」
広げていたシートに腰を下ろした彷徨は、手に持っていたものをワンニャーの膝で眠るルゥの頭に乗せた。
「あ、やっぱりまだルゥにはデカいか」
「…彷徨、それ……?」
ブカブカでルゥの鼻先まで隠したのは、赤い帽子。何故だか未夢にも見覚えがあって。

「これ? ガキの頃の俺の忘れ物だって。 ばーちゃん、大事にとっといてくれたみたいでさ。 俺は5つぐらいの時に行ったのが最後だったから。
 せっかく10年近くも持っててくれたヤツを入らないから要らないとも言えないし、ルゥにやろうかと思ったんだけど…」
「早くピッタリ合うくらいに大きくなればいいですねぇ〜。 きっと似合いますよぉ〜」
ワンニャーが少しつばをあげてやると、愛らしい寝顔が現れる。思い出の少年よりも小さなルゥが、どことなくその少年と似ている気がした。

「そーいや、弁当は? 先食ったのか?」
「いえ、まだですが…」
「弁当? 今日はおにぎりしかないでしょ?」
首をかしげるワンニャー、きょとんとした未夢を横目に、彷徨はワンニャーの背負ってきたリュックをあさった。
水筒、おにぎりが包まれた大判のハンカチ。そして、大きなタッパー。
「えっ、なにこれ?」
「いつの間に用意されたんですかぁ!?」
「おまえらが出掛ける準備してる間に。 残り物のかぼちゃの煮つけと、卵焼きだけだけど」
おにぎりだけよりは、いいだろ?とフタを開ける。黄色とオレンジ色、二色だけの中身、のはずが。
「わぁ! 卵焼き、キレイですぅ〜」
(…この卵焼き……あの帽子…)
懐かしい味は、優の味ではなかった。もちろん、未来の味でもない。

今、ここにいる理由と、幼い記憶がリンクする。
色とりどりの淡い思い出を噛みしめながら、未夢の疑問が、だんだんと鮮明な色を持ち始める。





こんにちは、杏です。もーバレてますねw
そう、元ネタは原作5巻収録の「りとるメモリー」です(*^^*)
これは間に「・」がないんですね。
でも、こちらはサブタイトルも同じ書き方にしたので、単語によっては、読みにくいかな、と思いまして。つけてみました。

ところどころ、描写を“からふる”にかけて色に例えてみたのですが、いかがでしょう?
かえって想像しづらいかもしれないです…。。そんなのあったら、どんどん仰ってくださいね!ありがたく参考にさせて戴きますので!!

あの帽子が赤か青か、悩みましたw
赤にしたのは…5巻の表紙が赤かったから?かな(^^;
最初から私の中では、赤いイメージだったんです。
ルゥくんも、赤い方が似合うかな、と思って。そんな理由。えへ。

今回は思い付くままにお話を書きすすめています。
ラストがどうなるのか、私にもわかりません(笑)
あと2話の予定ですが、タイトルが浮かばないので長〜い1話になるかも(^^*
次回もよろしくお願いいたします。

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