君さえいれば

プログラム7番 休息

作:

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応援合戦、綱引きに選抜選手リレー。

午後は見せ場がいっぱい。その合間には。



『次は、インターバル部活対抗戦です。 出場される方はユニフォーム、小道具等を用意して集合場所に集まってください――』

今年の競技は運動部も文化部も混合で行うらしい。勝った部は、賞金として僅かばかりの部費をもらえるとあって、どの部も意気込んで参加。
部員が各々の“正装”で出場するので、グラウンドが華やかになる。
もちろん、演劇部の綾も出る。ななみもいつものように、その手伝いに向かった。


太陽が頭上にのぼり、テントは椅子が敷き詰まったその真下にしか、影をつくらなくなっていた。
日影にいたって、暑いものは暑い。
テントに残っているのはほとんどが帰宅部組。転校生の未夢には、知り合いが少なく肩身の狭い空間。

「タイクツですなぁ〜。 …あれ、そういえば彷徨たち、いない…」
結局、彷徨は出番がなくても、ずっと前に立って応援していた。
委員会の役割だったPTAによる玉入れの補助は、三太が喜んで引き受けていたけれど。
(休まってないのは一緒じゃない…)

「水飲み場かな…?」
さすがに水分は意識的にとるようにしたらしく、何気なく手にした彷徨の水筒は軽かった。


「あっち――…」
「ぷは――! 気持ちい〜〜!!」

「彷徨っ、お疲れさまっ!」
「…未夢ー?」
そばに駆け寄ったのに、疑問形の返事。三太と一緒に蛇口の下に頭を差し出す彷徨には、未夢は見えていない。

「……どーした?」
「何もないけど…いなかったから、ここかなって。 …大丈夫? 髪濡らしちゃって…。 えっと、タオル…」
「暑いし、すぐ乾くだろー」

「おーいっ! 光ヶ丘もやるかぁ〜? 気持ちいいぞぉ〜」
「いや、ボクはオカメちゃんに水を…。
 さ、西遠寺くんっ! やめたまえ、そんな下品なことっ! ボクのライバルとしての自覚が欠けてるんじゃ…!」

ビビビビビッ

パタパタとオカメちゃんが空へと避難。望の顔を目掛けて、勢いよく水が飛んできた。

「ちょっ、何してるのよ、彷徨!」
「誰がライバルだよっ」
舌を出した彷徨が蛇口に指を当てて、水の流れを望に向けている。
「なっ…なにするんだ! ボクの美しい顔にっ!」
「ご、ごめんね、光ヶ丘くん!」
彷徨に渡そうと手にしていたタオルが、望の手に渡った。その光景に顔をしかめる彷徨。
「三太、リレーまでまだ時間あるよな?」
「お、おう、まだ部対抗、始まってねーけど…」

「…行くぞ、未夢」
「かなた!? ちょ、ちょっと…っ!」
「光ヶ丘! おまえにリレーは譲れねーよ! 俺が勝ちにいかなきゃなんねーから!」
突然手を引かれた未夢は、前のめりになりながら彷徨に続いた。

「…なんか、面白いけどめんどくせーよなぁ、あのふたりって…」
「それが恋愛ってもんだよ、黒須くん」
「おまえに言われてもなぁ…」

「なにぼーっとしてるの黒須くん! おっかけなきゃ!」
「わっ! 天地さん、小西さん!」
舞台衣装に着替えた綾と、ななみが戻ってきていた。
「わたしも行きたい〜! けど、部対抗出なきゃだし、ふたりとも後で報告よろしく〜っ!」
「オッケー! 綾も頑張ってねー!」
ひらひらと手を振りながら、綾を見送ったななみが、三太と望を振り返る。
「で! どっち行ったの?」
「「あっち」」
望は左、三太は右を指す。

「………………」 


いつもありがとうございます。
こんばんは、杏でございます。

水遊び。
なんかこーゆーのって、男の子の特権ですよねぇ〜(*^^*)

部対抗は、何でしょう?
出す機会がなかったので、出ませんでしたけど、ダンスバトルでした(笑)
まぁ、これについては次回に…すみません、出なさそうです。

最終話、戴いたものそのままに!タイトルは“補給”。
また次回、お会いできると嬉しいです。

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