作:杏
「…じゃあお姉ちゃん、そろそろ行くね」
「えっ、もういっちゃうの?」
「ここはお姉ちゃんのいたところより寒いから。 自分の住むところに帰らなきゃ、風邪ひいちゃう」
冷えてきた両腕をさすって、眉を下げて笑う。帰る術はまだわからないけれど、あまり長く居るとこの少年と離れ難くなる。
この世界の彷徨に、必要とされてはいけない。
「おねえさんのくには、みんなはだし?」
「えっ? …あ、そうそう! こっちに来たらみーんな靴ってゆーの履いてて、ビックリしたよぉ〜」
彷徨を膝からおろして、立ち上がろうとして。階段を踏み外すのは、お約束。
「うひゃ!?」
「だいじょーぶ!? おねえちゃん!」
「えへへ〜〜大丈夫、大丈夫! こんなのは日常茶飯事なのさぁ〜。 …へくしゅっ!」
「はい、これ。 かしてあげる」
「……え? でも、これお母さんの大事な…」
彷徨がずっと握りしめていたストールを、未夢に差し出した。
「ぼく、サボテンマンみたいにつよくなるから! そしたら、あいにきてくれるんでしょ?
つぎにあったときに、かえしてくれればいいよ!」
「でも…」
「いいから!」
伸ばした腕を引っ込めようとはしない。その姿に、未夢の頬が緩む。
(彷徨だなぁ……)
こんなに小さくても、彷徨らしい頑固な優しさはすでにある。
受け取ったストールをふわっと肩に羽織って、ありがとうと笑った。少年も、照れくさそうに笑う。
「…じゃあ、いくね」
「うん。 …バイバイ、おねえちゃん」
めいっぱい手を振る彷徨を背中に感じて、石段へ向かった。
(さぁ、これからどうしようかなぁ…?)
先のことを考えると、眉が寄る。けど今は、笑って歩こう。彼の瞳に映る間は。
いつもありがとうございます。杏です。
公開ペースが速すぎて、パソ書きがつまってきました(゜△゜;;
コピペして、手直しして、後書き入れるだけなんですが、それが一番時間かかる気がします(^^;
話の流れから、石段に向かった未夢ちゃん。うまく帰れるのでしょうか!?
次回もよろしくお願いしまぁ〜す!