時を越えて

6話 居場所

作:

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「おねえちゃん……」

「ん? なぁに?」



「てんごくっていったことある?」

「…お姉ちゃんも、行ったことないなぁ…」

「どこにあるのかなぁ…。 おとうさんは、おそらのたかーいところで、まだまだいけないんだっていってた」


「そうだね…まだまだ、彷徨くんはこっちでいろんなことやらなきゃだもん」

「いろんな…? でもぼく、おかあさんにあいたいよ。 おかあさんがいないから、おとうさんもないてばっかり…」



また涙声になる。尽きない、雫。

「お姉ちゃんもね、もう会えないって訳じゃないけど、遠いところにお父さんとお母さんがいるんだぁ…」

「おねえちゃんも…? さみしく、ない?」


「寂しいときもあるよ! でもね、今は他にも家族がいて、友達がいて、みんながいるから大丈夫。
 それにね、パパもママも、ちゃんとわたしのこと想ってくれてるって思うから。 宇宙の端っこと端っこに離れてたって、パパとママはこどものことを想ってるよ。
 彷徨くんのお母さんも、会えなくても、ちゃんと彷徨くんのこと大好きだよ。 絶対、ぜぇ〜ったい! 誰よりも、彷徨くんを想ってくれてるよ。
 だからね、彷徨くんがお母さん大好きーって思えば、お母さんの天国はきっとここだよ」

じっと未夢の言葉を聞き入っていた彷徨の胸に、そっと手を当てる。



「おかあさん、ここにいるの…?」

「うん! そばに居るよ」


未夢が笑って、彷徨の髪を撫でる。彷徨もふわりと笑いかけて。でも、顔を歪めた。

「…でも、あえないよ……。 ずっとちかくにっ、いてほしかった…っ」


「彷徨……」








「ねぇ彷徨くん…? 指切りってわかる?」

「ゆびきり…? うん、やくそく、するときにするんでしょ?」

両手を出して、小指と小指を絡めて見せる。



「うん、そうそう! お姉ちゃんと、指切りしよう!」

「おねえちゃんと? やくそく、するの?」

「えっとねー…彷徨くんはこれから、サボテンマンみたいな、強くて優しい男の子になります。 そしたらお姉ちゃん、また会いに来る、ね」



「ホント…?」

「そしたら、お姉ちゃんは彷徨くんのそばに居ます。 ずっと。 ね、約束。
 …お母さんの代わりにはなれないけど。 約束するよ」


頷いて、彷徨の小さな小指を、小指で掬う。

再会は、事実。その先は…自身の希望。



「だから、笑って? 彷徨くんが笑えば、お父さんも笑ってくれるよ」

「うん…! やくそく、ぜったいだよ!」

こぼれる涙もそのままに、彷徨はようやく、笑った。




杏です。

天国ってどこでしょう?どんなところでしょう?
是非はあるかと思いますが、私なりの解釈です。ご容赦ください。

未夢ちゃんの持論、というよりは、訊かれたその場の思い付きに近いと思います。

“死”というものは、私はまだ、わかりません。わかりたくないのかもしれないです。
理解するのは簡単だけど、受け入れるのは、難しいです。
大人であるが故に。若しくは、子供だからこそ。
それぞれに、困難であると、私は思います。
あらら、長く硬い話になっちゃいましたね。

会話になると、どうしても字数が増えますねー(^^;;
チビ彷徨くんがひらがななもんで、なおさらか。。

彷徨くんは決して初対面の人にこんなに懐く子ではないと思いますけどねー。
それは今だからか、未夢ちゃんだからか。どっちもかな?

こんなお話を書いてると、いつも以上に二人の幸せを願ってしまいます。
この二人ならきっと大丈夫ですけど!…って親バカかしら?(苦笑)

ご覧いただきましてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。

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