時を越えて

5話 認識

作:

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「ねぇボク、お母さんは?」



本堂の階段に腰掛けて、抱きしめていた少年の身を少しだけ離して訊ねる。

こんなに泣いているのに来ないなんて、出掛けているのだろうか?





「………」

泣き止みかけた少年の瞳に、再び涙が浮かんだ。ぎゅっと自分のシャツの裾を掴んで、俯く。


「…? じゃ、じゃあお父さんは?」

「たぶん、あっち…おはかのところ。 きょうは、いしやさんがくるっていってたから」



未夢の膝の上で、少年の小さな手が指差したのは裏手にある墓所。

「そう……まったく、彷徨ったらこんな可愛い子ほったらかしで…」





「え? おねえちゃん、ぼくのことしってるの…?」

「へ……?」








「…ボク、お名前は……?」

膝にちょこんと座る少年が、今度は想いを寄せる同居人と重なる。そういえば、親子にしては似すぎている気はする。


「さいおんじかなた」

「えぇ〜〜〜っ! じゃ、じゃあわたし…」





(未来じゃなくて、過去にきちゃったんだ……)


「?? おねえちゃん?」

「えっ、あ、ごめんね」


急にこの現状が恥ずかしくなったが、小さな彷徨には通じない。不思議そうに見上げるばかり。



「え、えっと…彷徨…くん、何歳?」

「3さい! らいげつ、4さいになるよ!」


「そっか、今11月だったもんね…」




無邪気な少年。口調も表情も仕草も全部、子供らしくて。いつかのこどもビスケットとは、やはり違う。






(あれ、彷徨は3歳で…今、11月で……)

「もしかして…お母さんって……」





彷徨が目を見開いた。未夢を見上げる瞳が濡れていく。

「……ごめん…」




「うぅ〜〜〜……あぁ――――…」

何も言えなくなる。抱きしめるほか、なかった。


こんにちは、杏です。
いつもありがとうございます。

未夢ちゃん、大きな勘違いをしてましたね。そう、ここは未来ではなく過去。
瞳さんが亡くなったばかりの頃です。
もし、みなさんも騙せていた(言葉が悪いですが^^;)なら、それは作者冥利に尽きるとゆーものです、ネ。

次回もよろしくお願い致します!

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