時を越えて

4話 少年

作:

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「うわぁ――――ん……おかあさぁ―――ん…」



「え…?」

境内を抜けようとした未夢の耳に聞こえた幼い声。地面を向いていた顔を上げて、声の主を探す。




(わ、彷徨そっくり……ももかちゃんくらいかなぁ…?)

小さな男の子がひとり、渡り廊下から本堂の方へ歩いている。その手にずるずると引き摺るのは、淡い色のストール。母親のものだろうか。




(…ちょっとだけ、期待したのにな…)


彷徨に瓜二つのその少年は、自分には似ていない。つまり、母親は自分ではない、別の誰か。



少年から、足元に視線を移す。汚れた足を目にしたら、土の冷たさがよみがえった。




「…っく、ひっ…わぁ―――ん…」

「…………」


そんなことはさておき、ひとりで泣くこの子を放ってはおけない。




(で、でもバレちゃったら…)

声をかけようと近付いて、ぐっと唇を噛んだ。止めた足をまた、来た場所に向ける。


「おかあさぁ―――ん…」




母を呼びながら泣き叫ぶ少年に、ルゥを重ねて。思い切って本堂の階段を上る。

未夢は少年の正面からゆっくりと近付き、両の手を差し出した。



「―――おいで…?」






目の前に現れた未夢を、少年は驚いたように見上げた。瞬きのたびに大粒の涙が頬を伝う。

しゃがみこんで二コリと笑う未夢。


少年は大きな瞳を見開いて、またその目を瞬く。駆け出したと同時に、涙が堰を切ったように溢れた。





「うわぁ―――ん……っく、うわぁ―――…」

(…可愛い―――…あったかいな……)




腕の中で泣き続ける少年をぎゅっと抱きしめていた。


懸命に泣く少年の身体は熱いくらい。未夢の冷えた身体が温められる。




こんにちはぁ〜!いつもお世話になっておりますぅ〜!
…コホン、杏です。

ご覧いただけて嬉しいです。拍手、コメントありがとうございますm(_ _)m
めっちゃ嬉しいです。こればっかりは慣れません。何度見てもニヤけちゃいますw

未夢ちゃんが子供を抱きしめる画って、なんか好きです。うん。

タイトルにもちゃんと関連性があります。(今のところ)←ここ大事。
最後まで関連付けられるかは、……頑張ります。

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