作:杏
「…サ……」
「さ??」
首をかしげて、未夢の声に注目するワンニャー。言いづらそうに唇を、開いては閉じる。
「サボテンウーマン」
未夢が言い淀んでいると、別の方から答えが飛んできた。余計なこと覚えてなくていいのに。
「サボテンウーマン???」
『おねえちゃん! ねぇ! おなまえなんてゆーの!?』
「門をくぐったところで、そう訊かれて…。 なんか名前言っちゃいけないような気がして、とっさに…」
「あの頃は信じてたんだけどなぁー。 結局、番組終わるまで一度もサボテンウーマンは登場しなかったなー」
未夢にとってはついさっきの出来事を、懐かしむように思い返して彷徨が笑う。騙したようで、なんだか心苦しい。
「ご、ごめん…ってゆーかっ、よく覚えてるよね〜3歳のときの記憶なんて、わたしほとんどないよ?」
「ずっと覚えてた訳じゃねーよ。 さっき、帰ってきたおまえ見て、なんとなく思い出したってゆーか…」
「まんまぁ!」
抱いていたルゥがその手に掴んで、くっと引いたのは。肩にかけられたままのスミレ色のストール。
「そうだ、これ…彷徨に返さなきゃね」
「……いいよ、おまえが持ってろよ」
「お似合いですよぉ、未夢さん」
「そ、そうかな…。 いいの…?」
「あーい! まんまっ!」
それが気に入ったのか、ルゥはその薄い生地に頬を寄せてニコニコと笑う。
彷徨もこんなだったのかな、と思いながら、はたと気がついた。
「あ、あれ、じゃあもしかして……」
(あの約束も、覚えてるのかな…?)
「…さてと、未夢も目ェ覚ましたし、風呂入って寝るかなー」
「あ、わたしも!」
「おまえ先入ると待たされるからなぁー…早くしろよ、あとつかえてんだから」
「努力しま〜す! ルゥくん、行こっ!」
こんにちは、杏です。
このまま勢いで最終話あげます!
ご覧いただきありがとうございました!