時を越えて

11話 名前

作:

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「…サ……」

「さ??」

首をかしげて、未夢の声に注目するワンニャー。言いづらそうに唇を、開いては閉じる。


「サボテンウーマン」

未夢が言い淀んでいると、別の方から答えが飛んできた。余計なこと覚えてなくていいのに。


「サボテンウーマン???」




『おねえちゃん! ねぇ! おなまえなんてゆーの!?』

「門をくぐったところで、そう訊かれて…。 なんか名前言っちゃいけないような気がして、とっさに…」

「あの頃は信じてたんだけどなぁー。 結局、番組終わるまで一度もサボテンウーマンは登場しなかったなー」



未夢にとってはついさっきの出来事を、懐かしむように思い返して彷徨が笑う。騙したようで、なんだか心苦しい。

「ご、ごめん…ってゆーかっ、よく覚えてるよね〜3歳のときの記憶なんて、わたしほとんどないよ?」

「ずっと覚えてた訳じゃねーよ。 さっき、帰ってきたおまえ見て、なんとなく思い出したってゆーか…」



「まんまぁ!」

抱いていたルゥがその手に掴んで、くっと引いたのは。肩にかけられたままのスミレ色のストール。

「そうだ、これ…彷徨に返さなきゃね」



「……いいよ、おまえが持ってろよ」

「お似合いですよぉ、未夢さん」

「そ、そうかな…。 いいの…?」


「あーい! まんまっ!」




それが気に入ったのか、ルゥはその薄い生地に頬を寄せてニコニコと笑う。

彷徨もこんなだったのかな、と思いながら、はたと気がついた。


「あ、あれ、じゃあもしかして……」

(あの約束も、覚えてるのかな…?)




「…さてと、未夢も目ェ覚ましたし、風呂入って寝るかなー」

「あ、わたしも!」


「おまえ先入ると待たされるからなぁー…早くしろよ、あとつかえてんだから」

「努力しま〜す! ルゥくん、行こっ!」








こんにちは、杏です。

このまま勢いで最終話あげます!

ご覧いただきありがとうございました!




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