雪の降る夜は

氷解

作:どらむかん

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「たしか、ここでプレゼント買ったんだよね?」
人をかき分け進む先には小さな本屋。
以前ははあんなに明るいイルミネーションの光に包まれていたその店も今は周りの明るさに負けてしまっている。
まるで自分のようだと少し笑った。
未夢はほかの明るい店には目もくれず、その店に足を踏み入れた。

「ごめんくださーい。」
「おぉ?珍しい…。お客さんかい。」

その店の店主は目を丸くしてこちらを見た。
しかし、すぐさまその眼は優しいほほえみに変わる。
年齢は70歳以上あるであろう白い髪に白い髭。
暖かなほほえみは3年前の家族のもとに帰った時のような温かさを覚える。

「こんにちは。」
「まぁ、あまり物はないがゆっくりしていきなさい。」
「ありがとうございます。」

そこにはあの日と変わらない品揃えで、3年前に戻ったような錯覚を覚える。

たしかここに…

「あった!」
そこには黒いけれど何処か優しい雰囲気を持つブックカバーがあった。
初めにこれを見つけたときは彼の笑う顔が出てきて思わず顔を赤くしたものだ。
もう一度それを手にとった。
「懐かしいな〜。そういえば彷徨あれ気に入ってくれてたのかな。今でも使ってるみたいだし。」
自分の気持ちを知らず、ただただ使い勝手がよかったのだろうと考える。
彼が本を読んでいるその姿を見るたび、にやけるのを抑えるのに必死になっていたのを覚えている。

そんな幸せをもう感じることはできないんだよね…

現実はそう甘くない。
思い出に浸っていても現実を見なければならない。そんな幸せは長く続かないのだと自分に言い聞かせるように思い出を大事に心にしまう。
ふと、目を横に移すと黒のブックカバーを引き立てるかのように真っ白な栞が目に入った。栞にはストックの花が描かれている。
真っ白な栞に真っ白なストック。
どこか目立たないその姿が自分の姿に重なる気がした。
気づいた時にはもうそれを手に持ちおじいさんのいるレジへ足を向けていた。

「お嬢さん。もういいのかい?」
「はい。ありがとうございました。」
「こちらこそありがとう。」
「?」
「いや、なに気にしないでください。」
「おや、それをお買い求めになるのかい?」
「はい」
「おぉ!これを選ぶとはなんともこの季節らしい願い事ですじゃ、あなたにはとても大切な人がいるんじゃないかい?」
「え!?そ、そんなことないですよ!!全然違います!」
「ははは。そんな否定せんでもあなたの顔を見ればわかりますよ。」

急に言われたその言葉に耳を赤くする。

「その花の花言葉をしっているかい?」
「花言葉?」
「そうじゃ、花言葉は“愛の絆”“求愛”を意味しておる。お前さんの気持ちそのままじゃないかい?」
「え?」
「お前さんがどうしてこれを選んだかはわしにはわからぬが、これを選んだのも運命かもしれないのぉ。」
「私はうらやましいよ。あなたみたいな人がとっても。わしはな言いたくても、もう言えんのじゃ。ばぁさんはもう行ってしもおてるからの。」
「だからこそ、自分の気持ちには嘘をついて生きてほしくないんじゃ。お前さんのような若いのにはな。おっと!すまないねぇ、どうもこの年になるとな。ははは。忘れてください。」

運命…
そうであればいい。
ルゥ君やワンニャーに出会えたのも。
彷徨に出会えたのも
すべて運命で決められていていてほしい
そして、自分が彼を好きなのもきっと…

おじいさんの言葉に反応して突き刺さっていたとげがみるみるうちに溶けていくのがわかる。
3年前に凍らせたはずの思いが水があふれるようにこみあげてきた。

自分に嘘はつきたくない
彼に思いが届かなくても…

彷徨に会いたい…

「おじいさん!ありがとうございました!私、伝えます。自分の気持ち。」
おじいさんに満面の笑みを浮かべ微笑んだ。
おじいさんは何も言わずただただ、微笑み返した。
未夢は手を振りながらクリスマスツリーの方へ向かっていった。


分がだいぶおかしなことになってしまってすみません。
変なところは想像で補整お願いします!!

当初はこんな感じではなかったのですこし長くなってしまっています。
話の流れもだいぶ変わってしまっていて(~_~;)
次は彷徨君目線で書きたいと思っています。

長くなってすみません。
もう少しおつきあいお願いします!!!!!!!!
ではまた次回お会いしましょう!!

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