雪の降る夜は

疾走

作:どらむかん

←(b) →(n)



「彷徨否定しなかった…。」
否定してくれる、追いかけてくれると少しの期待を抱いていた自分を笑い商店街の方へ歩いていた。
西遠寺の方へ向かって走っていたが同じ家に住んでいるのだからまた彷徨と顔を合わせなければならない。
そう危惧してイルミネーションの広がる商店街へ足を向けたのだ。

お願い、あきらめるための時間を少しでいいから…。
そしたらいつもの私に戻るから…。

いつの間にか低くなっていた太陽が見えなくなり商店街のイルミネーションが輝きを増していく。
今宵はクリスマス周りにはカップルが増え子供たちは早々と家路についていった。

「クリスマスだもんね。そりゃ〜カップルが多いはずよね。」

そう行き交う人を目で追いため息をつく
今頃彷徨は彼女のもとへいるのだろうと考えてしまう。

3年前のクリスマスをふと思い出した。
彷徨が初めてのクリスマスを迎えた日でもある。
その日は商店街のメインストリートにあるクリスマスツリーを見に寄せ集めの家族と足を運んだのを思い出す。
彼らは本当の家族のような温かさでとても大切な思い出の一つである。

「あ!そうだ!!彷徨の誕生日!!」

3年前のクリスマスではクリスマスツリーの近くにある本屋でブックカバーを買いクリスマス兼誕生日プレゼントとして彷徨に渡したのをおもいだす。
恥ずかしくて目を見て渡すことができなかったがとてもうれしそうにしていた彼を思い出し笑みをこぼす。

もう彼女のいる彼には自分からのプレゼントなんて必要ないのだと考えつつも、最後に特別な思い出をと考え商店街のクリスマスツリーが飾られているメインストリートへ向かっていった。




「どこに行ったんだよ!未夢!!」
必死に家に走って帰ったものの姿の見えない彼女を必死に探していた。
どんな時でも彼女の帰る場所は自分のいる西遠寺だけだと必死に自分を落ち着かせようとするがその走るペースは変わらない。

もし、未夢が自分から離れてしまったら?
彼女が自分を否定してしまったら?

募る不安が色を濃くしていく。
額から流れ出ている汗をぬぐおうとせずただただ彼女だけを探し続ける。
イルミネーションで輝く商店街の横を通る。
ふと3年前のクリスマスを思い出す。
自分にとっても彼女にとっても特別なクリスマスだったあの日。
赤い顔で照れくさそうに笑いながらくれたブックカバーは今でも大切に使用している。
未夢も同じように考えてくれているのではないかと期待を胸に商店街のメインストリートへ向かって走って行った。



走れ彷徨君!


遅くなってすみませんでした!
忙しかったのだと言い訳させてください!!




←(b) →(n)


[戻る(r)]