作:どらむかん
『キーンコンカーンコーン』
ホームルームの終わりのチャイムが鳴る。
それと同時に未夢は立ち上がりななみと綾に小さく挨拶して教室の扉を開ける。
まだ帰っている生徒は少ない。
彷徨はまだ来ていない。
彷徨に合わなくて嬉しい反面、気持ちの中では期待をしていたのも感じていた。
「一緒になんて…無理だよ。」
もう家族でもいられない。
1番近いところにはいられない。
彷徨に見つかる前に走って玄関に向かおうと階段を駆け下りようとした。
しかし、ふと後ろから暖かい何かに包まれたことで失敗に終わってしまった。
「おい、一緒に帰るって言ったよな?なんで教室で待ってないんだ。」
一瞬で抱きつかれていると分かり、未夢は真っ赤になった。
耳のすぐ横で自分にしか聞こえないような声で。
驚き振り返ろうとしたが先ほどまで流していた涙の跡を見せるわけにはいかないと考え足元を見るようにして下を向いた。
振り返りたくない。
「ごめん、急用な用事ができて。」
足元を見ながら必死に涙を流さないように力を入れる。
「そんな嘘、俺に通用すると思ってるのか?」
「嘘じゃ…」
「嘘だね…お前の顔に書いてある。」
「そんなところからじゃ、見えないでしょ。」
「じゃあ、お前の顔見せてよ。」
そういうと彷徨は未夢の顎に手を添え無理やりこちらへ顔を向けさせた。
「いや!」
彷徨の手を一生懸命振りほどき、未夢は彷徨の胸を押した。
「彷徨…彼女できたんでしょ?変な誤解されると悪いから私先に帰るね。」
「はぁ?」
「じゃあね。」
そういうと未夢は階段を駆け下り一直線に玄関へ走った。
彷徨は言われた意味が理解できず、ただ未夢の背中だけを見ていた。
我に返った彷徨は全力で彼女を追いかけるがその姿はもうすでにない。
彷徨は額に流れる冷や汗をぬぐい手で顔を隠す。
「どういう意味だ。」
俺にまだ彼女なんていない。
あいつが何を勘違いしてるのかわからないが、あいつ以外を好きになるわけない。
それは自分が3年前にはっきりと感じている。
むしろ、この気持ちに気づかないあいつが愛しいのだがそれが最近の悩みでもあるぐらいだ。
問題は、なぜ未夢がそんなことを言ったのかだ。
「あいつ、泣いてたな。」
彷徨は暗い表情のまま一度未夢のクラスへ戻った。
ガラッ
扉が開く。
先ほどと全く同じようにクラスの人たちが扉のほうへ顔を向け本日二度目の女子生徒の声が響き渡った。彷徨の表情が嫌悪感を漂わせていることを除いては。
クラスの中を見渡し未夢の親友二人を探した。
近くで眼をハートマークにしている女子生徒に声をかける。
「なぁ、天地か小西いるか?」
「天地さんと、小西さん?さぁ、さっき帰ったみたいよ!てか、それよりも!西遠寺君!聞きたいことがあるんだけど!西遠寺君て彼女いたの!!私すごくショックだったんだからね!」
「は?」
「裕子が隣のクラスの人に聞いたみたいなんだけど、この前カップルがよくいくアクセサリー屋さんで女の子と二人きりでデートしてたの?どういうこと!西遠寺君!」
「は?誰がそんなデマ流したんだよ…。」
「じゃあ、違うの!?じゃあ、光月さんもかわいそうね」
「未夢がどうしたって?」
彷徨はその女子生徒の顔を見た。
彼女は顔を赤らめ必死にその問いに答える。
「光月さんすごく深刻そうな顔して天地さんとか小西さんに相談してたし、西遠寺君が昼休みに来たあと、光月さん泣いてたみたいだし。なんで泣いてたかは知らないけど親戚の自分が西遠寺にいるってもし、彼女が知ったらって思ったんじゃない?」
すべて今の言葉で未夢が言っていた言葉の意味が繋がった。
「さんきゅ」
彷徨は女子生徒に一言言い
彷徨は囲んでいた女子生徒たちを振り切り玄関口へ急いだ。
「クソッ」
また、あいつは変な勘違いしてんな
彷徨は一度も振り返ることなく夕焼けに染まった道をただひたすら西遠寺のほうへ走っていった。
遅くなりましたが
第2話目ついにできました!
今回は彷徨視点が多くまた、甘々になってないと思いますが抱きつかせたかったんです!!
(個人的にそういうシチュエーション大好き)