雪の降る夜は

発覚

作:どらむかん

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「ねぇ、知ってる?隣のクラスの西遠寺君彼女いるみたいだよ?」
「え〜!ショック!狙ってたのに…。ていうか、それ光月さんじゃないの?ほら二人ともいとこ同士で仲いいし。」
「でもなんか違うらしいよ。その人の髪の色きれいな黒だったんだって」

そんな会話が突然未夢の耳に入ってきた。
ルゥ君とワンニャーが星に帰ってから早3年。今でも彷徨とは家族のように接している。『家族』とは違う感情を抱きその気持ちがなんなのか分かっているがこの関係を壊したくないと自分の心に鍵をかけ3年間押さえていた。

12月の寒い教室にただ一人空を眺め思い出を思い返していた時この会話が聞こえてきたのである。
未夢は耳を疑う。

え…?彷徨そんなこと一言も…。

昨日も一緒に帰って一緒に夕飯を食べたりしたのにそんな話しらない。
彷徨を信頼してるし、されていると思ってた。

私、信じられてない?

胸の奥がナイフに刺されたように痛く苦しい。
その会話に耳をふさぎたかったが体がうまく動かないまるで自分の体ではないように。

「なんかね?隣のクラスの子から聞いたんだけど散歩してたら町で偶然、西遠寺君を見つけたらしくって。その見つけた場所がなんと!カップルがよく買い求めるアクセサリーのお店にいたみたいなんだよね〜!それでね!お店の中から同い年くらいの女の子と一緒に入っていったんだって!」
「キャー!それ以上聞きたくない!!」

未夢は泣きたくなった。
自分が一番近かったのになー…
自分が彷徨にとって特別な存在というわけではない。他の子よりも少し近かっただけ。
彷徨にとっては他の女の子と同じ『ただの同級生』でしかないのだ。
そう思うとやけに胸が痛い。

「未夢〜!一緒にお昼って…なに!?どうしたの!」
「未夢ちゃん?なんで泣いてるの?」
「へ?」

いつの間に会話は終わっており、その代り自分の机の前に中学からの親友のななみ、綾が弁当を持って未夢の顔を心配そうにのぞきこんでいた。
無意識に流れた涙を手で拭い

「えへへ、さっき目にゴミが入って。大丈夫だよ!じゃあ、お昼食べよう!!ななみちゃん!綾ちゃん!」
ななみと綾は顔を合わせ未夢に向き直った。
「未夢…何か隠し事してるでしょ?」
「え?そんなことないよ?」
「未夢がそんな空元気な時は必ず西遠寺君がかかわっているのよね〜。」
「そ、そんなこと…」
「いいから白状しちゃいなさい。」

2人にはわかっちゃうんだなー…
未夢はやっぱり親友たちにはかなわないとそう改めて感じた。

「あのね?」

お弁当を食べながら未夢の話を聞いているうちに、どんどんと、ななみは怪訝そうな顔をになり綾は悲しそうな顔になっていった。

「ななみちゃん、綾ちゃん。やっぱり私信頼されてないのかな?」
今にも泣きだしそうである

「本人から聞いたわけじゃないんでしょ?それはただの噂。私は信じるに値しないと思う。」
「そうよ。未夢ちゃん。未夢ちゃんが一番近くで西遠寺君を見てきたんだもの。」
「私がそう思っているだけで彷徨にはどうでもいいんだと改めて感じちゃって。もし、これが本当だったらその女の子にとって私は目障りな存在なわけで…。そうしたらもう、彷徨とは『家族』でもいられないなって思ったら涙が…。」
「未夢はさ、西遠寺君のこと信じてないの?」
「信じてる!信じてるけど…」
「じゃあ、大丈夫だとおもうなー、西遠寺君も未夢ちゃんを悲しませることなんて絶対しないし何かの勘違いだと思うよ?」
「そうだよ!綾の言うとおり。西遠寺君が未夢を悲しませるなんてことしないよ絶対。これは言い切れる!だって見ているこっちが赤面しちゃうくらいお似合いカップルだし!ねぇ〜あ〜や!」
「そうそう!劇の題材にするにはすごくいいカップルよね!」
「綾。劇じゃないんだから…。」
3人で笑いながらも胸に刺さるとげは取れなかった。

ガラガラ

教室に扉の開く音が響き渡る。
クラスにいた何人かの生徒がそちらへ向いたかと思えば女子生徒の声がすぐに響き渡った。
3人はそちらへ顔を向けた。
そこには未夢が一番会いたくない人物が女子生徒に囲まれ不愛想に一切表情を変えず、誰かを探すようにクラス全体を見渡した。
未夢は目を合わさないようにじっとその人がクラスから出ていくのを待った。
それでも目的の人を見つけたのかどんどんと教室の内側へと入ってくる。
未夢はななみ、綾の後ろ隠れるように体を低くしていく。

「未夢。」
低く耳に心地よい声。
もうこの声も何もかも他の人のものだと思うと顔が見られない。

ななみと綾の間に入り込み未夢を見下ろす。
「あのさ未夢。今日一緒に帰れるか?」
未夢はとっさに彼の顔を見た。
そこにはいつもでは見られないようなすこし顔を赤らめた彷徨の姿がある。

その顔を見て確信した。
もう私彷徨のそばにはいられないんだ。一緒に帰るってことも最後なんだ。

未夢は涙を見せないように必死にこらえるが、彼が見逃すはずがなかった。
「お前…泣いてただろ。」
「え?」
「なんかあったのか?」
ななみと綾はだまって二人の会話を聞いている。
「べ、別に何もないよ!ほら!元気元気な未夢ちゃんですよー!」
「お前が何か悩んでるときは変に元気になるんだよ。お前なんか俺に隠してるだろ。」

何よ。隠してるのは彷徨じゃないの…

よく見てるからこそ気づくその言葉いつもなら嬉しいはずなのに今はその優しさがつらい。
また涙が出てきた。彷徨はしっかり目を見つめそらさない。

お願い…もう私の中へ入ってこないで…。
未夢は彷徨から目を離すようにうつむいた。

ななみも綾も心配そうに未夢を見つめる。
震える手を抑えなるべく明るく笑いながら彷徨の首元を見る。

「んも〜!何言ってるの彷徨!それだけなら早くクラスに戻らないとお昼休みなくなるよ!」
「未『キーンコンカーンコーン』」

彷徨が未夢を問いただそうとするとタイミングを計ったかのようにチャイム名が鳴る。
未夢は立ち上がり彷徨の背中を押すようにして授業に行くよう促した。

「ちょっ!ちょっと待てよ!」
「ほら、行った行った!!」
「分かった!分かったから押すな!絶対一緒に帰るとき全部話せよ。」

必死に未夢へ話しかけるが一切返事をすることはなく彷徨を無理矢理外へとだし、ようやくまた静かな教室に戻っていった。
未夢はその場で座り込み今まで我慢していた涙をポロポロと流し始めた。
ななみと綾はどうしていいのかわからずただただ未夢に寄り添っている。

「ななみちゃん、綾ちゃんごめんね。こんなかっこ悪いところ見せて。」
「未夢ちゃん、そんなことないよ。」
「そうだよ未夢。」
「2人共ほんとに…ごめんなさい。」
しばらく未夢は涙を止めることができなかった。

彷徨…心配かけてごめんなさい。そして今までありがとう。




暗い話ばかりですみません。
ちゃんとこれはハッピーエンドになります!
安心してください!私基本ハッピーエンド甘々系じゃないとダメなんで(笑)
もう少しだけ辛抱してください。(^_^;)

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