作:マサ
2回目です。上げていない間に、誕生日を超えてました(汗)
ここでななみちゃん登場。完全にアニメ方向へ走った瞬間であった…。
未夢はトイレから出てきてなお、
まだ何か言っている。
「なんであいつが人気あって、さらに委員長なのよ!」
すると、その横から横やりを入れるような声がした。
「そりゃ、スポーツ万能だし、頭も良いし!」
「えっ!?あいつが!?」
未夢も思わず反応してしまった。
「すごいんだよ!」
よく見れば女の子が2人、
転校生の未夢に、早くも話しかけてきていた。
これには未夢も戸惑ってしまう。
「私は天地ななみ。」
と、自己紹介した。
背が高くて、髪はショートカットで、
カラーは赤に近いブラウンだった。
パッと見、ボーイッシュな印象を受ける。
「私は小西綾。」
続いて、もう1人の女の子も自己紹介をする。
ななみに対して、こちらはかなり背が低い。
三つ編みを左右1つずつ、後ろで編んでいた。
色は黒に近いが、やはりブラウンがかっていた。
「どうも。光月未夢です。」
「よろしく!」
「よろしくね。」
「あの、ちなみに、ななみちゃんと、綾ちゃんは、
彷徨のこと…。」
「どう思っているの?」と、
未夢は続けたかったのだろうが、
2人も未夢が何を言わんとしているか、
すぐに分かってしまったため、
「それはない。」
と、頭から否定した。
「しかし、あんたは親戚で良かったね。
赤の他人が西遠寺くんと住んでいるとしたら、
ファンクラブから嫉妬の嵐よ。」
「えっ…。ファンクラブって?」
「おっ…。噂をすれば…。」
2人と話しているうちに、未夢の周りは、
数人の女子に囲まれる形になっていた。
「ファンクラブって言うのは、この方達!」
そう言って綾がさらっと紹介すると、
「ファンクラブ」の女子連中は、
一斉に未夢に質問を浴びせかけ始めた。
「ねえ、未夢ちゃん。
西遠寺くんって、家にいるときどんな感じかな?」
「どんな服着てるの?」
「いつも何食べてるの?」
「寝るのは何時?」
「ねぇ。未夢ちゃん、教えて!」
彷徨と会ってから日にちが経っていないのに、
やたらプライベートな質問ばかり聞かれて、
未夢は戸惑うしかなかった。
そこにもう一人の同居人である、誠大がやってくると、
もっとボルテージは上がってくる。
それを見ていた彷徨の友人=黒須三太は、
まるでプロレスでも見ているかのような感覚で、
野次馬の1人と化していた。
「おっ。お前の親戚がファンクラブに捕まってるぞ。」
「あいつは強いから自力で脱出できる。」
「いや、男の方も。」
「そいつは、どうなんだろうな…。
今朝未夢に投げられたし…。」
「まあ、でもボコボコにされてるワケじゃなさそうだし。」
「こんな時は、ほっとくに限る。」
ファンクラブの恐ろしさを間近で見ていたななみと綾は、
こんな時の対処法を知っていた。
「そろそろ助けてあげようか?」
「そうだね。」
するとななみは教室の方を見ながら、
「あっ!次の授業の英語のテキスト、
西遠寺くんが忘れて困ってる〜!」
と、わざとらしく言ってみたにもかかわらず、
彼女達は一斉に彷徨に殺到していく。
「きゃ〜!西遠寺くん、あたしの使って〜!」
「俺は持ってるって!
おい天地!デマ流すんじゃない!」
静けさを取り戻した廊下では、
未夢と誠大が伸びきっていた。
「大丈夫?二人とも。」
「以後、気をつけた方が良いよ。」
と、言うと、すっかりやられた二人は、
「ううっ。俺も以後気をつけます…。」
「ご忠告、ありがとうございます…。」
なんとかななみのおかげで抜け出せたが、
厳しい「洗礼」にタジタジといった格好だった。
しかしその様子を、クリスはじっと見守っていた。
何か彷徨を想う節があるのだろうか。
さて、とうとう新しい学校での授業が始まる。
最初は、英語の授業だ。
教科担当の先生は挨拶代わりに、
ジョークを言って教室を和ませようとしていた。
「いくら英語の授業だからと言っても、
先生がいつも英語を喋ってるとは限らないぞ。
そこで、今朝とても嬉しいことが有ったことを、
みんなに話そうと思う。
先生は今朝バスに乗ろうとしたら…。」
話はまだまだ続いていたのだが、
綾は早くも睡眠学習へと取り組んでいた。
そんな中、未夢が彷徨に視線を向けて、
「まだ信じられない。
あいつ、メチャメチャ性格悪いのに…。
風呂は覗くし、なんか意地っ張りだし…。」
と、その時。
たまたま同じく窓の外を見た彷徨と目が合う。
「うそ!目が、目が合っちゃったじゃない!
何こんなにドキドキしてるのよ!
深呼吸しなきゃ、深呼吸…。
…げっ!」
窓の外に未夢が目をやると、
そこには信じられない光景が広がっていた。
ルゥが浮いている!と言うか飛んでいる!
その時誠大も、窓の外を見ていたのだが、
何かに気付くような素振りをさりげなく見せた。
「ルゥくん、どうして学校に…。
まさか、私たちのことを、
探して来ちゃったのかしら…。」
未夢、心の中で全力で焦る。
ここで、何かをひらめいたらしく、
未夢は席を立った。
そして、何を思ったのか、
未夢はその場に倒れてしまった。
先生は慌てながら、
「どうしたんだ!光月!」
「先生、ひどくめまいが…。」
「大丈夫か?」
「保健室で休めばどうにか…。」
異常を察知した彷徨が立ち上がった。
「先生、俺が保健室に連れて行きます。」
「おお。頼むぞ、委員長。」
一緒に誠大も立ち上がる。
「先に保健室行って、事情説明しといて。
その間に、俺が運ぶから。」
未夢は歩けておらず、這いつくばっている。
その未夢を誠大が背負ったのを確認すると、
彷徨は先に保健室へと行き、
誠大はその後を追っていった。
保健室を出た後、彷徨が未夢に尋ねる。
「大丈夫か?
さっきまでピンピンしてたのに。おい。」
それでも未夢は黙り込んでいる。
そして誠大が突然、
「未夢、走れるか?」
と聞くと、
「うん。」
と答えた。
誠大は未夢を背中から降ろして、
いきなり姿勢を低くすると、
「ダ〜ッシュ!」
と叫んで走り始めた。
未夢もダッシュを始めると、
あっけにとられていた彷徨の腕を引っ張った。
「なんだ!メチャクチャ元気じゃないか!」
と彷徨がツッコミを入れるが、
未夢の中の優先順位は、
そんなところではなかった。
「ルゥくん!」
と、未夢は叫んだ。
「え?」
いきなり単語だけ言われても困るので、
彷徨が聞き返す。
「ルゥが学校に来てるんだ!」
焦りを隠せない未夢の代わりに、
誠大が情報を正しく伝えると、
彷徨が二人を止めた。
「ルゥが学校に来てるのか?」
彷徨が尋ねると、二人はすかさず答える。
「さっき窓の外見たとき、ルゥくんがいたのよ!
きっとあたし達を探しに来たのよ!」
「最初見たとき寝ぼけてるのかと思ったけど、
未夢から聞いて、マジだと確信したんだ!」
すると3人はまた走り出し、
「何でそれを早く言わないんだ!」
「そんなこと、みんなの前で言えるわけ無いわよ!
第一、さっきしゃべるなっていったの、彷徨でしょ!」
「それで、何で俺達走ってるんだ!?」
「話してる暇はない!
彷徨!とにかくルゥを追うぞ!」
3人は、非常階段に出てきた。
すかさず手すりから身を乗り出して、辺りを見回す。
すると誠大が、
「声が聞こえる!近くにいるぞ!」
手すりから乗り出してみると、ルゥは下の階にいた。
「こっちだ!追うぞ!」
彷徨の声に合わせて、3人が動く。
階段を駆け下りる最中、誠大は何段かを抜かして、
ジャンプしながら降りていく。
彷徨もそれに合わせてついてきた。
「ルゥ!いるか?」
呼び掛けるが、返事がない。
「いた?」
息を切らせた未夢が、ようやく降りてきた。
「中に、校舎の中に、入ったようだな。」
「え〜!誰かに見つからないうちに、探さなきゃ!」
更衣室、音楽室、理科室。
あちこち走り回っても、一向にルゥは見つからない。
「もう!ルゥくんどこに行っちゃったのよ!」
続いてたどり着いたのは校長室。
その中では、この学校の校長が、テレビゲームをやっていた。
職務中にゲームという時点で、
すでにいろいろ問題があるような気がするが、
現状の問題はそこではない。
その校長室の窓から、
ルゥはやはり飛びながら入ってきた。
そのルゥは、校長のやっているゲームを、
食い入るように見つめていた。
そして、この場所を不思議に思ったルゥは、
辺りを見回してみた。
なんと部屋の中には、
所狭しとサルのぬいぐるみが並んでいたのだった。
と、そこに3人がやってきた。
「ルゥ。こっちに来い!」
「ルゥくん、学校に来ちゃダメでしょ!
今は怒ったりしないから!」
しかしルゥは、明らかに不服そうな表情を見せて、
校長室を出て行った。
後を追って、窓の桟を飛び越えていく3人だが、
グラウンドに出てみると、
先に出ていた誠大が、青い顔をして立ちつくしていた。
「誠大、早く誰かに見つからないうちに…。」
「待て…。まずい。最悪の展開だ…。」
誠大の視線の先には、
警官に抱かれたルゥの姿があった。
「ああ〜!捕まってる!
二人とも、どうするの?」
「しかもお巡りさんだぞ。おい。」
「もうだめだよ。これでおしまいだよ。
きっと、あたし達も逮捕されちゃうんだよ。」
完全に混乱した未夢。
しかし、その警官は、こんなことを言った。
「あれ、未夢さん達、どうしたんですか。」
なぜか名前を知っているらしい、この警官は一体…?
すると、
「ワンニャー!」
と言う声がした。
しばらく警察官の周りを煙が包むと、
目の前に、朝見かけたワンニャーの姿があった。
「私ですよ。」
「ワンニャー?」
「お前…、」
「変身なんか、できるの?」
明らかに状況を飲み込めなくなってしまい、
戸惑っていた3人の質問に、
「はい。」
と、一言で平然と答えて見せた。
「だとすれば!
そんな重要なこと、何で黙っていたんだ!」
「何でだ〜!?」
「わかっていれば、今頃安心してるところだぞ!
…今も安心してるけど。」
そんな動揺した尋ねにもワンニャーは、
「あれ、言ってませんでしたっけ。
でもシッターペットが変身できるのは常識ですよ〜。」
と、余りにも平然と答えたワンニャーに対して、
「お前らの常識は地球の非常識!」
と彷徨が言うと、誠大も同時にワンニャーの頬をつねる。
「もう!ルゥくんがお巡りさんに捕まったと思って、
ドキドキしたじゃない。」
「いや、先程テレビを見ていましたところ、
お巡りさんが大活躍していた物ですから、
つい見とれているうちに、
ルゥちゃまがいなくなって、
ルゥちゃま探しならこれだ!
と思って変身しましたわけです。」
「ああ!ルゥくんはどこにいるの?」
その瞬間、ワンニャーがああ!とばかりに驚く。
「また逃げられました…。」
完全に涙目で沈んだ顔をしている。
「手分けして探すぞ!」
「おう!行くぜ!」
「もう!ワンニャーって本当に有能なのかしら!」
もはや、ワンニャーを信じてなどいないようだ。
初めて来たという星とは言えども、
ここまで周囲を巻き込み続けている。
「ええ、有能です。」
ワンニャーは答えている場合ではなかった。
言っておくが、学校のグラウンドである。
幸いにも体育に使っているクラスはないが、
誰に本来の姿を見られるか、
わかったものではなかった。
「ハッ!ワンニャー!」
ワンニャーは、再び警官の姿へと変身すると、
「ルゥちゃま!」
と、周辺を捜索し始めた。
「ルゥくん、どこ?」
と、そこを、誰か人が歩いていった。
その頭の上には、なんとなんと、ルゥが乗っていた!
「誘拐?」
未夢は、一抹の不安を感じ、
その後を追って歩き出した!
「未夢!見つけたのか!」
彷徨が声をかけている間に、
「いたぞ!待ちやがれ!」
と、誠大が走っていく。
とそこに未夢が、
「誠大、気をつけて!誘拐かもしれないの!」
「えっ…。誘拐!」
「なんだって!」
それを聞いた誠大は、
一目散に未夢の所に駆け戻ってきた。
一方その間にも、ルゥを乗せた誰かは、
商店街を歩いていた…。
この人物が一体、誰なのか、
全く見当がつかなかった。
そのころ学校では、授業に本格的に入っていた。
教室の端の席で、クリスは一人悶々と、
こんなことを考えていた。
「遅い、あの人達遅い。
とっても遅い…。
とてつもなく、べらぼうに遅い…。」
だが、まだ今のところは、そう考えるだけだった。
クリスも2話が初登場でしたなぁ…。未夢の早退はどうしようかな…。