「もう1人の転校生」

第1話「現実無視の5人家族!?」―2

作:マサ

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第2回です。この辺りから基本はアニメっぽくなります。






その頃未夢は、駅の前を歩きながら、

「何であたしだけ、こんな目に?」

とつぶやいていた。
でも、目的地に近づくにつれて、
彼女のテンションは上がってきた。

「部屋がたくさんあって、迷子になっちゃったりして…。
さらに一人男の子が来るって言うし。
ふふ…。優雅なお嬢様生活の始まりよ!」

と、すっかり安心しきっていた。
一方の誠大は、

「やっぱり部屋は多い方が良いな。
庭もそこそこ広かったら、もっと良いな!
女の子が来るみたいだし。
ちょっとうれしいかもしれない。」

と、完全に同レベルな発想だが、
二人ともやはりそれなりの期待を持って、
この街に来たのだ。
二人とも気分が高まる。
さて、未夢がたどり着くと、
そこには「西遠寺」と書かれた石碑と石段があった。

「ママ、そう言えば、石段を登るって言ってたよね…。」

あわててダッシュで石段を登ると、
確かに見た目庭は広い。

「うおー!ここが西園寺さんなのか!」

思わず叫んでいた。
と、言った側から未夢は倒れてしまった。
と、その後ろから軽装で石段を上がってきた、
誠大が上がってくる。

「ちょっと迷ったけど、時間は多分だけど、
合ってるかな?
…ん?もしもし、もしもし?生きてます?」
「だ、騙された…。」

未夢は声を振り絞った。
同時に二人の間に寒い風が流れ込む。

「確かに…、騙された…。あ〜…。」

誠大も倒れ込んでしまった。
と、そこに…。

「ん?なんじゃあれは?」

現れたのはこの西遠寺の和尚だった。
宝晶は二人を居間に連れて行くと、早速話を始めた。

「いや〜。よく来たね。
未夢ちゃん、誠大くん。
二人は覚えていないかもしれないが、
二人がよちよち歩きだった頃、
実は何度か家に遊びに来ておるんじゃよ。」
「そうなんですか。」
「でも全く覚えがないんですよね。」

二人はそう言った。
覚えもないし、記憶がないのだ。
いや、うっすらとあると言えば、
より正確な言い方だろう。

「二人とも、とりあえず、
夕食前に風呂に入ってきなさい。
今日は疲れたじゃろ。」
「はい。そうさせてもらいます。」

和尚の対応もあってか、
二人は西遠寺に居候することへの抵抗は随分減った、
そうであるはずだった。
そして未夢は、ゆっくりと風呂の中。

「丘の上のお嬢様生活なんて、出来過ぎだよね…。
ハッ。もしかして、変なところに来ちゃったのかな。
でも、まあ悪くないかな。」

そう言いながら蛇口をひねり、
お湯を出そうとしていた。

「しばらく出しておかないと、
お湯にならないもんね。」

と、その時。

「ただいま〜。親父、風呂沸いてる?」

この家の長男、彷徨が帰ってきたのだ。
これに気付いた誠大、ありったけの声で、

「風呂に行くな!」

と叫んだが後の祭り。
彷徨はドアを開けてしまい、
未夢の入っている風呂を見てしまったのだ。
誠大はこの瞬間、頭を抱え込んでしまった。

一瞬、2人の間に静寂が走る。
しかし次の瞬間、未夢は水の入った桶を彷徨に投げた!
同時にありったけの声で、

「きゃあ、痴漢〜!」

と叫ぶ。
彷徨はあっという間にドアを閉めてしまったが、
しばし考えると冷静になり、

「なんだ?今のは。
ひょっとして…。親父!」

と、走り出していった。
その間、未夢も悶々と考え込んでいた。

「何なの今のは?
こういうのって漫画とかアニメとかドラマとか、
そんなのでよくあるベッタベタな展開だけど、
よりによって、よりによって、
何でこのあたしが〜!」

そして、

「信じらんな〜い!」

と叫び、その声は家中に響き渡り、
誠大は思わず飛び上がった。
その後、順番を変え、彷徨、誠大の順に風呂に入った。
そして夕食になったが、相変わらず未夢は怒ったまま。
それを隣から彷徨が冷ややかな目で見つめる。
誠大と宝晶はどうすることもできず、ただただ笑うだけだった。
やがて宝晶が口を開き、

「すまんのう、未夢さん。
家の一人息子の彷徨です。
男手一つで育てた物で、どうもデリカシーが…。
ほれ彷徨、挨拶せんか。」

すると間髪を入れず彷徨が、

「俺はこの話は絶対に聞いていない。
誠大くんのことなら若干聞いたかもしれないが。」

すると宝晶は、

「え?今、説明したじゃないか。」

すると今度は彷徨が、

「親父はいつも言うのが遅いんだよ!
女なんかと一緒に住んだらうっとうしいだろ!」

すると今度は未夢が席を立ち、

「ちょっと、何が女なんかよ!
私の風呂を嬉しそうに見てたじゃないの!」
「嬉しそうになんかしてないだろ!」
「ほう。あれは相当見事な犯罪行為だったわよ!」
「知ってりゃ覗くわけ無いだろ!」
「何よ!本当は超ラッキーとか思ってたんでしょう!」
「そりゃ無理だろ!あの幼児体型じゃ!」
「なんですって!」

口げんかが続く中、ここで誠大が抑えに入ろうとしたが、
全く相手にされない。
さらに、今度は宝晶が、

「まあまあ、未夢さん。
二度とこんなことにならないようにワシが責任を持って…。
…ん?どうしたんじゃ、彷徨。」

宝晶は、何か視線を感じて、話を切った。
彼が向いた先には、彷徨が宝晶をじっと見ていた。
何か言いたそうである。

「何じゃ彷徨、何か言いたいのか?」
「ほほう…。
じゃ、親父が今年行くって言ってた、
インドへの仏教の修行、
あれは当然辞めるんだよな?」

それを言われると、
宝晶は一転して顔を曇らせた。

「行くも何もなぁ…、まだ許可が出ないから、
行こうと思っても行けないのじゃよ。
死ぬまでに一度言ってみたかったな。
先週相方から電話が来るはずだったのに…。
連絡無いってことはダメって言うことじゃ。」

と、その時…。居間の電話が鳴り響く。
宝晶は、すかさず飛びついた。

「はい、西遠寺。」
「その声は宝晶さん。」
「おお、源さん。何!許可が出ただと!
よーし分かった、すぐに支度する。」

この瞬間、3人の表情が豹変し、
一気に宝晶に敵意むき出しの状態になってしまった。
いや、彷徨と誠大には、殺意すら感じられた。
そんなことが分かっているのに、
宝晶はこそこそと部屋を出ようとする。
ここで彷徨が、どこで持っていたのか知らないが、
縄を取り出した。
すると宝晶は、猛ダッシュで居間を出た!

「あ、逃げた。」
「待ちやがれ!」

そして宝晶は和室の扉を閉めると、
急いで近道をして、玄関に向かう。

「あっちだな。二人ともここ見張っていてくれ。」
「了解。」

そのころ宝晶はもう玄関にいた。
出ようとするところを彷徨が捕まえ、
二人もそれに追いつく。

「行かせねえぞ!親父!」
「未夢さん、誠大さん。
この修行は子供の頃からの願いなんじゃ。
一生のお願いじゃ。
どうか行かせてくれ〜。」

と、泣きついた。それに対し誠大と未夢は、

「この言葉、どこかで…。」

と、明らかに戸惑っていた。
その間に宝晶は脱走。行きがけに、

「生活費は金庫に入っておるぞ〜!」

と言い残していった。
宝晶が居なくなった後、
やっと静かな雰囲気が戻り、夕食再開となった。
この間未夢は、

「どうしよう、あたしどうなっちゃうんだろう。
周りが男の子だけで住むなんて、
なったことあるわけないし、
どうすればいいのか、考えられないよ…。」

そんなことは誠大も同じだった。

「あ〜あ・・・。
会ったこともない女の子とこれから一緒に住むなんて、
戸惑うなあ。
俺もこの街でどうすればいいのかな、考えられないや…。」

そんな雰囲気を和ませるかのように彷徨が、

「ご飯とみそ汁、おかわりするか?」

と尋ねてきた。
とっさの出来事に二人は大丈夫と首を振った。
とてもじゃないが、3人は気まずかった。
そこで彷徨が口を開いた。

「ゴメン。うちの親、勝手でさ。
なんでもホイホイやっちゃうんだ。」
「あたしもそう。
急にここに住むように言われて。」
「俺だってそう。
ここに住むことが決まったのは、
1週間前だったもの。」
「お互い、そんなものか。」

そしてまた少し黙り込み、彷徨は言った。

「ワザとじゃないから。風呂のこと。」
「えっ…。」
「でも、ゴメン。」
「こっちもちょっと騒ぎすぎたから。ゴメン。」

こんな2人を見ると、誠大は気を遣って、

「何か、俺だけ場違いな感じするから…。
ちょっと、2人で話し合えば良いんじゃない?
俺はちょっと部屋出るから…。」

そう言うと誠大は廊下へと出て行った。
だが、ものの5分もしないうちに彷徨が、

「待たせて悪かったな。戻って良いよ。」

と言われて、

「ああ、ありがとう。」

と、誠大が答え、2人とも部屋に入った。
そして3人で「ごちそうさま」の合図と共に、
一斉に食器が台所に積み重ねられた。
夕食が終わり、しばらく経って、彷徨が聞いてきた。

「そう言えば2人とも部屋、決まっているの?」

それを聞いた瞬間、誠大と未夢は、
お互いの顔を見合い凍り付いた。
この2人、隣り合ってみると、
実は結構なデコボココンビだったりする。

ちなみに、宝晶からの部屋の指定は何もないのだ。
その重苦しい空気を振り払うかのように、
誠大が口を開いた。

「実は…、まだ決まってないんだよね…。」
「えっ…。」

また空気が重苦しくなった。
それを聞いた彷徨は、
頭を少し掻きながら、こう言った。

「実は、空いた部屋が無くて…。
相部屋でも、良い?」

二人は首をかしげてから、
異口同音にこう言った。

「相手が良ければ、私は(俺は)良いですよ。」
「じゃあ決まりだな。二人とも良いって言ったから。」
「あっ…。」

二人は顔を見合わせて、笑った。

やっと、平穏になった。





言い訳のようで申し訳ないのは重々承知の上ですが、
この作品は、実は中1の頃から書き始めてました。

今見ると恥ずかしい限りの文章力ですね。この頃は多分、誠大くんの立ち位置がふわふわしっぱなしですね。ちゃんと同化するまでには、まだまだ時間がかかりそうな気しかしません(笑)

ちなみに現在は15話分出来てますが、ちゃんと上げられるようになるには、どこまでかかるか分かりません…(;ω;)





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