作:マサ
第3話、2回目。みかんさん初登場だったのを、すっかりスルーしておりました。
アニメベースなので、当然立ち位置も変わりません。
帰り際、みかんさんは、
「困ったことがあったらいつでも助けに来るからね。二人とも。」
「あ、ありがとうございます…。」
「…どうも。」
「また来るわね。」
「さようなら。」
そう言って、石段を下っていった。ふと、誠大が何かに気付いたように言った。
「あれ?何かおかしいな…。」
しばらく考え込んでから、
「そうだ!みかんさん、そう言えば、ブーツ履いてない。」
「そう言えば、あれ寺のゲタだ。」
と、彷徨も状況を飲み込んだ。
「呼んでこようか?彷徨。」
「あとで気付けば来るから。
あの人よく忘れて帰っちゃうんだよね。」
「なんて人だ…。」
そして家に戻ると、
「それでもって、ちょっと目を離すとこれだもんな。」
誠大が呆れる理由も分かる。
それもそのはず、またルゥが物を浮かせていた。
「あ、お帰りなさいませ。」
と、ワンニャーが出てきたのだが、
その時、玄関の呼び鈴が鳴った。
「みかんさんだ。俺行ってくるわ。」
「未夢。俺達2人で片付けやるぞ。」
「はい、彷徨。」
「は〜い。ただいま参ります〜。」
誠大が玄関を開けて外を一瞬だけ覗いて見ると、
目を疑うような光景が広がっていた。
誠大は即座に扉を閉め、落ち着こうとする。
そう、自分たちと同じクラスの生徒が、
何人か玄関先に集まっていたのだ!
その集まっている中には、クリスもいた。
果たして何を話しているのだろうか…。
「転校してきた二人って、
本当に西遠寺くんと同じ家に住んでいるのね。」
「男の子の方ってなんか、彷徨くんに負けず劣らずイケメンよね。」
「体も彷徨くんより大きいし。」
「今、戸が開かなかった?」
「そう?」
するとクリスは目を光らせ、呼び鈴をもう一度押した。
また一度、さらにもう一度、しかも、だんだんと押すペースは速くなってくる。
「ど、どうすりゃいいんだ?大変だ!緊急事態発生!」
慌てて戻ってきた誠大に、彷徨が問いかける。
「なんだこの音?」
「2年1組女子5名が押しかけようとしています!」
「なぜに?」
「こっちが聞きたい!」
「…とりあえず、二人で行って、引き留めてこい。
その間に、俺が家をなんとかするから。」
「引き留めろって、どうやってやればいい?誠大…。」
「言っておくが、さすがに俺の守備範囲外の話だからな。」
未夢が悲しくも孤立無援になった瞬間である。
そのころ外では、
「今、赤ちゃんの声とかしなかった?」
「そう言えば…。」
「やっぱり、未夢ちゃんってかわいいと思わない?誠大くんだってかっこいいし。」
「いいな。そんな子と住んでる彷徨くんは幸せで。」
「でも、そろそろまずくない?」
何がまずいのかと言うと、女子達が視線を向ける先には…、
何やらにやけながら、さらにまがまがしいオーラを放って呼び鈴を鳴らすクリスがいた。
そして玄関が開く。出てきたのは未夢だった。
「ごめんね。ちょっとバタバタしちゃって。」
そして玄関の扉を閉めようとしたとき、中から
「ぐわっ!」
という声がした。誠大の顔が挟まれたのだ。周りが笑いに包まれる。
「ごめんなさいね。いきなり来て、迷惑だったかしら。」
「うん。あ、いやいや、そんなこと無いんだけど。」
「良かった。転校してきた二人の歓迎会やろうと思って、私がみんなを誘ったの。」
これに誠大が突っ込む。
「男子はいないのか?」
「いませんわ。」
きっぱりと言われた。
そして、みんなから花束やらプレゼントの箱やらが送られた。
「それで、今お家には?」
「ああ。彷徨のお父さんは留守だけど、彷徨は家にいるわ。」
「それじゃ、西遠寺くんはこの中にいるの?」
クリスが言うと、周りがどっと沸き立った。そんな中で一人悶々と考える未夢は…。
「これはどうすれば良いのよ?裸踊りはもっとイヤだし…。」
その件を引きずる発想は、未夢以外の誰にもなかった。
その頃、やっと半分片付け終わった中では、彷徨が残りも片付けようとしていた。
ちなみに外では相変わらず未夢と誠大が悪戦苦闘中だった。未夢が口を開いた。
「そうだ。ここの境内って広いから、見学でもしてみたらどうかな?」
「おい未夢。いくらなんだって、ここにいる人は初詣とかでここに来てるから、
どこに何があるか大体の想像がつくんじゃないのか?
よしみんな。鐘を突いてみるか?」
「せっかくだけど…。」
と、クリスが家の中に入ろうとすると、
「やってみたい!」
と、他の女子達が沸き立った。
「じゃあこっちに…。」
と、誠大が案内しようとすると、クリスは家の中に入ろうとする。
そこに未夢が誠大にプレゼントを預け、入ろうとするクリスに必死にブロックする。
二人とも息が完全に切れてしまったが、
「鐘撞くのって、結構楽しいのよ…。」
「わあ、私もやってみたい…。」
と、何気ない会話を交わしたように見えたが、その声にはものすごく力が入っていた。
「うおぉ、女子って怖い…。」
このやりとりに、誠大は若干引くしかできなかった。
その時、家の中では、相変わらず彷徨が作業中。
が、鐘の音が聞こえると、
「何始めやがったんだ?」
いきなりの異変に、彷徨は疑いの表情を隠せなかった。
その頃、外では、クリスと転校生2人組で、こんな会話が繰り広げられていた。
「ねえ未夢ちゃん…。彷徨くんのお父さんって、意外とお留守が多いのね。」
「そ、そんなことはないよ。ただ、今日はちょっと遅くなるだけ。」
「じゃあ今日は3人だけ?ここにいるのは…。」
「未夢、ちょっと…。」
誠大が未夢に何やら指令を出す。
面倒ごとは実にゴメンだという表情で、調子を合わせるように指示を出す。
「そうそう。3人だけ。」
未夢がそう言うと、クリスの態度はがらっと変わり、
「そうなの…。3人だけ…。」
と、目を光らせていた。その時、ようやく彷徨が追いついて、
「お〜い。お寺の鐘を勝手に突かないでよ〜!」
二人が先に降りてくると、彷徨が小声で、
「大晦日じゃないんだぞ。」
と言う。すると誠大は小声で、
「こうするしかなかったの!」
と反論して、家に戻った。
「それより、2人は?」
「とりあえず、2人の部屋に入れておいた。
未夢。前にも言っておいたが、クリスの前で、あんまり俺に近づくなよ。」
未夢がふと上に目をやると、悲しそうな目つきでクリスが立っていた。そして彷徨が、
「おいみんな。降りて来いよ。」
と呼び掛けると、一斉に女子達が彷徨の元へ走ってきた。
慌てて立ち去る彷徨だったが、女子に捕まって囲まれてしまった。
再び家から出てきた誠大が、
「あれは俺達と彷徨と、どっちが主役と取れば良いんだい?」
と言ってしまうほどだった。
しかし、その後ろからクリスがものすごい勢いで近づいて来ると、
彷徨の肩を掴んで、力のこもった声で、
「せっかく二人の歓迎会やるんですもの。大勢の方が楽しいはずじゃありませんか?」
と言うと、そこからは力を抜いた、いつものおとなしい声で、
「それとも何か、用事でもございますの?」
「いや…。別に…。」
もはやそれしか言えない。
なんだかんだで主役が入れ替わるようにして、彷徨を家の中に押し込む。
「誰の歓迎会と言いましたっけ?」
未夢が若干恨みの目つきで見ていた。
そしてみんなを引き連れて、2人の部屋にたどり着いて扉を開けると、
普通の和室とは余りにもかけ離れた空間が広がっていた!
変わった置物がいくつも置いてある。
「な、何これ。」
「てか、俺達の荷物は?」
普段この部屋を使っている2人にとって見れば、まさに異次元空間と化していた。
その中で1人冷静な彷徨は、
「そういえばさっき、ワンニャーが未夢達の部屋片付けるって言ってたぞ。」
「これが、片付ける、だと?」
「これってどっちの趣味?」
「この人形、何かしら。」
「ワンニャー、よくも…。未夢、行くぞ。」
「うん。それじゃ、お茶の用意するから、ちょっと待ってて。」
一応主役格の存在である2人が部屋を出て、彷徨は少し困惑した様子。
そこにクリスが尋ねる。
「2人は結構良い趣味してますのね。私、この人形気に入ったわ。」
と、手に取ったのは、耳が長い胴や脚のない生き物の人形。
正確に言うと、ガン○ムで言う「ハロ」が、気味悪くなった感じだ。
そしてさらにクリスは、
「ところで、お料理やお掃除やお洗濯はどなたがなさるの?」
この問題はみかんさんにも聞かれたが、ワンニャーの存在は口に出したが最後、大変なことになる。そこで彷徨はやはりこう答えた。
「普段は3人で交代で…。あ、でもときどき親父もやってるよ。」
「そう。この3人でお掃除したり、お洗濯したり…。
そしてそして『いやぁ!これ彷徨のシャツ!』とか、
『ああ!これ未夢の下着!』とか、
『誠大のズボン、泥汚れが落ちない!』とか、そう言うことばっかり…、」
「そう言うことはない。」
彷徨が事前にブレーキをかける。
「あ、そう言うことはないのね。」
これには彷徨も笑ったが影では
「あぶねえ。」
と思ってた。
一方その頃、ルゥ達がいる部屋はと言うと、
ルゥが彷徨のアルバムから写真を取り、浮かせて遊んでいた。
その時、自分達の部屋を荒らされた2人が殴り込んできた。
「おい!ワンニャー!」
「私達の部屋に、何したのよ!」
「ああ、あれはボタンを押すと、実物大になるルゥちゃまの特製ままごとセットです。」
そう言ってワンニャーが小さなテレビ型のおもちゃのボタンを押すと、彼らの家にもあるようなテレビが出てきた。
「あなた達の部屋があまりにもちらかってた物ですから、片付けさせていただきました。」
「こいつは、どうもありがとう。」
精一杯の皮肉を込めて、誠大が礼を言う。
「それはわかったから、このテレビは片付けること。後で俺達の部屋も元に戻してくれよ。」
そう言い終えた辺りで、彷徨が部屋に入ってきた。
「おいおい。俺を人質にして主役2人が何やってんだ?」
「あ、忘れてた。」
「そうだ。いけねぇ。」
「早く行くぞ。」
「でも、クリスちゃん達、彷徨がいればそれで満足みたいじゃない?
彷徨だってクリスちゃんのことを…。」
「おい待て。お前、よからぬことを…。」
未夢の発言に、彷徨は困惑する。
そこに追い討ちを掛けるようにして、誠大が加勢した。
「だとすれば彷徨。『クリスの前ではくっつくな。』あの発言はどういうことなんだい?」
「誠大。お前の場合はこの前学校でもう見てるだろ。机をやった、あれを…。」
「ああ、あれね。でもそれが何と関係があるんだい。」
「それはだな…。って、そんなこと話してる場合じゃない!行くぞ。」
「そうだった。」
「ああ、早く行かないと。」
強引に話が打ち切られる形となったが、それはそれで仕方がない。
3人が口々に部屋を出ると、ワンニャーはボソリと、
「あの。実は…。」
と言ったが、3人は聞き入れる余裕もなく部屋を出て行ってしまった。
部屋の中をよく見ると、ルゥの哺乳瓶の中身は、空っぽ。
ワンニャーの不安は、加速するばかりだった…。
実は、序盤から書き始めていて、クリスの妄想だけは一番書きづらいポイント。
妄想のサイクル的には、
彷徨への愛が注ぎ込まれる→未夢は邪魔っぽくなる→誠大の存在は消える
と言う具合に、せっかく追加したキャラの存在意義を揺るがしかねない事態となるんです(;ω;)