体育大会

当日・午後

作:久保真理

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みんなとのはじめての体育大会は楽しくて

あっという間に時間が過ぎていった。

コレが終わったら、

あたしは帰らなきゃいけない。

それが寂しくて、悲しくて。

考えないように応援し続けた。






『さぁ!ラス2の混合リレー!!出場者は入場門に集まりやがれー!!』

時間がたつにつれて、アナウンスの人もテンションが上がったのか、

口調が最初よりもかなり変わっていた。

「未夢ちゃん。出番だよ!」

「え?」

いきなり明菜に言われて驚く。

「そう。混合リレー。西遠寺くんと一緒。」

にっこり笑う笑顔は、

なんだか策略を感じてしまう。

「がんばれ!」

そう言って未夢は背中を押されて、入場門にいった。








入場門に行くともう彷徨は来ていた。

「未夢・・・・大丈夫か?」

未夢の様子がおかしいことに気づいた彷徨は駆け寄って顔を覗き込んだ。

「うぁ、何で教えてくれなかったのよー。50mのタイム聞いたとき分かってたんでしょ?

あたし足速くないよ。

抜かされちゃうよ。

ムリだよこんな代表なんてー」

半分泣いているような表情の未夢はテンパって思っていることを全部くちにした。

「教えたら、絶対逃げただろ?」

「うっ」

彷徨の言葉にいいかえせない

「大丈夫だよ。未夢が抜かされても俺が抜き返してやる。」

そういってやさしく未夢の頭をぽんと叩いた。

「うん・・・」

リレーに出る。その言葉を聞いたときから胸にできた重い気持ちは

彷徨の言葉を聞いたとたん、ふっと消えた。


未夢は5走者。彷徨はアンカーの6走者だった。







「位置について、よーいドン!!」

いっせいに走り出す。


未夢はぶっちぎりトップを願うがそうも行かない。

4チーム中3位。

第4走者にバトンが渡る。

未夢はコースに出て、バトンを待った。


ラストのカーブで2位に近づくが、

一歩劣らず。そのまま未夢にバトンは受け継がれる。


―とにかく走らなきゃ。コレくらいはきっと抜けるよ―

自分にそう言い聞かせて未夢は走る。

カーブを曲がってストレートになったとき、

未夢が2位を抜いた。

わぁ!と歓声が上がる。

キープしたまま彷徨にバトンを託した。

一瞬目が合って、彷徨は微笑んだ。

「がんばれかなたぁ!!」

バトンをわたして瞬間思いっきり叫ぶ。

「おう」

短く返事が聞こえた後、彷徨はすごい速さで走り始める。

かなりあったはずの1位との差をどんどんちじめる。

ラストのカーブでならんだ。

そして、

ゴールまであと10mくらいの所で彷徨が1位になった。



ゴールテープを、彷徨が切った。


「彷徨!」

走り終わった彷徨に未夢は小走りでちかずく。

「な?ちゃんと抜いただろう。1位だぞ!」

すごくうれしそうに笑う彷徨。

「でも、あたし。あんまり早くなかった」

「大丈夫だよ。未夢が一人抜かしてくれたおかげで俺も抜けたんだから。」

「彷徨・・・」



『アトラクションだよー。猿がくるからぁ席に戻って、

大切なもんを取られねーよにしっかりもっとけやぁ!!』



いい雰囲気をアナウンスがぶち壊した。



「ここでも猿。。。」


「まぁ、しょうがないさ」


2人で苦笑しつつ席に戻る。


『あー。忘れてた。借り物のやつはに持つあづけて入場門に集合しろー』

めんどくさそうなこえがきこえた。


「あ、西遠寺君」

明菜が彷徨に声をかけた。


「これ、エントリーだからよろしく」


「な、聞いてない!」


「言ってないもの。じゃ、がんばって」


意味ありげに微笑みながら、手を振る



「悪い、三太頼む」


「おっけ。まかしとけ!!」


彷徨は一人入場門に向かって行った。










ウキ。ウキキキキ。ウキャー!!

グラウンドでは猿が何匹もいるけれど

みんな、見てはいなかった。








☆★☆★☆★☆★☆★









「さぁやってまいりました!!本校一の名物競技。借り物競争!!

これはモノだけじゃなく、人を借りることも多いし。

それに・・・ふふふ。2,3年生には恒例のアレももちろん入っております!!

一年生は分かりませんよね?そう。それでいいんです。

やってのお楽しみ!!さぁ、第1走者。ならんでー!!」

やけにみんなのテンションが高い。

一年、二年。三年。の順だ。

それぞれ、色んなものを借りてきた。


太った女の子。髪の長い子。メガネをかけている人。他のチームのハチマキなど。


あっという間に三走者目。


『まだ、アレがでてきませんねー。てことは三年の誰かがあたるぞ!!

西遠寺くんがあたるとおもしろそうだな!!』


未夢にはよく意味が分からないけど、皆が盛り上がってる。


「未夢。荷物置いてこっちに来なよ。一番前〜」


「あ、うん」

ななみに言われたとおりに前に行く。


皆がいっせいに走り出して、紙をとってあける。



皆みたときにピシっと固まる人が多い。


彷徨も一瞬固まった。


が、すぐに走り出す。

まっすぐ、未夢のところに。



「こい」


「え?」


わぁ!という悲鳴に近い声と

うおぉ!という興奮したような声が聞こえる。


未夢はぐいとひっぱられた。



そのまま一緒にゴール。


『一番は西遠寺くん!元同居人の光月さんを連れてきました。

さぁ、紙を見せてください。これはやはりアレのような気がするんですが・・・』


彷徨はいやそうに紙をわたす

『おぉ!!やはり!!西遠寺くんの借り物のお題は”好きな人”!!

全校の前での告白だぁ!!』









「え?」





未夢は自分の耳を疑った。



―彷徨があたしのことを好き。なんて、―

ありえないんだと思っていた。



彷徨を見ると、頬がピンクに染まっている。



『まぁ、みんな知ってはいたから、やっぱりってカンジだなー』



「「は?」」



二人合わせて顔を上げた。

タイミングばっちりで見事なハーモニー



「え?付き合ってるんじゃないの?」


マイクから軽く顔を離して聞いてくる。



ー(私/俺)そんなわかりやすいのか?―


お互いショックを受けていた。


「ま、お2人は仲良く退場してください。」

2人はそのまま退場する。




その間にはなんともいえない空気が漂っていた。











「未夢。」





さきに口を開いたのは彷徨だった。





「俺は未夢が好きだ。ずっと、傍にいてくれないか?」




軽く顔が赤い。



その言葉を聞いたとたん未夢は真っ赤になった。




「あたしなんかで、いいの?」



声が震える



「未夢じゃなきゃ、だめなんだ。」


やさしい瞳だった。







「・・・っ。あたしもね。彷徨が好きだよ。」



顔なんか見れないから、うつむきながらも思いを口にした。



「ありがとう」


今までにないってくらいやさしい声で


やさしい口調だった・・・
















お話しほぼ完結いたしました。
残るはオチ。
うまく書けるか不安が残ります。

今回はかなりはしょってみました(笑)

あ、「50mのタイムを聞いたわけ」の答えは混合リレー。でした。
ほんとうは混合リレーがメインのつもりだったんですけど
借り物競争がぽんと現れまして・・・
無理やり突っ込みました(笑)

ひと段落してほっとしています。
これくらい勉強も真面目に出来ればなぁ。なんて思っています。(涙

                 (6/19・真理)

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