作:久保真理
学校から帰ってきて、
石段を上っていたら、見覚えのある人影・・・
見間違えるはずなんかなかった。
未夢だ!
うれしさと驚きをもったまま、未夢に声をかけた。
「未夢?」
「彷徨・・・」
そのとき、天地に言われたことを思い出す。
なるほど、
「・・・やられた。」
玄関、鍵だすのに困っていたら、未夢が合鍵で開けてくれた。
一言二言はなして、俺はキッチンに向かった。
緊張してるっぽかった。
よし、紅茶でも入れるか。
俺は、荷物を片して紅茶を入れた。
未夢が居間に行くと、彷徨はまだだった。
座るけど、
居心地が良いけど悪い。
懐かしくてうれしい。
けど、やっぱり他人の家だから、なれない〜
「おまたせ」
後ろから彷徨がカップを二つ持って居間にやってきた。
「あ、うん。」
コトとおいてくれたミルクティー
赤い、シンプルなカップ
ここにいたときに未夢が使っていたものだ。
「ありがとう」
自然に手が伸びて、こくりと一口飲む。
冷たくて、なんだかホッとする味。
「今日、天地に『ちゃんと多めに買ものしときなよ』ていわれたんだよ。」
「え?」
「みんな、なんか知ってるような顔してたし・・・絶対皆ぐるだった。」
むすっとしてる彷徨はめずらしい。
「で、なんかあるからきたんだよな?体育祭、か?」
「うん・・・ななみちゃんから電話が来て、今度の体育祭に来いって。
休んでて出れないかもしれない子がいるからそのときはあたしが出るらしくって・・・」
未夢は一生懸命説明いする。
「やっぱり。はめられた。」
彷徨は『はぁ』とまたため息をついて肩を落とした。
そんな様子を見ていると、なんだか懐かしくて
緊張なんか消し飛んで、普通に自分の家見たく感じれた。
「未夢、50m何秒?」
ふと、彷徨がそんなことを聞いてきた。
「?えーと。。。。8.7くらい?」
「ふ〜ん」
なんか意味ありげな顔をしてる。
「え、ええ?え。なになに?」
未夢は不安そうな顔をして彷徨に迫る。
「ひみつ〜」
にやりと笑って、自分の飲み物を飲み干す。
「よし、夕飯にするか。」
まだぶすくれている未夢に向かってもう終わりと、立ち上がった。
「一緒に作るか?」
未夢の顔を見ず、そっぽを向きながら聞く。
「え・・・うんっ!!」
未夢はとてもうれしそうな顔をして立ち上がった。
その顔をちらっと見た彷徨は、顔をかすかに赤くした。
「行くぞ。」
さっさと彷徨は歩き出してしまった。
ちょこちょこと未夢も彷徨の後ろをついて歩いていった。
「何食べたい?」
廊下を歩いていると、彷徨がそんなことを聞いてきた。
「何でも良いよ?」
「じゃ、カボチャのしチューな。」
「何言ってもカボチャになったんじゃない?」
「そりゃ、俺も未夢もカボチャ買っちまったんだから、いるときに食べてもらわないと。」
ふふんとしてる。
キッチンについて、2人で夕食の準備を始めた。
そのとき、
ふと気がついたことがあった。
「そういえば、おじさん・・・・は、また修行?」
「あぁ」
―彷徨も、また一人になっちゃったんだね。寂しく、ないのかなぁ?―
「・・・彷徨も、また一人なんだね・・・」
ポツリと、思うと同時に口にしていた。
「・・・未夢、家族と一緒なんじゃないのか?」
「一緒だけど、パパもママも仕事忙しいから。」
その顔は、とても寂しそうだった。
「そ・・・っか」
「うん。でもね。今はここで彷徨がいるから寂しくなんかないよ?」
にっこりと笑う。
「・・俺も。」
そう言って未夢の頭をぽんと叩いてそっぽを向いた。
珍しい、
彷徨の本音。
未夢も自分の言ったことに恥ずかしくなってしまって、
2人で黙ってもくもくと作業をし続けた。
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今日の夕食はカボチャのシチューと未夢が買ってきたお惣菜のから揚げ。
お互い向かいの席に座る
「「いただきます」」
ちゃんと手を合わせる。
久々の2人で食べる食事
緊張もしたけど
幸せだった。
未夢にとって
久々の五右衛門風呂。
久々の一人じゃない夜。
いつもより安心してゆっくり眠れた。
最初は他の人の家って、居づらいんですよね。
少しいると慣れるんですけど。。。苦笑
彷徨はなんで50mが何秒かなんて聞いてんでしょうか?
これだ!と思ったのがありましたら『拍手』にでも。笑
なんか、たくさんの方に『拍手』いただけてとてもうれしいです。
ありがとうございます。
今後もがんばって書いていこうと思いますので
どうかよろしくお願いします。(6/16・真理)