作:久保真理
『会いたい』
そう思っていたときにかかってきた一本電話。
止まっていた時が
再び動き出せるかもしれない
チャンス
ルゥくんとワンニャーがオット星帰って
パパとママも帰ってきて
おじさんも帰ってきて・・・
あたしたち『家族』は
またばらばらになっちゃったね。
パパもママも忙しくて、
また、あたしは家に一人でいることが多くなった。
彷徨はどうしてるのかな?
そんなことを一人でポツリと思っていたとき、携帯が鳴った。
「はい?」
『あ、未夢〜?元気してる?』
「ななみちゃん。うん。どうかしたの?」
『あ、うん。今度の土曜日空いてる?』
「うん?」
『ウチの学校の体育大会なんだよ。未夢はやったことなかったんだよね。』
「そーいえば。そうだったねぇ」
『でさ、せっかくだから来てよ』
「へ?」
『空いてるんでしょう?ウチのクラス、一人ずっと欠席してる子がいてさ、
もしかしたらこれないかもしれないんだって。
だから、そのときは未夢に出てもらおーと思って。』
「え?」
『あ、担任水野先生だからなーんにも問題ないよ?』
「えと・・・」
『いーじゃん。ついでに西遠寺に一泊か二泊しちゃえ』
「えぇっ!!」
未夢の顔は一気に真っ赤になった。
『西遠寺くんも未夢に会いたがってるもん。サプライズでおしかけちゃえ!』
「う〜」
『じゃね、絶対来てよ?あたしたちだって未夢に会いたいんだから!!』
「・・・うん。」
『おやすみ』
「おやすみ」
携帯が切れる。
すごく久しぶりの西遠寺。
勝手に行って、いいの・・・かな?
彷徨はいつでも戻ってきて良いって言ってくれたけど。
でも、会いたい・・・・な。
みんなに・・・
彷徨に・・・・・
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
金曜日、夕方。
「き、来ちゃった・・・」
未夢は、
今西遠寺の石段の下にいた。
学校が終わって、即コー着替えて来たのだ。
今日は何故か学校が終わるのも早くて、
ちょうど、普通の学校が下校時間ってくらいについた。
お土産ってことで、少しのおやつと
きっと空っぽであろう冷蔵庫のために少しだけ野菜やフルーツなどを持っていた。
―彷徨、もう帰ってきてるのかな?
まだかな?
あたし、ここに来ちゃって大丈夫だったのかな?
彷徨があたしなんかに会いたがるなんて・・・ないとおもうし。
て、自分で思うのも悲しいなぁ・・・・―
ひとりで百面相しつつ石段を上ると
一つ、また一つ
と、ここでの思い出が昨日のように鮮明に思い出される。
その時
「未夢?」
後ろから、
懐かしい、聞きたくて、会いたくてたまらない人の声がした。
聞き間違えるはずなんかない。
「彷徨・・・」
後ろを振り返ると、彷徨が驚いた顔をして未夢のすぐ後ろに立っていた。
懐かしい、制服姿で。
「・・・やられた。」
はぁと彷徨がため息をついて、未夢の隣に並ぶ。
―あ、あたし、来ちゃダメ、だったかな?―
未夢に不安がどんどん湧き出てきて、胸が押しつぶされそうになる。
と、手の荷物が軽くなった。
「持つよ。うち来るんだろ?」
「あ、うん。」
彷徨の後ろをちょこちょことついていく。
―なんで『やられた』なんだろ?
彷徨もビニル袋もってる?なんで?―
彷徨が荷物を持ってくれたことで、来ちゃいけなかったわけじゃないって思えたから
安心すると同時に疑問がいくつか上がった。
石段を上りきって玄関に着く。
彷徨は荷物がいっぱいで鍵を取り出せそうになかったから、
未夢がここを出るときに貰った合鍵を取り出して、鍵を開けた。
「さんきゅ」
そう言って彷徨は中に入って荷物を置く。
そして、こっちを振り返った彷徨の顔は
とても優しかった。
「おかえり。未夢」
丁度一歩踏み出して、玄関に入ったときに言われて、
思わず、うつむいた。
その瞳には涙がたまっていた。
「荷物、部屋に置いてこいよ。俺、コレしまったら居間行くから、居間にいて?」
コレ貰っていいんだろ?
と聞かれた。
「うん。」
それだけ言うのが精一杯だった。
荷物を部屋に置きに行く。
部屋はとてもきれいで。
ちゃんと掃除がされているみたいだった。
ふすまを閉めて、
未夢は居間に向かった。
本当は短編のつもりだったんですけど、
シリーズにしちゃいました(苦笑
今回は体育大会!!
ウチの学校も先日ありました。
がんばりますので
どうか、よろしくお願いします!(6/15・真理)