作:久保真理
中に入ってみるけど、やっぱりいない。
でも、ちゃんと住んでるカンジはちゃんとする。
なんでだろう?と思いつつ、前に使っていた部屋に荷物を置くことにした。
懐かしい。あの時のまま、きれいに掃除されてる。
彷徨一人でこのお寺全部の掃除なんて大変だから、一部しかしていないはずなのに。
自分が使っていた部屋がその”一部”に入ってることがうれしかった。
一人で掃除するのが大変なら、手伝おう。
そう思って、雑巾。箒。ちりとりを取り出してお寺全体の掃除を始めた。
お堂から順番に雑巾がけをしていって、それが終わったらそとの掃除をするつもりだった。
最後に玄関の雑巾と玄関の砂ごみを取ろうとしていたら、戸口が開いた。
「彷徨?」
そこには、あいたくてあいたくてたまらなかった人の姿があった。
「み、ゆ?」
彷徨の目がすごくひらいてる。
手にあったビニール袋を落としそうだった。
何を言えばいいのか、頭の中がぐるぐる回る。
『お帰り』とか
『ひさしぶり』とか
結局出てきた言葉は
「彷徨遅いよ!!ゴールデンウィーク今日からでしょ!!
あたし着たらいないし、本当に会ってくれないのかと思ったよ」
まぁ、勝手に来たんだけどさ・・・
と最後はごにょごにょと小さくなってしまった。
だってだって、彷徨がすっごく優しい目で見て(見つめて?)くるんだもん!
恥ずかしくなってきちゃうよ・・・・
うつむいてしまう、顔は少し熱い・・・
うぅ〜
「ゴールデンウィークは明日から、今日は学校だったんだよ」
「え?」
びっくりして顔を上げると、方向はそっぽを向いていた
顔が見えない・・・
「ま、おかえり。未夢」
そう言ってあたしの横を通りながらポンと頭に手をのせた。
振り返るとすたすたと廊下を歩いていく彷徨の背中が見える
帰ってきたんだ
そう実感がじわじわとでてきて、すごくうれしかった。
彷徨が帰ってきたからお掃除は終わり。
居間でのんびりしていると、彷徨が着替えて来た。
「明日だと思ったから、びっくりしたよ」
少し苦笑しながら、あたしの隣に腰を下ろす。
「あたしも、いなかったからびっくりしちゃったよ」
えへへと笑う
・・・・・・・あれ?
じゃ、何であんなに食べ物かってきたんだろう?
明日のために、あんなに??
「ねぇ、じゃあなんであんなに買ってきたの?」
「あれは、明日のご飯・・・・・明日未夢が来ると思ってたから、
花小町とか三太とか呼ぼうと思ってたんだよ。」
ちょっとバツが悪そうな顔。あたしを驚かそうとしてくれたのかな
「ありがとう」
彷徨を見てしっかりと言った。
ふいと顔をそらす
「今日何食う?つか、昼は?ちゃんと食べたのか?」
「え、」
すっかり忘れてた。食べてない・・・
そして、あたし考えたことがカラダに何らかの信号を送ったのかな
ぐー
お腹がなっちゃって恥ずかしかった。
真っ赤になってうつむいた。